2012/05/30

日常こそ小説的。日常は小説よりも...

月の砂漠をさばさばと
月の砂漠をさばさばと
  • 発売日: 1999/08

『月の砂漠をさばさばと』北村薫
[21/97]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

小学3年生のさきちゃんと作家のおかあさん。二人の「ともだちおやこ」の極めて日常の会話で成り立つ物語。小さな小さな事柄も、子どもにとってはけして小さくない、そんな当たり前のことを大人になって忘れている、と気付かされることがあります。
親子で会話する中で、ふと気付く子どもの成長、自分の変化。純粋に興味を深める子どもの「まっすぐさ」に、自分のことを振り返ったりします。本書はなんとなく「わけあり」をにおわしますが、お父さんの登場はなく、あくまでもお母さんと子どもの会話。だけれども、「お父さん」が読んでも、子どもから教えられること、はたまた自分が子どもであった時のことなどを思い出させてくれます。
自分に同年代の子どもがいればなおさら、本書の「日常での会話」が温かく、ゆるやかに、でもある意味刺激的に映ると思います。特別な出来事ではなく小さな日常の中に、ドラマはあるんですね。素人からするとそんな日常をテーマにする、ということがかなり困難だろうと思いますが、ドラマチックではないにせよ、なにか深い「あたたかみ」が読後に残る内容です。
ただ、実際の子どもと親、という日常は、実はもっと「刺激的」なんですよね。真剣に耳を傾け、眼を開いて見てみれば、これほど「勉強」させられることはないんです。子どもと大人の差は、「経験」の差であるけれども、子どもが持っていて大人が忘れているもの、って少なくないんです。敢えて眼をつむって、耳を閉じて、知らないことにしていることがいかに多いか、思い知らされることがあります。大人は自分が子どもであったことを忘れてしまう、忘れようとしてしまうことがありますが、それって損しているのかもしれません。「大人の世界は、現実は~」と自分に言い訳をしているだけなのかもしれません。
子どもと接していると、まさに「事実は小説より云々」という言葉が当てはまります。真正面から向き合うと、日常に色を添えることができます。あ、もしかしたら、子どもに対して、だけではないかもしれません。今日出会う人、明日出会う人、この人たちとの出会いに真正面から向かえば、やっぱり刺激をもらえるんです。そう考えれば、大人だって成長できる。明日が楽しくなる。

【ことば】ああでもないこうでもないと、何日も考えたよ。いろんな案が出たけど、最後に<<花が咲く>>から<<さき>>って閃いたら、すんなり決まっちゃった。

おかあさんとさきちゃんが、名前のことを話します。生まれたばかりの命に与えられる「名前」。一生つきあう名前は、それに「想い」が詰まっているんですよね。自分にもらった名前も、きっと親が真剣に愛をもって考え抜いてくれたもの。そう思うと、大切にしなければいけないことがわかります。

月の砂漠をさばさばと


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HEART GRAFFITI ~本カフェ~
まっしろな気持ち


2012/05/29

コンサルを目指す人は大丈夫だと思うが...


『コンサルタントになっていきなり650万円を稼ぐ法』松尾昭仁
[20/96]
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

