- かたみ歌 (新潮文庫)
- 発売日: 2008/01/29
『かたみ歌』朱川湊人
[8/25]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆
昭和40年代(?)のアカシア商店街を舞台に描かれる人間模様。その場に属する人がそれぞれ主役となり...いわゆる「連作」というカタチの7編から構成される。が、これまで(数冊だけど)読んだ「連作」とは一味違って、みごとに「連らなって」いるんだねー。
これは最初から読み進めていくと、後半かなり面白い。前に読んだことが伏線になり、また意外な事実が後半に明らかになったり。そもそも、すべてを貫く「主人公」が最後に明らかになったり...最初の1編を読んだ時点では正直、「?」という気もしたんだけど、読了ページ数と比例して面白さが増していきます。
テーマとして「死」がひとつのキーなので「面白さ」といってはいけないんだけど、「怖い」題材を使ってはいるものの、すんなり読めちゃいます。人と人の関係、事件と事件の関係、その「妙味」の方が、ホラーとしての「恐怖」を上回る、というか...
舞台が「昭和」なので、昭和30、40年代生まれの人には、それだけでも感じ入るものはあるかもしれません。著者の年齢と自分がそれほど離れていないので、多少「昭和」をデフォルメするための描写もあるように感じられますが、そもそも、商店街、そこに属する人間が「昭和」なんですね。そこに「デジタル」はないんです。「デジタル」がないだけで、これだけ「昭和」の空気になり、「人間」にスポットがあたるんだなあ、って、本筋とは違うことろで「へぇ~」という気がしました。それだけ、「人間関係」が希薄になったのですかねー。それと、本質のところでその「人間関係」を欲している、ということの証明でもあるのかもしれませんが。
読み終わってから、著者が直木賞を受賞していることを知りました。つまり読み始めるきっかけは、受賞じゃなくて、本書の表紙のイメージだけ、でした。昭和っぽいやつね。「現代」に少しだけ疲れを感じたら、読んでみるのもいいかもしれません。特に40年代生まれの人にはお薦めです、強烈にお薦めします。
【ことば】今はふしぎが入り込む場所も、他人同士が言葉を交わす商店街さえぐんと減って、物語が生まれる余地がなくなってしまった。
本文ではなく、「解説」で見られた[ことば]ですが、まさしく『私たちが...失ったものを』懐かしく、しみじみと思い起こさせてくれるのが本書です。その郷愁感のベースがあってその上に、ホラーや展開が存在する。だから怖いけど温かいのですね。
かたみ歌 (新潮文庫)
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