2011/10/21

久しぶりに「面白い」と思える小説に出会った。

まほろ駅前多田便利軒
まほろ駅前多田便利軒
  • 発売日: 2006/03

『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん②
[11/184]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

まほろ駅前で、便利屋を営む主人公多田と、偶然に出会った元クラスメート行天との「個性的な」二人が出くわす事件。「便利屋」という時点ですでに「小説的」で、事件の発生を暗示させるものであるが、主人公の二人のキャラの「濃さ」の方が印象的です。最後には明かされますが、「過去」を引きずる多田、多田が「主犯格」として学生時代に起こした事件の相手である行天。「暗い」部分を持った人間が、便利屋稼業を遂行していく中で出会う「クセのある」人物たち...
「小説的」ですねー。現実とはかけ離れたドラマの世界。もちろんそこを受け入れたうえで、読めるんですね、非常に楽しくワクワクしながら読めます。その世界の中でうごいている人たちの「人間臭い」部分、主役以外も際立っています。続きが気になって読み続ける、なんていう体験を「小説」で実感したのって、久しぶりのような気がします。
発端は、「居場所」を失った行天と、主人公が出会うところから、ですが、便利屋という仕事をしている多田においても、実は「居場所」があるようなないような状態であって...水商売の女性や、10代のヤクザ、親に愛されない(と感じている)子ども、「居場所」を探している、探しながら生きている人たちが登場します。その中で、主人公はこれまで捨てきれずにいた「過去」を受け入れ、乗り越えられるような心情に移っていく。居場所を見つけにいくような準備が整いつつあるような状態まで「帰って」きます。
特に「心の病」って、時間が解決する、っていう簡単なものじゃなくて、やっぱり残るもの。それを「忘れようとする」のか「受け入れる」のか。受け入れたうえで、次に進んだ方がいい。多分完全に捨て去ることはできないのだから。妥協ではなくて、「次」の一歩を踏み出すために受け入れること、簡単ではないけれども、そう考えるべきかと思う。 どんなに苦い経験であっても、それは「今の自分」を構成している一部であるのだから...
まあ、こんな読み方をする必要もなく、シンプルに「娯楽」として読めば十分に楽しめると思います。著者の本は2冊目ですが、小説は初めて。軽快で、「続きが気になる」気持ちにさせてくれるスタイルはひきつけられます。多分、これから何冊か読んでいくことになるかと...本作のDVDは、見ないと思います。今読後のイメージのままでとどめておきます。

【ことば】不幸だけど満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だということはないと思う。どこで踏みとどまるかは北村クンが決めることだ。

主人公多田も、行天も、「内側」に問題を抱えている依頼者(あるいはその関係者)に対して、本質的な「言葉」を投げています。堅苦しくなく、嫌味でなく。この「ことば」を意識しながら読み進めるのも、面白い。

まほろ駅前多田便利軒 【書評家のご意見】
本書の書評、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね




映画な日々。読書な日々。
やおよろず書評



0 件のコメント:

コメントを投稿

Twitter