刺激的且つ現実的なタイトル、書き出しは「コンサルにならない理由はないでしょ?」的な、前向き、明るい未来を前面に出してきます。特定分野の経験を積んだ人なら、たとえ営業力がなくとも、その特定分野の専門家になれるのさ、という内容です。ご自身が「書く」力をお持ちのコンサルタントであられるので、プロの文書には引き込まれていきます。
よーく読めば、「そんな簡単になれるもんじゃない」というのはわかってきます。広い人脈形成とか、資金とか、準備は必要なのです。直接には触れておられませんでしたが、「今が嫌だから、じゃあコンサル」という流れでは、カタチにするのは難しいでしょう。それも読みとることはできます。
どちらかといえば、「テクニック」的な側面が多く、例えば著者自身が「セミナーコンサルタント」を名乗っているように、特定分野に特化した「肩書き」がモノを言う、とか、他のコンサルタントとのパートナーシップ(契約)とか、実際に現場で動いていらっしゃるコンサルらしいテクニックを教えてくれます。
一方で、顧客となる側のことにあまり触れていないのはちょっと残念かも。相手は「カネを出す」だけではなく、当然にクライアントの満足度をあげることがコンサルの成果であって、お客様(あるいはお客様になり得るであろう見込み層)が、実際にどのような局面でコンサルを必要としていて、それにどう応えて、とか、そういう「事例」的なものがあってもよかったかなあ、と思う。
もちろん、本気で「顧客満足度」を高めるために活動している(しようとしている)コンサルタントには、とても有効な情報がありますので、何がしかのヒントは得られると思います。おそらく、この内容を受け入れにくいのは「楽して」いきなり650万、というイメージで読み始めた場合、でしょうか。確かにタイトルはそういう「キャッチ」狙いもあるような感じですが、「正しい」考えを以て臨めば、得るものはあります。
自分の経験値を他人に教える、というのはもちろん難しい。そこに「金もうけ」や「出し惜しみ」といったテクニックが加わると余計に難しくなるような気がします。本書の内容はそういった類のテクニックではない、そう信じて読めば、ほら、ね。コンサルに限らず、お金を得ることはもちろん簡単ではないですよね。だから「誠心誠意、自分の持っているモノを全て、つぎ込む」これ以外に成功のテクニックはないんではないかなあ、って思ってます。

【ことば】「私はあなた自身よりも、あなたに成功してほしいと思っているんです」ただ口にするだけではなく、実際にそう思って行動することが大切です。

本質である。「行動」が先にくるようなら、よりキレイですね。そんな思いが中心にないと、どこかしらのイケナイ企業と変わらなくなってしまう。もちろん正しい対価は前提ですが、クライアントにハッピーを運ぶ、そんなアドバイザーでありたいですね。

コンサルタントになっていきなり年収650万円を稼ぐ法


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本が好き!
ARYUの書評とかコラムとか
 


早速、登録しました。「勇気」出ます


『2022-これから10年、活躍できる人の条件』神田昌典
[19/95]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

カリスマコンサルタント神田さんの本。実は初めて読みます。けして避けていたわけではないのですが、なんとなく「住む世界が違う」という先入観がありましたです。
本書は、刺激的なタイトルに惹かれ、「これからの10年」が自分の人生にとってかなり重要である自覚から手にとりました。刺激的だったのはタイトルのみならず、内容もかなり。自論である「70年周期」や「人口動態から見えること」などをベースに、今そしてこれから10年を、「明治維新」にも匹敵する変革期であると説きます。まずもって「会社(という組織形態)がなくなる」という主張。これに近い論はありますよね。だから自分を磨きましょう、といった流れに持っていくような。本書はこれを「確実にそうなる」という強い論調で貫きます。読み進めているうちに、「そ、そうか...」という気持ちにもなります。
ご自身の経験や今の状況からも、「こうなる」「だからこうする」というのが力強く伝わってきます。特に「40代」に向けてメッセージがひとつのコーナーを構成しており、ここに関しては「自分へのメッセージ」として捉えました。この時代の変革期において、古い体質(明治維新になぞらえていえば「幕府」)から新しい体制(明治政府)に、いかに変わっていくのか。既に旧体質にそまった組織を変える、というよりは、その中で生きていくのか、新体制を信じて突き進むのか、自ら決断すべきタイミングです。
その「流れ」を少なからず感じている人は、旧体質から脱出すべきなのです。いろいろなシガラミ、環境のある中で、飛び出す勇気と行動力、これが「これからの10年」で自分がどうなっていくのか、大きな分岐点になるようです。時代は「効率性」「革新性」から「顧客との親近感」に比重が変わっていきます。これは本書で言われていることですが、「現場」でも体感できることです。「体感」している人は少なくないし、言葉にしている人もいますが、「変える」ことができない呪縛が旧体質にはあります。
まさに「経験」したことなので自分のこととしてとらえることができます。じゃあ、これから自分はどうなっていくのか。「これからの10年」を真剣にとらえようと思う。そしてこういう考えを持っている人が少なからずいて、行動に移し始めているという事実を知ったことはかなり勇気を与えてくれる。
ひとつ、「これからの10年」で自分が何かを成し遂げるとしたら、そうなる条件は、「がむしゃら」だと思う。周りの声に過度にとらわれない、自分の信じた、本質的なものを追い求める「がむしゃらさ」、これがポイントだと。
「2022に向けた行動をサポートするコミュニティ」読後、すぐに登録です。

