2011/11/27

世界が違いすぎました...

リズム (角川文庫)
リズム (角川文庫)
  • 発売日: 2009/06/25

『リズム』森絵都②
[18/205]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「児童文学賞」を受賞している作品で、著者のデビュー作。以前読んだ『永遠の出口』の世界観が心地良かったので、期待大でしたが...
13歳の少女が主人公です。けして特徴のある個性の強いキャラではなく、幼いころからの延長線上の「今」と、これから大人へ向かう未来の入り口としての「今」の真ん中にいる年代。いとこの真ちゃんへのあこがれ、幼なじみのいじめられっ子。タイプの異なるお姉ちゃん。真ちゃんは「すぐそば」にいる存在だったのに、それがずーっと変わらないことではない、そんな大人から見れば当たり前のことを知っていきます。これが「大人になる」ってことなのかもしれないけれど、13歳の少女の「新しい」出会い、別れ、気づき...これらがまぶしすぎて人生40年を過ぎたオジサンにはちと世界が違いすぎました...
児童文学賞を複数もらうほどだから、きっと優れたお話なのだと思います。確かにストレスなく最後まで一気に読めるストーリー展開は、まさに「リズム」のよさ、なのだと思いますが、「もう終わり?」という消化不良を感じてしまいました。感情が中心で、出来事が少ない物語なので、やはり「適応年齢」があるのかもしれません。
消化不良とはいえ、読後感が心地よいのはなぜか?って考えた時に、ここにでてくる「大人」が少女を始め「子ども」に対して、非常に「大人の対応」をしている点かと思いつく。金髪のフリーターを非難する場面もあれば、自分の愛する子どもを温かく見守る場面あり。もちろん彼らは「脇役」ですから、そんなにキャラクターを立たせる必要はないのかもしれませんが、子どもへの目線が優しくて温かい。そんな中で成長する子どもたち...
こんな小説の中の世界を、「理想形」のままにしておくのか。言葉は多くなくとも、信じて愛して見守る親でありたい。そんな感情が残りました。
そして、子どもから大人への階段を上る世代の「素直」な心情と、これまでは通用していたことが、そうはいかなくなる葛藤、大人の世界への怖れ。でも素直な心は失ってほしくない。大人になっても変わらないものはある。

【ことば】おれのリズム。まわりの音なんて関係ない、おれだけのリズムをとりもどすんだ...そうすると不思議に気持ちが楽になって・・・

本書のタイトルテーマともなっている場面。周りが気になる時、必要以上に気になる時に、取り戻すのは「自分のリズム」。そもそも自分のリズムに気が付いているのかどうか。でも苦しい時に立ち止まって、「リズム」を確認する作業、それも大事かと思う。


リズム (角川文庫)


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