- 柳井正の希望を持とう (朝日新書)
- 発売日: 2011/06/13
『柳井正の希望を持とう』柳井正③
[10/166]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆
「あの」ユニクロの柳井さん。『一勝九敗』よかったです。『成功は1日で捨て去れ』まずまずでした。そして...震災復興に機を合わすかのようなタイトル。閉そく感に包まれた私たちを説き放してくれるのか...あくまで個人的に、ですが、正直、前にあげた2冊ほどの輝きを感じられませんでした。もはやユニクロも大企業、世界企業、著者も世界的な経済人、庶民の自分との距離がかけ離れてしまったのでしょうか...
タイトルにある「希望を持とう」は、本書の中ではあまり見つけられませんでした。そもそも本書のテーマが「希望」ではありません。確かに夢を持って、持ち続けたからこそ今の自分がある、的な表現はありましたけれど、「一所懸命働きなさい。働かざる者食うべからず」というのが延々続きます。最近の若い人は競争心が欠けています。そういう人は駄目な人。そうかもしれませんが、お店に来るお客様もそういう人、ですよね。全体を通じて、「俺の言うことは絶対。俺がしてきたことに間違いはない」という、強さが際立ってます。それ以外は受け付けられない、っていう感じすらあります。それはそれで日和見的な経営者よりは心強いのかもしれません。緩んだ現代の日本にとっては、抜け出す道はそれなのかもしれません。が、なんとなく違和感です。
途中で「社会貢献」について語られていますが、大半は「どう競争してどう勝つのか」「人の管理とはこうするものだ」「会社が成長しなければ価値なし」的な、どちらかといえば「儲け」に偏っていて、「人」の成長自体に目が向けられていないような気も。以前からそんな感じでしたっけ?
長年のユニクロ利用者で、著者のことも尊敬しています。大企業、世界企業になって、その実行力や推進力、アイデア、ユニークな視点、どれも尊敬する人物です。
お金や市場、人材管理、それらは経営者としては当たり前のことなんでしょう。確かに大事なことです。でも、消費者としてみたらあんまり関係ない。品質、それよりもそこにあるサービスに目が向いています。パリのお店が売り上げ第一位であること、今度の週末にヒートテックを買いにいくことに関連性はありません。ちょっとがっかりしたのは、冒頭にあった、年初に全社員に向けて著者が発信した言葉「目標は日本一兆円、中国一兆円、アジア一兆円...」というスローガン。もちろん天と地ほどの差はあれど、これだけ見てしまうと中小企業のワンマン社長が、聞きかじりのフレーズを朝礼で言うのと変わんないですね。世界企業としてより進出を進めていくに当たり、社内公用語を英語にする。すごいですね。でももし、自分がそういう会社で働いていたら、そしてその発令をいきなり聞いたら、どう思うんだろうなあ...
いろんな見方があるとは思います。こういう考えもひとつ。ああゆう考えもひとつ。そんな様々な価値観のバランスを最もうまくとっている企業だと思っていましたが、本書の内容だけでいえば、偏りすぎ、ですねー。
会社の成長も大事です。でも成長が止まったら価値がないわけではありません。ましてやそこで働く社員の成長は会社の成長とは無関係です。会社の成長は、社員の成長があってこそ成り立つもの。そこで働く人が一番大事でしょ。その「一番大事」なところから出てきたのが、一兆円なり英語なりだったとしたら、世界一素敵な会社ですよね。
前の本がよかっただけにちょっと残念です。少なくとも、「ユニクロ」という、希有な発想を持つ魅力的な企業のそれとは思えませんでした。タイトルも機を狙ったわけではないのでしょうが、ちょっと「ビジネス」の匂いがしてしまいますね...
もちろん、柳井さんは尊敬する経営者で、ユニクロは素敵な企業である、ということには変わりがありません。
【ことば】...短期の視点しか持てない人は会社の理念よりも目先の利益追求に走る傾向にある。それでは会社にとって得とは言えない。
会社にとって「得」かどうかはしりませんが、こういう人は少なくないです。視点の先は、「今日の利益」と上司、くらいしかないのでしょう。従業員ましてやお客様へ向けるべき目は持ち合わせていませんね。「目先の利益」を仮に得たとして、それが何なのでしょう。「次」はどうするんでしょう。
柳井正の希望を持とう (朝日新書)
【書評家のご意見】
本書の書評、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね
知識をチカラに
タイチブログ
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