2012/03/13

格差を生む社会構造は理解するが...


『希望格差社会』山田昌弘
[6/42]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

流行語にもなった「格差社会」という言葉を生んだ本です。今や「格差社会」というその言葉が独り歩きしてしまっていますが、著者が主張するのは、「希望」格差であって、経済的な格差という1点ではありません。
戦後の高度成長からバブル期直前まで、いろいろな背景はあったにせよ、「将来こうなれるかもしれない」という希望は描けた。今現在の社会の方がその時期よりも「豊か」になっているのは事実だが、ひとつ失っているものが「希望」である、ということだ。

賛否両論あれど、学歴社会や年功序列という「制度」のもと、ある一定の「ルート」「コース」が目に見えた社会であったが、いまはその様相が異なる。アイデア、知的な差別化が個人的な成功のベースになる社会であるが、「安定」はないし、将来どうなるか、っていうのもまったく見えない社会だ。

そんな環境の中で若者に対して「夢がない」というのは、はたしてどうなんでしょう?という、現代若者論にもつながっているんだけど、 ことこの状況に関しては、若者だけの問題ではない。かつての構造で育った中高年も、その経験が武器にならない社会である。IT系の発展、労働力の国際的な流動化。久しく言われてきたことが、まさに今現実になっている。

...と肌感覚で分かっていること、それを「理論」で説明してもらっている感じ。以前とは社会構造が違う、家庭も教育も、そのあり方が異なってきている、というのは分かるんだけど...分かっている分、身にしみている分、ものすごく「重い」んですね。敢えて苦しい環境を上書きされた感じすらします。

望むべくは、「じゃあ、どすんの」っていう点。本書を手にとった人の多くはそれを期待していたはず(社会学者の先生たちは違うだろうけれど) 。その点が「薄い」んですね。読後はかなりネガティブになってしまいますが、それでも前を向かねばならないんですよね、私たちは。

自分の身は自分で守る。だって今置かれた環境はこうだから、ていう「現状」を受け入れることももちろん必要だし、そこがスタート地点にはなります。けれど、その前提は半分くらいでよかったかも。

読み終わったあと、「副題」を見ましたが、ちょっと扇情的すぎ、な気もしますね、
 
希望を持ちましょう。開き直りではなくて、前に歩いて行く原動力は、誰にでもあるはずだから。

【ことば】 つらいことに出会ったとき、それに耐え、更なる努力をして乗り越えることができるのは、それが報われる見通し、つまり希望があるからである。

その「希望」が失われつつあるのが(あるいは2極化して「選べない」層が存在することが)現在の社会環境である、という。まったくその通りだと思うが、希望は自ら見出さない限り、向こうからやってくるものではないはず。なんでもいい。それこそ、人間の数だけ希望がある。


希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く (ちくま文庫)


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うぉっちング!!!

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