【ことば】...古い価値観のうち、引き継ぐべきものと捨てるべきものを見極め、そのうえで新しい価値観を創り上げる。これができるものは進化し、できないものは滅亡する。

単に古いものを捨てるわけでは、もちろん、ないわけで。ただ古いものにしがみつくのは無意味、新しい価値観を創る側に立つことが重要であるのだ。その「決断」は著者によれば「3年以内」ということになる。決断したのならば、まっすぐに進むだけだ。

2022―これから10年、活躍できる人の条件 (PHPビジネス新書)


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賢者の図書館
ヨッシィー☆のとことん前向きなブログ

 

2012/05/26

本読みの、味のある「文学の読み方」エッセイ

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)
第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)
  • 発売日: 2011/11/23

『第2図書係補佐』又吉直樹
[18/94]bk1
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★★

この本のことを朝日新聞の書評コーナーで眼にするまでは、著者が「本好き」だということを知りませんでした。もっというとピースというお笑いコンビのこともそれほど知っていたわけではありません。が、「読書」という共通のキーワードを感じたことで、俄然興味が湧いてきたのも事実です。
著者の関心分野は「文学」であり、多少自分にとっては「敷居の高い」フールドではある。そんな「高尚な」分野の書評を若手お笑い芸人が...という「単純な」イメージで読み始めたが、いやいやそんなレベルのものではなかった。そもそもは、若手が登場する劇場に置くフリーペーパーのいちコラムとして書かれているものだという。対象は「文学」であるが、その内容は、「又吉の過去」である。ひとつのコラムのうち8割は「又吉ごと」であるのだ。小学校から中学、食えない時代、女性とは無縁の日々...彼のこれまでの人生がそこにある。その「自分ごと」と純文学をつなげるのは、ほんの数行だったりするんだけど、ほんの一キーワードだけだったりするんだけど、そこにムリヤリ感はないんですね。
おそらく、又吉青年がその本を読んで、ふとアタマによぎった自分の過去、現在、未来、そんなものを文字としてアウトプットしているからなんだろう。文学の世界に浸ってそこから想起される自分のこと、それを書いているのだから、そこに「ムリヤリ」が生じることはないのだね。
1冊につきそれほど文章量の多い紹介コラムではない。しかもその文学については直接的に触れていない。感じたままを自分の言葉で表すのだ。だけど、すんなり入ってきて、そしてその本を読みたくなるのだ。
これはすごい力。
その作品のパワーはもちろんあるけれども、そのパワーを一度浴びた著者が表現する世界。そこから感じられるメッセージ。既に紹介されたうちの何冊も、「次に読みたいリスト」に入れました。
そして曲がりなりにも「読書記録」をつけ続ける身としては、(公開している以上)「誰かが読んでくれるかもしれない」意識をそれなりにもって、「感じたまま」をメッセージとして残す、そんなアウトプットをしていきたいと、改めて思った。
けしてよい文章でなくとも(本書がそうである、というわけではない)、感じたもの、伝えたいもの、それがにじみ出るようなものでありたい。
そして何よりも「本を読む」ことの楽しさ、深さ、そんな基本を再度認識させてもらった。「読む」というより「感じる」こと。文学をもっと読んでみよう、感じてみたい。

【ことば】スケールの大きな男になりたいが、今日も僕は独りでししゃもを温め食べている。

スケールの大きな小説の読後に、著者が感じたことと、起こした行動。こういう「日常感」が随所にでてきます。けして頭でっかちではない。自然に文学の世界を感じている著者の、本との接し方が表れていますね。表現にも味があるでしょ。この「味」はいろんな本の世界に触れている人でないとできないのかも。

