2011/07/12

粋な大人、かっこいー!


大人の流儀
大人の流儀
  • 発売日: 2011/03/19


『大人の流儀』伊集院静
[6/128]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

名前は知っているし、作家であることも知っていたけれども、初めて読む伊集院さんの本。イメージとして(勝手に)スマートな、洗練された人物を思っていたが、繰り広げられるエッセイの中から見る人物像は、どちらかといえば無骨な、「古い」男、という感じ。飲む、打つ、という「昔ながらの」行動を今も続けている男が女優さんを引き寄せる魅力を持ち合わせている理由がなんとなく垣間見える。
自分の生き方とはまるで別世界だ。うらやましいけれど真似はできないだろうなあ。ある程度「自由」な生き方であり、しかしながらその実、裏側には苦悩や諸々の事情を抱えている(生きていれば、当然なのだけれど)中で、それを表には出さない。それを乗り越えるのに「酒」があるという。酒が解決策ではないと思うのだけれども、作家故の引き込まれるような書き方にもよって、そこに出てくる人物の魅力が増している。
かっこいい。こういうのを「粋」っていうのだろう。そんな「粋」な人の人生、考え方を読んだところで、自分に置き換えるだの、何かをここから得るだの、そんなことはしなくていい。それこそ「無粋」であろう。エンタテイメントとして読めればそれでよし、ということだと思う。彼の主張する考え方、見方についても、自分が共感するところは共感すればいいし、違う意見だったとしてもそれを受け入れる(受け流す)だけでいい。本全体に流れる軽快なトーンがそういう気持ちにさせる。
「ただ金を儲けるだけが目的なら企業とは呼べない。企業の素晴らしい点はそこで働く人々の人生も背負っていることだ..」
「不安というものが大切ではないか...不安は新しい出口を見つけてくれる唯一の感情の在り方かも。」
いいですよねえ。「中」にいては見えない本質を言葉にしてくれている。ご本人は企業で働いていた経験もあるので、けして「ヒトゴト」でいっているだけではないし、あくまでも「生き方」をベースにした考え方なんだよね、すべてが。そんな当たり前のことが、ともすれば忘れがちになる環境、それってどうなの?って思う。なんのために働いているのか、なんのために生きているのか。ビジネス本、ハウツー本には出てこない、こういう「生き方」の本、しかもコンサルでない人の「生き方」の本は、痛快であり、気持ちがいいものだ。たとえ今はそれが自分にはできなくても、ね。

【ことば】どんな生き方をしても人間には必ず苦節が一、二度むこうからやってくる。

 一、二度かどうかはともかく、それが人間なんだろうね、生きている、ってことなんだろう。「そんな時、酒は友になる」ていう著者は、かっこよすぎます。「酒は一時的なもので、そこから抜け出す解決策にはならない」なんて、ハウツー本に書かれているものよりも何倍も響きます(「酒」には走りませんが)。

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