2010/02/18

プラスマイナス...


『「旭山動物園」革命』小菅正夫
[10/26]AMAZON
Amazon ★★★★
K-amazon ★★★

いまや「アイデアの勝利」の象徴的存在でもある「旭山動物園」、個人的にも行ってみたいっ、という興味津々。じゃあ、そこになにがあるのか?って実はよくわかってなくて「話題になっている」から興味がある、レベルなんだけれども。一時期落ち込んだところからの回復、という話は耳にしていたので、そのストーリーを読んでみたかった。実際に本を開くまで、当園の園長自らが著した本だとは知らず。
実は、特別なことはしていない、という事実。最北の地、厳寒の地というハンデがありながら、そして珍獣がいるわけでもなく、パンダがコアラがいるわけでもない、そんな中で有名な円柱の中を泳ぐアザラシなど、どのようにアイデアを出していったのか...
それは、「動物の目線」というポイントだったということ。人間から見た「見せ物」としての動物園という発想では、芸をさせたり、効率よく見てまわれるような配置を考えたり、というテクニックしか出てこないが、動物が本来の生活をしているさまを見せることが即ち「見られる」動物のストレスを減らし、それによって「見る」人間側の満足度もあがる、という循環。そして本来動物園が動物園である存在意義、「レクリエーションの場」「教育の場」「自然保護の場」「調査・研究の場」を根底にもっていれば、必ず行き着く場所。そんな本質的な考えがなによりも重要であることを改めて感じた。
この本には直接的に書いていないが、その発想の根底には「モノゴトを別の側面から見る」というものがあると考える。
「人から見てどうだったら面白いのか」→「動物が快適になるにはどうしたらいいのか」
「日中は寝ているだけの動物が不評」→「(動物が活動する)夜間の営業を実施する」
「予算がなくて説明パネルが作れない」→「手書きPOPと飼育係自らの『言葉』で伝える」
うまくいった結果だけみれば、誰だってできることかもしれない。でもそこにたどり着くためには、まず「違う視点を持つ」ということを考えないと始まらない。ちょっと遠いかもしれないけれど、これは仕事だけではなく行き詰まりを感じている全てのことに通じるものがある。
そして、本書ではチラって垣間見せていたけれども、その発想を持ち実行に移せたのは、それに携わる方々が、ベースとなる知識、経験、そして気力を持っている、ということ。実はこれが最も大事なことかと思う。
終盤の「繁殖」のところとか、一部「ん?」というところがあったり、絶滅品種を救うための活動(これに関しては若干、個人的に賛同できないところがある)のことがあったりで、個人的には「前半盛り上がり」という流れだった。けども少なからず得られるものはあった。それとは別に極めて個人的な興味から、一度訪れてみたい。そのときにはこの本のことを忘れて、心から楽しみたいと思う。



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