- 強運の持ち主 (文春文庫)
- 発売日: 2009/05/08
『強運の持ち主』瀬尾まいこ⑤
[9/165]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆
OLを辞めて、「一人でできる仕事がいい」と始めた占い師。もちろん「専門的な」占いの知識を携えつつも、「相談」に来た人に気持ち良くなって前向きになって帰ってもらうための「話術」も兼ね備えつつある主人公...
占いに来る人にはもちろん、悩みがあり、人知れぬ悩み、自分でも行き詰ってしまっている状況、誰にも相談できないこと...様々な環境を抱えている人と、それに「アドバイス」をする占い師。その占い師自身だって、一人の人間であり、同様に悩みを抱え、アドバイスを欲している場面がある。それなりに名の売れた占い師ではあるけれども、当然だけれども一人の女性として、一人の人間として描かれている姿は非常に「人間くさい」。
かつて別の女性と(恋人同士で)現れた、自分ととても相性のよい男性を、あらゆる手を使って「奪い取った」話、「終わりが見える」と言われた自分自身のことを気にするあまり他人の占い(=仕事)に集中できなくなっている話、師匠から独立して占い師を職業にしていながらも、解決できない場面では、かつての師匠に相談する占い師、自分の一番近くにいる人の「運勢」を変えようと努力する女性としての自分...「占い」という特殊な世界に属しているけれども、そこにいるのは等身大の自分だったりする。当たり前だけれども、なんだかほっとする、温かい文調もあって、緩やかな安心できる読み物の世界に浸れる。占い師として特殊な技能を持っていないのかもしれないけれども、そんな「人間くさい」主人公だからこそ、人の痛みを感じることができ、人の心を感じることができるのかもしれない。占いって、未来を言い当てることだけではないのかもしれない。安心させてくれる、背中を押してくれるもの。そして押してくれる人は、信用できる人にお願いしたい、そんな気持ちは当然だよね。
いろいろな「特異」な相談事が舞い込むストーリー展開の中で、主人公はその出来事を通じて、ひとうひとつ「幸せ」を見つけていきます。大事なことがわかってきます。小説の中の話ではあるけども、遠い星からみていたら自分の人生もそうなのかもしれない。そうあってほしい。
これは本書のみならず瀬尾さんの著作に共通することではあるけれども、「身の回りにある幸せ」に気づくそれに気づいて自分(主人公)が成長していく、というストーリーが根底にある。家族、恋人、自分の幸せ。近い故に見失っている可能性がある大事なことに、気づかせてくれる。
【ことば】 竹子さんの明日を決めるのは、占いでも自分自身でもない。竹子さんの明日は子供によって、動いていく。
占いのアシスタントに来た竹子さん。再婚の時期について占いによって出た最高のタイミングよりも、自分の子どもの判断にゆだねる。占い師であるのに。これが人間。星によって決めることばかりではない。何が「幸せ」か、っていうこと。
強運の持ち主 (文春文庫)
【書評家のご意見】
本書の書評、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね
読書NOTE
図書委員(ヒラ)の書斎
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