- ハッピー・リタイアメント
- 発売日: 2009/11
『ハッピー・リタイアメント』浅田次郎④
[12/199]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★★★
浅田さんの長編、待ってました!という感じで最初から期待大。「入り」部分は、ご本人登場のエッセイ風から。ここでまずツカまれてしまいます。そこから続く世界に想像が膨らみます。
テーマは「天下り」。官僚と自衛官が「下った」先の組織は...そこに巣食う「悪」との戦いになるのですが、その主人公たちのパーソナリティ、キャラクターの魅力的なことといったら...そして「悪い奴」は、とことん悪い奴で、読み進める中で、勝手に「声」まで想像してしまうような、個性豊かな(わかりやすい)人たちが登場します。小説なんだけど、本なんだけど「音」を感じてしまうくらい、入り込んでしまった。
そして、その二人の「仕事」として、いろいろな「成功者」が出てきますが、彼らもまた魅力満載。過去にキズを持つ彼らが、主人公たちと接していく中で、過去を乗り越えていく術を見つけていくような...笑いあり、驚きあり、その中に、人情もあり、なのです。さらには「家族」というテーマも見つけられます。もう何でもあり。詰まってますね。
著者の独特のコミカルな文調で、ページはどんどん進みます。当初は「GOETHE」に1年間連載されたもの、ということだけれど、もしもこの雑誌を読んでいたら、「次」が気になってしょうがなかっただろうと思います。間違いなくそうなってましたね。
もちろんよろしくないことで、悪しき慣行たる「天下り」に対して、チクリと刺すようなものが根底にあるんだろうけれど、そんなことなんてどうでもいいほど、面白い。小説がエンターテイメントである、ということが実感できる本です。
元官僚、元自衛官の行先は、とんでもない組織だったんだけど、そこから何かを見つけて、彼らは「成功者」への道を確実なものにしてきます。もちろん、最後は...がありますけれど。本当にこんな「何も仕事がない」団体が天下り先として存在しているのだろうか?って気になるけれど、現実とそんなにかけ離れているわけではないんじゃないかなって思っちゃたりします。官僚、役人の世界はやはり遠い。「民間」にいると、そこまで「保身」100%になれるものだろうか、って思うけれどね。
そんな現実の世界と架空の世界、その中間に位置する物語。何かを得ようとか、得られなかったとか気にする必要はありません。楽しんじゃえばいいんです。ドキドキ、ハラハラ、とも違う、「ワクワク」感が味わえます。
【ことば】「...世の中はそれほど不公平やないで。...一生懸命に生きとる人間を、お天道様は見捨てへん」
ふるくさーい言葉ですけれど、おじいちゃんしか口にしないような言葉ですけれど、こういうのが一番「力」になるような気がします。理屈じゃなく、悔いないように生きれば...いいことも悪いこともある。悪いことに過度に反応せず、いいことを、きちんと「いいこと」と認識しよう。
ハッピー・リタイアメント
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