【ことば】本当のところはカフカに聞いてみないと解らないが、改めて小説は自分の感覚で正直に読んでいいのだなと思った。

まさにその通りなんだろう。書評に踊らされる必要はないし、その書評と同じように感じる必要もない。感じた通りでいいのだ。感じるために、本の世界に入ることが第一歩、ですね。


第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)



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思考だだ漏れノート
本を読む女。改訂版

スポーツもの?青春もの?いや、カテゴリー分けは不要です

バッテリー (角川文庫)
バッテリー (角川文庫)
  • 発売日: 2003/12

『バッテリー』あさのあつこ
[17/93]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

中学入学直前の天才野球少年。野球に対してストイックな彼は、「外界」との間に自ら壁を作っている。「壁」というよりは、その天賦の才能を以て上から見下しているようでもある。父親の都合で転校した先にいた、運命的に出会った捕手。彼との「バッテリー」を実現できる夢を持ち、捕手との関わりの中で、天才少年は何かを見つける...
子供視点からの親子の問題、塾や進学などの教育環境の問題。あくまで野球が軸であるが、バッテリーの二人はあくまでも受験戦争の中にいる小学生、中学生であるのだ。だからそのようなテーマがでてくるのは自然。それに対する少年たちの心理がリアルに描かれている印象があります。自分もかつて「少年」だった時期があるわけで(かなり遠いけれど)、すこしばかりのノスタルジーも感じたのだった。
主人公の少年は「天才」とここでも書いたけれど、もちろん天賦の才能はあれど、その後の「努力」が必ずあるはず。ストーリーの中に何度か、毎日欠かしたことのないランニングが出てくるところからも、それは分かるが、「大人」の中にはその「汗」の部分を見ていない人が少なくないようだ。あたかも生まれもった才能「だけ」のように見る人も。一定レベルのワザを身につけた人間は次第にそのように視線の「かわし方」を身につけるのかもしれない。主人公がそうであったように、「遮断」することも一つの手法なのかもしれない。ただ、一番見ていてほしいと、認めてほしいと思っているオトナ=親がそうであると、チトつらいものがあるよね。この場面になると、「強がっていてもまだ中学生」という側面も見えるのだ。そのあたりの「少年の心」がとてもリアル。著者は女性であるが、息子さんがいらっしゃる。そんな中から得た感覚なのであろうか。自分も過去(思いこみ、かもしれないが)、似たようなことがあったなあ、とシミジミしてしまったり。
野球の話しだけれども野球ばかりではない。登場人物が輝いている青春小説。分類なんてあまり意味がないんだなあ、っていう結論でいいのでは、と思います。カバーに記載された紹介文の中にキーワードが。
「~大人も子どもも夢中にさせたあの話題作が~」
「夢中」になれる小説です。そう、とてもこの本の紹介としてあっている言葉だと思う。ハラニオチル感じです。

【ことば】「...野球って、させてもらうもんじゃなくて、するもんですよ」

 「今まで野球させてやった」という親の発言に対する主人公・巧の答え。親の視点と、子どもの視点のすれ違いがここにあります。親はどこまでいつまで「主導権」を持っているべきなのか。子どもが「自ら選ぶことができる」まで成長することは、親にとってはうれしくも悲しくもあることなんだけどね。

バッテリー (角川文庫)


