2011/11/06

フランスパンの歴史。メインが「人間」だったらもっと...

ビゴさんのフランスパン物語
ビゴさんのフランスパン物語
  • 発売日: 2000/01/01
  • 売上ランキング: 64141

『ビゴさんのフランスパン物語』塚本有紀
[3/190]Libarary
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

自分の身の回りを見渡しても実感できる。「パン屋さん」或いはそこにあるパンの種類が、自分の子どもの頃と比べると格段に違う。食卓に出てくるパン、給食で出てくるパン、普段出会うことのできるものは「食パン」「アンパン」「カレーパン」がメインだったような記憶。
今や敢えて取り上げるべくもない「フランスパン」を、「閉鎖的な」日本市場にもたらした職人、フィリップ・ビゴの半生或いはその「仕事」への取り組み姿勢を描いた内容です。特に「米」という絶対的な主食を持つ日本の食卓へ、フランスパンの進出はそれはそれはかなりのハードルの高さであったろうと想像されます。ビゴさんは、「日本人にフランスパンを食べてもらいたい」という信念を持ち続け、それを貫き通すことで浸透が進んでいった。たとえば広告宣伝による拡散ではなく、あくまで「本物」を提供し続けてきた、その姿勢まるごとが、日本の食卓への浸透につながった過程が克明に描かれています。ビゴさんのプロフェッショナルな取り組みを軸に、史実的なストーリー展開です。
一部の「失敗事例」はあるものの、進出に関する成功事例、ビゴさんの素晴らしさが中心、というかそれしか書かれていないので、今一つ盛り上がりに欠けるのは事実。というか、「フランスパンの日本における歴史上の最大貢献者」たるビゴさん、そしてその苦労の末の成功という点のダイナミックさ、劇的さが感じられずに、淡々とした「すごいんだろうな」的な感想で終わってしまう可能性も。まあ、これは自分がそれほどパンに興味が深いわけでもなく、また、逆説的にいえば、それだけ、今フランスパンが「当たり前」になった証左かもしれません。
ビゴさんの素敵なところは、「本物を作り上げる」ことの重要性を持ちつつも、「売れる」=多くの人に食べてもらう、という点も同じくらいのウエイトで重要と考えているところ。金もうけではなく、というところが留意点ですが、多くの人に喜ばれることを成果点にあげています。単なる「研究者」タイプではないところが成功の要因のひとつなのかもしれません。
プロである姿勢は、「労働集約」という概念を持たない、或いは時間を犠牲にしてでも品質にこだわる、といった 時間の使い方にも表れています。それゆえの衝突も少なくないのでしょう。プロがプロたるゆえんなのかもしれませんが、「好き」であることが根底にないとできないことでしょう。深夜から始まる仕込みは、開店時のお客様の笑顔で癒されるのかもしれませんが、それの代償もあるはずです。このあたりはプロ意識のなせる技という表面と、もう一方の「負」の部分にもふれてあると、「プラス面」が浮かびあがるのかも。いいことばかり、だと「何かあるんでね?」と思ってしまうひねくれ者の考え方かもしれませんけれどもね。
残念ながらビゴさんのお店が近くにないのですが、機会があれば寄ってみたいです。食べてみたい。他のパン(屋)との違いを感じるのかな。多分感じないくらい「自然」に「日本食」になっているような味なんだろうと思います。

【ことば】収支に振りまわされていたら、食にたずさわる人間として見落とすものがあるかもしれないと思う...

ビゴさんの影響を受けて「本物」のパンを売る店を営む経営者。仕入の素材からのこだわり、「できるだけ生産者に近い形で」モノつくりをしようとする意気込み。もちろん「収支」は大事なんだろうけれど、それが第一優先には来ないことが大事なんだろうと思う。これが「プロ」だ。

ビゴさんのフランスパン物語

【書評家のご意見】
本書の書評、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね


VISION 
素顔のままで

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