- 開拓者たち
- 発売日: 2011/12/16
『開拓者たち』北川惠
[2/20]
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆
あるきっかけで読むことになりましたが、これまで数百冊よんできた中で一度も「触れたことのない」分野でした。
第二次世界大戦。満州。シベリア抑留。敢えて避けてきたわけではないのですが、触手が伸びなかったというか...でも、読んでみて、日本人として知らなければならないこと、だと思いました。遅くなりましたが、未来に向けて歩いて行く時に、知っていなければならないことです。
主人公ハツは、日本の貧しい農村から、当時日本が壮大な理想を掲げて開発を進めていた「満州」へ渡ります。そこで既に開拓に従事していた者の嫁になるために。つまりは現地にわたって初めて結婚相手と会うわけです。この時点で、早くも「小説的」な世界で、今を生きる自分にとっては現実味がない話になってしまいますが...
その後戦争が激化し、ロシア軍の進駐や、中国の国共の争いに巻き込まれます。本土における「敗戦」とは無関係に、「満州」ではかなり厳しい状況に置かれます。当時現地を守っていた関東軍からも見捨てられ、国からも見捨てられたも同然の状態で、「戦後」も命をかけた避難が続く。
プロセスは別として現地で出会った夫との離れ、避難の途中で死を迎える仲間も多数でて...その後、なんとか日本に戻ることになるのですが、戦後直後の日本、帰国したものを十分受け入れる体制ができているわけではなく、またもや苦難な日々が...
ハツは、満州で苦難と共にした仲間、兄弟との「信頼関係」を軸に、持ち前の行動力、明るさで、みんなを引っ張ります。その前向きな姿勢、当時は今と比べ物にならなかったと思われる「女性」という弱い立ち場でありながら、仲間の先頭に立つ情熱。そして、そんなハツの行動の原動力になっていたものの喪失、立ち直り。
家族愛、負けない努力、信じて継続する力。ハツを中心とした人間模様は、あくまで明るく、前向きに、何があっても負けない強さを描いています。でも...戦争、争いのむごさ、人命の扱い、死がすぐそばにある環境の重さが、あまりにも強烈でした。日本が中国に対して行ったこと、これが本書に書かれていることがすべて現実かどうかは別にして、これは日本に属する身として、やはり知らねばならないことだと痛感する。これなしに中国人とは付き合えないとまで思えた。けして彼らに対して低姿勢になる必要はないけれども、これから先はどのような関係になればいいのか、ということを、日本人一人ひとりが考えるべきであると思った。
どれだけつらい目に会おうと、戦地に赴く夫との約束を守り、大事なものを信じ続けたハツ。死と直面した時期はあれど、「不幸」な感じを持たず、仲間や家族に支えられ、支えながら「幸せ」に生きる姿は、感動。
400ページ以上あっても、まったく途中止まりません。泣きそうになる場面も。史実はこういうことなのか。ホントに考えることは、多い。
【ことば】「子どもの頃から、こうなったら嫌だな、と思うことがたびたび起きた。嫌だと思っててもしょうがないから、まあいいって思うことにした。運命を受け入れるってことだ」
戦争に赴くのが「運命」とは言えないが、当時の貧しい環境からすると、なんとも重みのある言葉である。そうでも思わなきゃなってらんない、という消極的な意味ではない。受け入れた後にどうするか、変えようとするのか、変わろうとするのか。すべて自らが責任をもって行動する、っていう現れである。読んでいくうちに、その重みは増していきます。
開拓者たち
>> 本書の感想文、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね <<
濫読亭日乗
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