2011/09/28

不思議な世界観が...

潤一 (新潮文庫)
潤一 (新潮文庫)
  • 発売日: 2006/11

『潤一』井上荒野
[15/171]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

朝刊の書評欄に掲載されたのがきっかけで知った本。恋愛?小説。ここ数年間(個人的に)触れていない世界です。14歳から62歳までの女性と、ひとりの26歳男性との「関係」。連作短編集っていうんでしょうか、ここの女性が主人公の話が、一人の男性=潤一でつながっていきます。
諸々、取り囲まれている環境が異なる女性が、潤一に出会う。この魅力的な男は、彼女たちの「隙間」にみごとに入っていきます。表面的には「遊び人」なのかもしれませんが、主役はあくまでも「隙間」を抱えて生きている女性たち。「潤一」がハイライトされることは最終章までありませんでした。いわゆる「男女関係」の場面が多く、また女性たちの心理に共通する軸として「それ」があります。こう表現すると「どろどろ」した感じがしますが、全編を通して、そういったイヤラシさは感じられません。これが著者の力量なのか、遠い世界の話で(自分にとっては)現実感がないからなのかは不明ですが...
ひとりひとりの女性の立場からみると、偶然か必然か、目の前に現れた潤一を受け入れ、それまで不足していた「何か」を埋めてくれる時間を過ごしますが、そのうち潤一はその場から消えていきます。それでも「残された」女性たちは悲嘆にくれるわけでもなく、潤一と過ごした時間、そして彼が消えた事実を受け入れます。まさにこれが(恋愛)小説の世界なのか、「小説だから」という固定観念がある一方で、読み物としてその世界に引き込まれている自分がいるのも事実。読んだことがないから分かりませんが、「少女マンガ」の世界に近いのでしょうかねー...
男性である自分だから、「向こうの世界」として淡々と読み終わりましたが(そして何も残るものはありませんでした)、女性はどのように読むんでしょう?登場する9人の女性のいずれかに自分を重ねてみるのでしょうか。ある意味、潤一を通じて「人生」を語った内容でもあるのかもしれません。
先ほどイヤラシくない、と書きましたが、休日の朝に読むにはちょっと抵抗がある内容です。なんにせよ、ほぼ全編に「それ」が出てくるので。それでも意識せずに読めてしまう自分は、それだけ年齢を重ねたってことかもしれません。「潤一」にはなれそうにありませんね。
特に男性にはあまりお薦めはできませんが、「カタい」本ばかりで疲れ気味の時はいいかもしれません。


【ことば】まだ引き返せる、まだ...取り戻せると思いながら、取り返しがつかない地点まで早く到達してしまいたかった。

戻る場所がある。向かうべき場所がある。でも、理由は説明不可能だが、そこに「行けない」 状況に自分を置きたい。なんとなく、なんとなくですが、この心理はわかる気がします。「行きたくない」が理由の全てではなく、自分の足、体、その反応がそうさせるような...「小説的な」表現ですが、ほんとに「なんとなく」ですが、わかります...

潤一 (新潮文庫)

【書評家のご意見】
本書の書評、見つけました!いろいろな意見、読み方があってもいいですよね


本のある暮らし。
徒然なるままい、心の赴くままに、まあ、色々・・・


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