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徒然本読み梟
日だまりで読書


2012/05/23

「読むだけ」ではなかなか到達できない境地。

平常心のレッスン (朝日新書)
平常心のレッスン (朝日新書)
  • 発売日: 2011/10/13

『平常心のレッスン』小池龍之介②
[16/92]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

プライド、快楽、欲。ストレスを生み出す要素がたくさある中で、それらの因子を避けるためには「平常心」を見つけることだ。それは、喜怒哀楽すべての感情につながる外的内的要因を「ありのまま」に受け入れること。あきらめることではなく、刺激に対してそのまま受け入れることだという。
究極は「死」である。その誰にも避けられない終着に対する恐怖心があるから、それを避けるものとしての意識が根底にあるから、すべては「欲」につながり、平常心を欠くことになる。死さえも「あたりまえのものとして受け入れる」ことができれば、平常心につながる...
仏の教えを説く著者であるからこういう流れになるのだろうけれど、なんとなくわかる気もします。言葉にして文章にしてしまうと、「死さえも受け入れたならばなんでもできる」という短絡的な直結型のイメージを持ってしまいますが、自分の死を周りの死を「受け入れる」ことで、自分にプラスに作用するようになる、いや「する」というのが究極の思想であるような。
平常心でいられない理由は、プライドだったり、欲だったり。それを越えるためには瞑想だったり、呼吸だけを意識することであったり、食事の仕方なんてのも紹介されていました。概念的には理解(?)です。が、どうしてもそれを自分に置き換えて、「じゃあ今日から瞑想してみようか」という気にはならなかった。当然といえば当然ですが、このような非日常の行動については、やはり「読む」だけでは理解不能なのだろうと思います。説法というのはその人の話しを眼の前で聞いてその深み、重さをその場の空気と共に「受け入れ」、感じることで初めてなんらかの意識の変化が起こるものなのでしょうね。本はあくまでもきっかけに過ぎない。もちろん、読んで実行できる人もいるとは思いますが、少なくとも自分にはそこまでの行動を起こす元にはなっていない。
「ま、いっか」の精神が平常心を保つ。あきらめではなくて受け入れ。小さな違いのようで大きな違い。欲がすべて悪いわけではない、という意識と、「そうはいっても目の前の現実はさあ」っていう俗世間にどっぷりの意識が、平常心への道を遮っているようです。
確かに「真実」に近付く、本当のあるべき姿に向かう、というのはともすれば「欲」に変わって、当初の思いとは別方向に進むことが多い、というか大多数。それを越えるにはやはり「境地」を目指すべく「行動」をせねばならないのかも...とは思います。世俗の欲にまみれた社会、これが少しだけ、ほんのわずかではあるけれども、「楽」ということがあるんだけれど、そのほんの少しがあるから、そこから脱しきれないんだね、これを「弱い」というのかどうか分かりませんけれども...
「平常心」が少しでも身につけば、穏やかな人間になれるかも、っていう僅かな感覚、これだけいただきました、まずは第一歩として。

【ことば】...平常心が基礎にあれば、私たちは多少の浮き沈みに一喜一憂せず、コツコツとこの人生の道のりを歩んでいくことがかなうのです。

多分に宗教的な言葉使いに見えますが、人間として目指すのはこのような「大きさ」です。長いのか短いのかわからない人生ですが、「浮き沈み」は当然ある中で、でも全体みれば「浮」の傾向だよ、って意識を感じるようにしたい。あ、これ「欲」かも...

平常心のレッスン (朝日新書)


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空猫本棚
湘南読書日記


2012/05/22

おっ、と思わせる組み合わせ、でもやっぱり...


『バカボンのパパと読む「老子」』ドリアン助川
[15/91]bk1
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★☆☆

