『かわいい部下にはハシを持たせよ』官谷浩志
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なんやら良くわからないタイトル、知らない著者、住宅業界の営業の話?...得られるものは果たしてあるのか?という不安を元に読書開始。実は買ってから随分と時間が経ってしまったので、これを買ったことすら忘れかけていた...そんな環境の中。
営業としての成功事例、よくあるマネジメントのノウハウ、と思いきや、まさに「本質」がここにはあった。大きくは二つの「気づき」あり。
ひとつめ。「無関心」に対する糾弾。クレームも、もちろんモチベーション低下も、全ての要因は「無関心」にある、と。無関心故、クレームが起きても無関心、対応は(一応実施しても)無関心、再発防止策なんてまして...そしてそれに対しての注意にすら「無関心」。この繰り返しで起業のパワーは失われていく。「罪」とまで著者はいうが、そういう「無関心層」は増殖する、とある。ひとり、それがいることで周りにも伝播し、いつしか全体が罹患してしまう...なんだか数ヶ月前に実体験している私はヒトゴトではない。幸いにも「我流」でその排除をしたが、もしかしたら今でもその余波があるのでは?と考えてしまった。確かにそれは一番怖い。スキルレベルがどうこう、ではなく、発病と伝染、これほど怯えることもないだろう。その早期発見と流行防止。これに対する「対策」はあまり具体的にはなかったけど、それはケースバイケースだろうからね...
そしてもうひとつ。本の半分過ぎるまでこのタイトルの意味がわからなかったんだけど、著者率いる住宅メーカーでは、「売った後」のお客様の家に訪問して、「食事を招待してもらう」という取り組みを始めたそうで。これだけ見ると突拍子もないことだけど、つまりは家=「ハコモノ」を売っているわけだけど、そこで生活を始めて「住まい」となったところで、実際に安くはない買い物をしたお客様からの本音を聞く、という活動だそうで。イメージ的にも特に「アフターフォロー」がなさそうな業界(売ったらそれまで)だけど、そこに本質的な「CRM」という概念を見出している。よくある「アンケート」ではなく、また「食事会への招待」ではなく、お客様の「ホーム」でお客様の本当の言葉で、意見、指摘をいただく、つまりは関係性を深める。それは今後の業務に生かす、という点だけではなく、業務に直面するスタッフが本当の意味でのゴール設定(ここでいえば、自分が売る商品=住宅で生活をする家族の笑顔を実現する)ができるようになる、ということ。「招待してもらう」というのは突飛な発想だけど、「それさえできない人間関係ってどうなの?」という指摘にはうなずくしかない。で、お客様をご招待する、というのはお客さまが「アウェイ」であり、そうではなく「ホーム」で聞くことに意味がある、という。その際にせめてもの礼儀として「ハシ」を持参しなさい、というのが、このタイトル。そもそも「食事」をするからより深くなれる、ということもある。
なんとなく「食事を一緒にする」ことの大事さってわかる気がする。1歩親しみが増すことも確かにある。がそれは手法であって、なによりも「住宅を何件売った」ではなくて、そこに住むことで幸せを手にしたお客様が何人いるか、という視点にその営業がマインドをシフトしていく様子が素晴らしい。そこには住宅の「スペック」というものは中心にはない。あるのは「人」。本質。
自分が売っているのは住宅ではない。嗜好品である。けれども、それを「こんなにスペックが高いから買ってください」というのは本質ではない。これを買っていただくことでそのお客様がどんなライフスタイルに変わっていくのか、どんな気持ちになっていただけるのか。そして通信販売という「顔も見えない」業態ではあるけれども、それをその気持ちを「伝えて」いくことが本質かと。漠然とイメージしていたことがこの本で少し現実味を増した。「住宅という世界でもそれを実現できている」ことが少なからず刺激になった。これまでの売り方に違和感を感じている、行き詰っているチームリーダーにはかなり響くんではないだろうか。っていうかこれを読んで何も感じないようでは、その時点でダメかもしれない、っておこがましくも思った。
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