2010/02/17

理想のリーダー像がそこに


『即戦力の人心術』マイケル・アブラショフ
[9/25]BookOff
Amazon ★★★★
K-amazon ★★★★

アメリカ海軍の「リーダー」が、その旧態依然とした組織の中でどのように「最高のチーム」を作り上げたか、という話。会社(営利企業)ではなく、軍隊の話ではあるが、その置かれた環境(国防長官をTOPにしたヒエラルキーの中で、前時代的なルールの中で、モチベーションが下がりがちなメンバーを鼓舞する...)など、(ちょっと無理やり?)自分の今、置かれたそれと重なり合わせることもできたりして、そのチームビルディングの「考え方」に深いため息。通り一遍の「ハウツー本」にはない、心底リアルな現場がそこにはある。あくまで艦長=リーダーの立場から書かれているので、実際にはスタッフがどう思っていたか、あまりに「できすぎ」のところはあって、実際にはそれなりの反発も招いていたのだろう、と思ったりもしたが、それにしても「リーダー論」としては突出していい本だ。これまで読んだ同様の本の中でも飛びぬけている。
巻末に訳者の「解説」がでているが、そこから引用すると、3つのポイントが上げられる。
1.働く環境を「オープン」で「フェア」にする
2.働く者一人ひとりが「自分で考えて仕事をしていく力」を身につける
3.必要なときに全力を出し切るためのの万全の準備=体力、やるき・気力・意欲、能力
細かな話は別として、貫かれていることは「チームへの信頼」「スタッフの成長に向ける愛」である。著者は「部下たちが日々向上し続けるのを目にした興奮は忘れられない。これほどのやりがいのある仕事はたとえ報酬がなくてもやっていただろう」とまで言っている。こんなふうに言えるのは、スタッフとの信頼関係、そして愛情なくしては語れないと思う。
自分はその域に達することができるのか?「スタッフの成長」とは言っているけれども、我慢できなくて自分がしゃしゃり出てしまうことや、必ずしも100%の情報をオープンに仕切れていない、など、まだまだ「信頼関係」は不十分だ。それよりも目先の「数字」が優先されてしまうことは、正直少なくない。ここまで手禎できるのか...いや、しなければならない、と考えよう。少なくとも今の「チーム」は、それに値するメンバーが揃っている。だから自分次第。そうなんだよね。
従来の「ルール」を破る、ことにおいても、そこには「本質」を捉えて、本質と古いしきたりをどちらを選択すべきか、という基本的なところから行動が生じている。何をもって、誰の為のルールなのか。本質を見極めるのは大事、そしてそれに近づくための行動はもっと大事、それよりも行動を「起こすこと」がさらに重要だということ。
軍隊の話、ではあるけれども、けして遠くない。充分、というかそれ以上に実社会で役立つ「マインド」を得ることができる。読み進めていくにつれ引き込まれてしまうのは訳の役割も大きいように思う。元トリンプの吉越さんの考え方も、著者のそれと同調するところが多いから、なんだろうと思う。
巻末の訳者の解説もすばらしい「まとめ」だ。よくあるのが「解説」の方が難解であったりするケースだが、本書においては著者が最も訴えたいポイントを見事に的確にまとめたいただいていると思う。こういう「まとめ」ができるスキルが欲しい、と思ったほど。最後の最後にご自身の主張を(本書に直接的に関係なく)書かれていたことが少し残念。気にならないけどね。
最近この点が気になって仕方がないのだが、やはり本から得るべきものは「考え方(のヒント)」であって、「テクニック」ではない。そんな読み方をしていくと、読書はやはり面白いと改めて感じる。

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