久しぶりにその名を聞きました、「ドリアン助川」。今小説を書いたり、東洋思想を教えたりしているんですねー。その活動の中で、「運命的に」結びついたのが、老子とバカボンのパパ、ということ。老子の語るスケールの大きさ、自らを嗤ってみせる度量の大きさ。これがバカボンのパパに似ていると。
このマッチングを実現しただけで、さすが老子を読み解く力をお持ちだと。常軌を逸した想像力とか、老子のことを形容していますが、この組み合わせも「常軌を逸した云々」に限りなく近い。
道=TAOを説く老子について自分は「初」の接触です。バカボンのパパがセットになっているからこそ導かれた出会い、なのかもしれません。その内容は...正直「思想」「哲学」ってどうもハラに落ちないんですよね...ものすごく「本質」を突いているんだと思うし、何年もの月日が経とうとそれを追い求めている人がいる、ってことはやっぱり「本物」であるし、それを知りたい、っていう欲求は、あるにはあるんですが...
無為自然。これまで経験したことのないような「行き詰まり」感を迎えている(と一部で言われている)現代には、この先の道筋が必要なのかもしれない。それをどう見つけていくのか、ヒントのひとつとして、いにしえから伝わる思想や、哲学の中に求めることも、ひとつの行動だと思う。「生きる」ってことを本当に考えたら、多分答えはでないんだろうけれど、「考える」ことはずーっと昔から人間が、し続けてきたことなんですよね。これは真実だろうと。
自然に還る。生きている、ということは自然の摂理とともにあるということ。それを無視して強引なことをすれば歪が生じる。つまりは「道=TAO=自然の摂理」を受け入れ、生き方を見つめ直す必要があり、今まさに、見直す必要に迫られれいる、と。
どうなんでしょう?確かに真実を突く「重さ」は感じられます。ですが残念ながら浅薄な自分には「ささる」までには至りそうもありません。ただ、これは「老子」と自分の出会い、きっかけにすぎないのであり、「次」につながればよいのだと、軽く考えていたりします。
本書の構成は、漢文⇒ドリアンによる開設⇒バカボンのパパの言葉訳、というパターンで成り立っています。本来なら漢文の「空気」を感じるべきなんでしょうけれど、主に「パパ語訳」を中心に読むことも(自分はそうでした)できますね。きっかけ、としてはよいのかと思います。

【ことば】難しいことはそれが難しくなる前の易しいうちに働きかけ、大きなことはそれが大きくなる前の小さなうちに何とかするのだ...どえらい人は、ものごとを大ごとには決してしないのだ。だからかえって大きなことをやり遂げるのだ。

これは「極意」です。難しいことをやり遂げる人ばかりが偉いわけではない。本当のすごい人は、難しくしない、ということだね。野球で守備の上手い人は、守る位置から違う。ファインプレーではないけれど、 ボールが飛んでくるところに既にいる。これと似ているかな。

バカボンのパパと読む「老子」 角川SSC新書 (角川SSC新書)


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ヒデヨシ映画日記
読書備忘録


これじゃあ、「タレント本」じゃんか...

聞く 笑う、ツナグ。
聞く 笑う、ツナグ。
  • 発売日: 2011/12/19

『聞く 笑う、ツナグ。』高島彩
[14/90]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

女子アナ、独立したフリーアナ、なかなか大変な世界だと思うけれど、高島さんは「前例」を打破できるような気がしています。もともと新人時代の、いわゆる「フジテレビの女子アナ」的な頃は興味がなかったんですが、中堅クラスになってからの彼女は、非常に落ち着いた、それでいて臨機応変な、とても頭がよい、キレるタイプとお見受けしております。独立、結婚とご自身のイベントが続く中、周りから見られる姿と、自分の生き方の間で苦労されているご様子も...
という感じで、普通は女子アナの本なんて読もうとは思わないのだけれど、この人は違う、と思ったからこそ手にとりました。が...これも彼女だけのせいではないと思われますが、いわゆる「タレント本」に過ぎません、この内容。おまけに意味がよくわかならい「高島彩のショット」が複数枚ページを占拠します。
う~ん、写真は「ファンの人のため」でいいんですが、内容も、彼女がこのタイミングで何を伝えるために書かれたのか、がつかみきれませんでした。確かに出版にはいいタイミングかもしれませんが、それは「マーケティング」の話しであって、フリーアナウンサーとして今後進んでいく意気込みや想いもありません。「ことば」を扱うプロフェッショナルであるお方の本としては、心に残るようなフレーズも見つかりませんでした。
あくまで、ファンのための本、という位置づけでしょうか...実際の「勉強としての知識」のみならず、「空気を感じながら必要な立ち位置を見つける感性」も持ち合わせている方だと思うので、そのような内容が最初から決められたテーマならば、ちょっともったいないと思います。本書の内容がそうだとは言いませんが、もっと「自身の気持ち」を「自身の言葉」で読めればよかったなあ、と。
アナウンサーを夢見る人はどう読むんでしょう?あまりその世界の「素晴らしさ」にも触れられていないような気もします。そう、つまりは、著者が伝えたいことは何なのか、というのがつかみきれませんでした。ちょっと残念な...

