- 未来創造 夢の発想法 (角川oneテーマ21)
- 発売日: 2010/09/10
[12/134]Library
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K-amazon ★★★☆☆
これまで観た映画で一番よかったのは?と聞かれたら、『銀河鉄道999』と答えます。特に松本零士作品がみな好きなわけではないけれども(ヤマトはあまり思い入れがない)、小学校の頃だったと思うが、映画に行ってサントラ盤(当時はLP)を買って、クライマックスのセリフは暗記できるほど見た、聴いた記憶がある(週末借りに行こう...)。そんな作品の著書とめぐり合うとは思ってもいなかった。
本書は、著者が漫画、アニメーションに対して思うこと、仕事の仕方、次の世代に託すこと、などがつづられています。ビジネス本ではないし、ノウハウを見出すものではない。著者自身の「思い」を感じることができるエッセイ的な内容に終始。これだけのベテランなので、言うことは「重い」のだが、ひとつ感じられたのは、漫画、アニメーションというフィールドにおいて、その「成功の秘訣」として著者があげている、「作者の思い」という点の重要性。技術的なところはともかく、徹底して研究し、細部までこだわるところに「プロ」を感じる。そして、「何のために描くのか」というテーマを強く意識していることが印象に残る。個人的な趣味をベースにしたテーマ設定である部分も少なからずあるかとは思うが、そこに「誰に(メッセージを)届けるのか」「この作品が世に出ることの理由」を考えている。考え抜いている姿勢に共感です。それがあるが故に、徹底したプロの作品ができるし、思いが伝わるのであろう。
写真や映像から描くよりも、モデル(実物)を目の前にして描く。取材等を通じて、自分が実際に「目」で確かめたことを描く。それが「伝わる」理由なのだと思う。もちろん、著者の作品の多くを占める「宇宙」という世界は実体験していないけれども、そこに近付く努力を、現実の世界でも追い求める著者の姿を垣間見た気がする。漫画にせよ、アニメにせよ、その「実際のものを描く」とか「その意味」とか、そもそもその根底にある「思い=こだわり」とか、それって大切なポイントですね。漫画に限らないよね。世に出す制作物や、他者とのコミュニケーションにおいても同じことだと思います。そこに「思い」を持って、「伝える」ことを明確にして。テクニックはその上に立って成り立つものであって、それだけでは(一時的にすり抜ける可能性はゼロではないが)ベースがないことには、不安定になってしまう、ということ。
当然ですが、ヤマトや999の話が出てきます。そこの登場人物が著者の中では、現実とオーバーラップして生きているような感覚です。それだけ「思い」が乗り移って、そしてそれゆえに登場人物に躍動感が生まれるのでしょう。その登場人物の話や、造詣の深い宇宙や戦艦の話になると、著者はまるで少年のようになります。本を通じて、ですが、その目がきらきら輝いているような感じがします。「本気」なんでしょうね。うらやましいほど、その「思い」をアウトプットし続けている著者には、これからも魅力的なものを見せてほしいと心から思います。そして自分も「少年」を持ち続けられるものを見つける、自分の中にきっと眠っているであろう「それ」を見出すことをしていきたいと思います。
【ことば】人をやっかんだり足を引っ張る人間は決して、その相手と同じ土俵には立てない。その相手を認め、応援してこそ、同じ土俵で勝負できるのだ。
こういう話が妙に響きます、最近。「競合」「戦略」...この手の言葉のもつ力に違和感を覚えます。著者のいうように「同じ地球人」という規模で考えるほど高レベルには達していませんが、いいライバルとは、すなわちいい仲間であること、これが本質ではないかと感じています。
未来創造 夢の発想法 (角川oneテーマ21)
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