2011/09/21

母校は人生のひとつ。

早稲田実業 躍進の秘密 (朝日新書)
早稲田実業 躍進の秘密 (朝日新書)
  • 発売日: 2011/02/10

『早稲田実業 躍進の秘密』渡邉重範
[12/168]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「昭和」の卒業生ではあるけれども、わが母校への思い入れはけして薄れてはいない。世代的には、その名を極限まで高めた「ハンカチ王子」よりも「大ちゃん」が近いのだが、特に夏の高校野球の季節、地方予選から気になってしょうがないのは、昔も今も変わらない。
国分寺への移転は、正直個人的には「大歓迎」ではないし、共学、小学校の設立も、ちょっと(商業的な感じがして)さびしい思いがしていた。ワセダノモリで過ごした卒業生として、その場所が失われる寂しさ、男子校がよいとは言わないけれども、母校を思い出す時に、母校が紹介されるときに、女子学生や小学生がそこにいるのはちょっと違和感を感じることもある。
その「大改革」を成し遂げた校長先生が、早実の歴史、伝統、未来について語る。前半は、「甲子園」が中心。なんといっても王さん、そして荒木大輔、斎藤祐樹。その時代を象徴するスターを輩出する伝統高である。斉藤投手を擁して優勝するまでは、(王さんの時代の春の優勝は知らないので)「甲子園で強い」というよりも、正直「負けた」時の方が記憶に残っていたりする。何度か応援に行ったし、負け試合も観戦した。サヨナラ負けの現場にいたこともある。高校野球に対する過度な感傷の思いもなくはないけれども、真夏の球場で「勝ち」に向けてひとつになる姿は見ていて感動を覚えるものだ。偶然かわからないけれども、王さん(1940年)、荒木(1964年)、斎藤(1988年)と、3人が辰年生まれ、というのもすごいね。3人がハイライトされているだけで他の時代の選手にも素晴らしい人はいたんだろうから、これだけでは何も言えないけれども、次は2012年生まれの投手か...先になりますねえ。
世間的には彼ら3人を中心とする「野球」が一番分かりやすいんだろうと思う。が、あくまでも早実は野球だけではない。著者である校長先生も「文武両道」をその歴史をもって再三にわたり強調されていますが、他の学校の内実はしらないが、「文武両道」という伝統をいまもって保持していると確信する。まして今や、受験という世界では最高水準にあると聞く。大学へのパス、のような学校にならないことだけを祈ります。「進学校」だけになってしまうのは、なんだかこれもさびしいですから...
...と、卒業生である自分は、当時を思い出したり、今は随分変わったなあ、ここは変わっていないなあ、っていう郷愁をもちつつ、読みました。が、他校の方々にはあまり有益な内容ではないような気もします。単なる「宣伝」的な本になってしまう恐れもありますねー。卒業生が大事なことを思い出し、卒業生であることを誇りに思う、そんなポイントのみでいいかと。「学校紹介」的な内容も少なくないのですが、そういうのは「一般書籍」としては不向きではないかなあ。甲子園、斎藤投手の話、写真が最初にでてくるのも、「入りやすさ」なのか「商業的」意味なのか。もちろん学校経営もビジネスであるけれどね。

【ことば】...冷戦後の世界は...世界政治が多極化し、多文明化した。このような世界にあって建設的な行き方は、普遍主義を放棄して多様性を受け入れ、共通性を追求することであろう。

校歌「世界を一に結ぶべき」というフレーズが「生きている」ことを証明する校長先生の考え方。高校生が理解できる範囲は限られているけれども、その真髄はその時代に刷り込まれたから、残る。多様性を排除しては前に進めない。「世界」というテーマでなくとも、身近なことでも、いっしょだ。

早稲田実業 躍進の秘密 (朝日新書)

【書評家のご意見】
本書の書評、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね

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