- 架空の球を追う
- 発売日: 2009/01
『架空の球を追う』森絵都③
[11/47]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆
短編なんて書いているのを知りませんでした、森絵都さんの作品です。日常の、ごく普通の日常の一部を切り取って、それが小説になっている...といった作りで、「短編」という形式と相まって、どうも消化不良は否めず。
女性目線なので(当たり前だけど)、余計にそう感じるのかもしれません。あー、どこにでもいるよなあ、あるよなあ、という点は「共感」できるんだけれども、同性による「共感」とは違い、盛り上がりのない、というイメージに捉えてしまいがちに...もちろん、森絵都さんのエッセンスは、その文章や言葉の選び方にも表れていて、品がよく、心地よい読み応えなんですけれど、後に残らない、というか...これが長編ならばまた違った感想になったんだろうと思います。
友人、家族、夫婦、同僚。イギリス、ドバイ、銀座。出てくる人物、その置かれた環境、設定された場面は各編によって異なるけれども、「日常」を描いて、その「特に変わったことのない日々」の中から小説のテーマに昇華させる手法は見事です。誰でも持っているちょっとした好奇心、気ごころ知れた人たちの中にいながらも、ちょっと引きぎみに見る目線。特別な「変わり者」が登場するわけではない分「どこにでもある物語」ですが、文字にするとこうなるんだあ、という驚きも。
本書にでてくる人たちは、「日常」をフツーに過ごしている。人生を考える、なんて重いこともなく、過ぎゆく時間をありのまま過ごしている。これって実は大切なこと。立ち止まって躊躇する「日常」ほどつまらないものはないしね。実はこういう「日常」「人生」が、気がついてみれば「幸せ」につながっていくのかもしれないなあ、って深読みしてみた。
おそらく著者と同年代の女性、或いは既に著者の作品を数冊読んでいるファンには、受け入れやすい構成なのだと思う。「これまでの森絵都と一味ちがうねっ」ということで。でも男性であったり、ビギナーであったり(自分のことだ)すると、ちょっと壁が高い。ま、こういう作品も書いているんですねー、くらいで受け流しましょう。次は長編を読みたいけどね。
表題作は一番目に掲載されているけれども、かなり短い。想像通り野球の話だが、自分には「オチ」がわからなかった。「ドバイ@建設中」「二人姉妹」あたりがいいかもなあ。「オチ」がわかりやすいし、温かいので。
【ことば】人生ってさあ...思いもよらないようなことが起こってもいいんだよな。
自分の夢を抱いて、何があってもそれを曲げない人物に出会った人が語る。人生って...真剣に考えるようになるのは、「折り返し地点」を過ぎたころから。もう戻れない時間と、これからの時間が同じくらいになった頃から、本当の意味を考えるようになる。
架空の球を追う
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