2012/03/28

日本語は美しいなあ。


『語感トレーニング』中村明
[15/51]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

帯に紹介されている、
「快調」「好調」「順調」もっとも調子がいいのは?といったように、日本語のビミョーなニュアンス、語感が、どのようなイメージを醸し出し、どのような場面で使われるか、といった話が詰まっています。
日本語を使う自分にとって、非常に興味深い話が並びます。読み進めるにつれ、改めて「日本語って深いなあ」と思います。二人の会話があったとして(本とかで読む場合)、それだけでどちらが男で女なのかもわかるし、二人の力関係までわかってしまう。「謙譲語」という自分がへりくだる敬語、というのも日本語の美しさですね。
言葉の使い方次第で、その人の(潜在的な)気持ちもうかがいしることができる。「女」というか「女性」というか「彼女」というか、でも語感は変わってくる。
それは何かの原則や法則があるわけでもなさそうだ。仮にそれがあったとしても、言葉は時代とともに変化していくものだから、今の用法はその面影を残していないかもしれない。これを体得するには、いろいろな人が書いたもの、いろいろなジャンルの本を読む、いろいろな人の話を聞く、ということしかないのだろうと思う。その中で、「違和感」を持てるようになるかどうか。多分、(自分にもできていないので「多分」にしておく)古典とか名文を知ることも重要なことだろう。
著者はその道の大ベテランであるが、けして現代の言葉を否定していないところがいい。カタカナにとってかわられたことばや、若者ことばも一旦は受け入れている姿勢は好感を持てます。「言葉は生きている」というのを体感されているのだろう。年齢を重ねて、「美しい」言葉をたくさん知っている方がそのような度量を見せるのは「さすがプロ」と思う。
だから余計に、最後の最後「あとがき」に書かれていた文章が残念に感じる。
...語感要素として想定できる全体像をスケッチして、一般読者にわかりやすく解説したものである。
 う~ん、「今のことば」でいうと、「上から目線」を感じてしまうなあ。そりゃ専門家でもなんでもない「一般」ですけどね。
本書は日本語に関する「ハウツー」ではない。「日本語が好き」という感覚を少しでももっている人が読むと、同感できる場面が多く、読み物として面白い。

【ことば】その語の文体的なレベルや感触・イメージ・雰囲気といった語感、そこに連続する用法の微妙なニュアンスを知るヒントを与えるのが語感辞典...

諸々の環境にあった用法は、おそらく「語感辞典」が存在しても、口に出して耳にして使ってみてはじめて分かる、といったものだと思う。難しいんです、だからこそ、輝きを失わない日本語があるんですね。使いこなすのは困難ですが、そこにある「美しさ」を感じる感性は失わずにいたい。

語感トレーニング――日本語のセンスをみがく55題 (岩波新書)


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