- 対岸の彼女 (文春文庫)
- 発売日: 2007/10
『対岸の彼女』角田光代②
[18/36]Library
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K-amazon ★★★★☆
二人の主役、三十路の女性が登場し、それぞれの「過去」を背負いながら「今」を生きていくストーリー。学校生活そして大人になってからの苦悶、あきらめ、追い求めるもの。片や子供がいる主婦、もう一方は独身の女社長。「今」は正反対とも思える同い年の女性二人に共通する「過去」がある。
女子高生、主婦、女社長。まったく自分とは無縁なので、感情移入こそできないけれども、引き込まれました。学生時代にとらわれる人間関係の煩わしさ。卒業したら無縁になると思われた過去。でもそれにとらわれそうになる自分。なんとなくタイプが似ている気がして、深く入り込んでしまいました。
気がついたら大人になっていた。自分の意思、感情とは別のところで行動しなければいけない縛り。自分一人のことを考えていればいい、という環境ではなくなって、でもその「縛り」に身をゆだねている部分もあったり。大人になるってなんだろう。いつから「大人」と言えるんだろう。子供と大人は何が違うんだろう、同じ「自分」であるのに、どこかで線が引かれているんだろうか。
人間関係の煩わしさ、って何歳になってもどんな環境にいても生じること。それは自分とは違う他人と接することだから。もしかしたら、いつの間にか本心からの言葉を口にしなくなっていることが原因ではないかとも思える。相手のことを考えるから?いや、結局は自分のことを考えているんだ。
違う環境で育って、違う道を歩んできた他人とは、やっぱり「言葉」を介さないと分からない。その言葉が原因で袂を分かつことがあったとしても、だ。それが足らずに誤解を生むよりは、本音を物片方がいい場面はあるんだろう。言わないでおく、という行為は、結局自分のことを守っていることになるのかもしれない。
どんな年代でも、知らぬ間にやってくる「孤独感」をひしひし感じます。そしてそれを打ち破るために必要なこと。生きるってなんだろう。時間って何だろう。人生観をも感じさせる内容でした。
二人の語り手とそれぞれの過去の話、4つのストーリーが同時進行しますが、読みづらさは全く感じることなく、「続きがきになる」気持ちで一気に最後まで。クロージングも心地よい。
【ことば】なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げこんでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。
「人間関係」という点で悩み、挫折を重ねた二人が行きつくところ。それはこういう考え方をする自分、だったのかもしれない。学生時代だけでなく、大人だって惑う。「不惑」なんて境地は、ないのかもしれない。
対岸の彼女 (文春文庫)
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