- とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起 (講談社文庫)
- 発売日: 2011/05/13
『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』伊藤比呂美
[6/162]bk1
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★☆☆
「詩人」だそうな。のっけから「この文章はいったい...?」という感じで、初めて体験するような書き方。英語の直訳調はまだしも、リフレインや、「気持ち」の並列....これが「詩歌」なん?って読みにくさ満載、と思われたけれど。慣れるもんです。読み進めるうちに慣れました。逆に「軽快」に感じるところもでてきて...これが著者の「技量」なんでしょうか...
老いた両親、いろいろな事情を抱えてアメリカに暮らす本人、外国人の夫との意思のすれ違い、娘たち(それぞれ「父」が異なる)とのやりとり...50歳を迎える「おばさん」の奮闘記、といっていいのだろうか、普通のおばさんではないのは確かだけれど、環境の「激しさ」はあれど、両親、配偶者、子供、といった「家族」を構成する要素が話の大半であり、この部分だけでいえば、どこにでもある素材。病魔に侵され入院する母、一人家に住み、老いの速度が増す父親、両親の「生と死」というのがメインテーマ(だと思う)。理解してくれない夫(外人)との確執もあり、ご自身の体調も悪くなり...どこまでが実話で、どこがフィクションなのか、そもそも小説なのか、よくわからない。わからないけれど、最後の方に向かう過程で、そんなことどうでもよくなってきた。シンプルに「読み進めること自体」にエンターテイメントを感じるように...(って「詩歌」を味わうことのできるアタマはもっていないけれど)
はたして著者はこの本で何を言いたいのか、これも分からない。わからないけれど、これもどうでもいいや。勝手な解釈をしてしまうけれども、「詩人」は何を言いたいか、ということよりも、「どう表現するか」に偏重しているような気がする。「詩的」な表現、なのだろうか、それもわからないけれど、直接表現はしていないものの、両親の「死」に向かっている状況に対して、そもそもこれは表現できるような感情ではないのだろうが、著者の気持ちを「詩的に表現」している、のだろうと勝手に理解。
苦悩とか、死への怖れ、生というものの考え方、これらの「解説」を試みている本はあるけれど、よく考えれば、表現できるようなものではないんだよね。それを「しろみ」さん(=著者?)を通して、その表現しきれないココロノウチを、書いているんだろうなあ。
この本は深入りせずに、「勝手な解釈」のまま、にしておきます。それがよさそうだ。
【ことば】その叫び。その笑い声。生きてる、生きてる、生きてる、生きてる、と、いっているようにしか思えなかったのです。
家族で出かけたスキー。橇で遊ぶ子供たち。子供の叫び声、笑い声は、(もちろん当人は意識していませんが)「生きてる」と聞こえます。陳腐な熟語でいうと「生命力」でしょうか(詩的、ではありませんね)。全力で100%の叫び、笑いだからこそ、そう聞こえる。大人にもできる?かな。
とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起 (講談社文庫)
【書評家のご意見】
本書の書評、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね
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風の便り
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