2010/01/27

「対策」を読み終えた充実感

『セムラーイズム』リカルド・セムラー
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K-amazon ★★★★

ブラジルの小規模メーカーの2代目が、会社を「変えた」話。ここには「効率化」というレベルの内容はなく、考え方そのものを「変えた」そのレベルに驚愕である。
ピラミッド組織から同心円型組織へ、サラリーの自主決定、部下による上司の評価査定、社員の企業家独立支援...訳者があとがきで「ラジカル」と表現しているが、まさにぴったりな表現と思える。「給与の自主決定」は別として、そのほかの「変革」は実はここ日本でも概念的にはもっているものかもしれない。けれどそれが実行されているかどうか、また運用されているかどうかは別問題で、おそらく運用しているところは実際にはないと思われる。
服装はもちろん、時間についても、従業員の自主的な決定による。組合、工場委員会の行動も枠にはまっていない(むしろ会社がその行動を支援している)等、現実としては考えられないことを実行してきているところに驚く。訳者によれば、これらの前提としてブラジルの仕事環境にも起因するところがあるようだが、もちろん当地の企業がこのような考え方ばかりではないだろう。
根本的には、従業員に対する「信頼」、多少曲がった表現とすれば「性善説」を前提にしている。当企業の代表である著者は「従業員の満足度」をなによりの目標としてかかげ、それが出来て初めて、製品の質向上や、会社の体質強化につながる、そんな考え方の持ち主。
これはそうそうできることではない。考えることはできる。でもやっぱりそこまでできる自信は正直ない。父親から引き継いだ会社を立て直すため、また国全体の経済環境の悪化から会社が傾きかけたときのリカバリーとして、そんな状況のときに、まずは「企業に働く人間のあり方」を変える、という視点に立てることがまさに尊敬に値すると考える。
なかでも「起業支援」、つまり、社内における特定の分野で才能を発揮できている人は、その分野における起業を会社として支援する、そしてその独立した会社との関係(具体的には「発注する」ということ)を気づき、そのような流れから会社本体のスリム化も計れる、というのがメカラウロコ。この概念自体はなくはないと思うのだが、将来的に「本体」への復帰もまったく問題ない、というあたりが、この流れの優れている点であるかと思う。社内はスリム化、独立した人間はモチベーションUP、発注先としてこれほど適した(本体のことをよくしっている、という点で)パートナーはない、いいこと尽くめ、である。
そう、なにも社内で全て完結しなくてもいいということ。これとはレベルが違いすぎるけど、多少「考え方」としては今の自分の環境においても流用できないことはないかな。

文庫版で文字が小さい上に500ページに及ぶ大作(世間的にはどうかわからないけど、自分にとっては久々の「大作」であった)。が、後半に及ぶにつれ面白くなってきて、集中力がたかまってきた、という文書の魅力もある。
余談だけど、所謂「ハウツー」もの、とくに「勉強法」類の本には、「読書の方法として1冊の本を全部読む必要はない」みたいな書き方をしていることを目にする。が、やっぱり「読了」することも大事だと思う。自分にとって、この本はまさに「途中離脱」しかけたけど、今こころから「読み終えてよかった」と思える。小さな達成感かもしれない。でも大事だと思う。

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