【ことば】...身だしなみはもちろんのこと、たとえば食事に行ったときのメニューの選び方、お店での立ち居振る舞い、すべての行動で、自分を律する...

テレビに出ている人は大変だなあ。特に「見た目」で判断されることが多い職業ですもんね。一般にはそれほどの「見た目」度合ではないけれども、やっと自分も、「見た目」の重要性に気がつきました。「律する」なんて言葉とはちょっと違うかもしれないけれど、多分に「意識」は必要かと。行動が自分の内面を変えることもあるので、ね。


聞く 笑う、ツナグ。


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アウトプットレビュー
新刊レビュー









 




2012/05/20

「味わい」出てくる年代にはタマラン物語。

ちょいな人々
ちょいな人々
  • 発売日: 2008/10

『ちょいな人々』荻原浩②
[13/89]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★★

全7編、ちょっと「連続モノ」も含まれますが、どれもが「フツーの人々」の「フツーの生活」の中のヒトコマがテーマとなっています。そこに「哀しさ」「憂い」「イジラしさ」「ほほえましさ」が含まれて、自分の境遇に重ねちゃったりして、喜びとも哀しみともつかない「フッ」という声が漏れちゃいます、何度も何度も。
タイトル作「ちょいな人々」の主人公のオジサン。「クール」なミドルを目指しますが、生真面目さ故に、若者やそれをターゲットとする商売の網に見事にかかってしまう、とか、「差別化」が言われる新規ビジネス参入の世界で、「リアル」を追求したあまりに受け入れられなくなってしまった商品とか。
現代社会で「いい」と思われるモノ、コト、或いは「いい」と宣伝するマスメディアによって乗せられてしまうモノ、コト。表面的なコトバに踊らされる哀しき中年オヤジ、マスメディア的には「古い」カテゴリーに分類されてしまう中年オヤジ、まさに自分の環境に限りなく近いが故、とても身につまされ、そして面白いのであった。
そう、「悲哀」的な意味を(十分に)含んで、だが、面白いのです。おそらく自分と同じような年代、環境のオヤジには共感していただけるものと思います。超リッチな方、年配の方には、「以前」を思い出しながら読んでいただければOK。女性の場合...是非読んでいただいて、オヤジの「哀愁」を感じていただければ、と思います。頑張ってますよ、この世代。上からの圧力と下からの「イタイ」視線。どちらを意識しても中途半端に終わりがちな努力。でも必死でもがいているのです。そしてもがき続けるんです。それが「あたりまえ」の世代だから。そんな「汗」をかいている姿を是非感じていただければ...あ、クサいですかね...
著者が以前や現在、自分と同じような環境だったのかどうかはわかりません。でも、まさに同世代層から発信されるメッセージとして、これ以上のものはない、という作品であるんです。そのメッセージが響くのが、同じ「オヤジ」であることがなんともアイロニックではありますけれど...
大丈夫、きっといつかヒノメ見る日はきますって。古い体質と新しいもの、両方を兼ね備えたハイブリッド世代なんですから。
笑って、アタタカな気分になって、そして前を向ける。そんな気持ちにさせてくれる、応援メッセージが込められた1冊です。つまり、各編のエンディングは...そう「正しい」カタチに進むのだね。


【ことば】治美の会社に関するかぎり、へらへら、俺様、ねちねちのヤツのほうが、男社会では受けがいいようで、むしろ出世している。

目先の損得勘定を最優先し、やらなくちゃいけないことから逃げて、俺様の理屈でごまかし、...そんな人間でも「テクニック」で出世する世の中、社会。確かにそういう側面がないとはいえないが、そんな生き方をして何が楽しいのか...社会が正しい方向に変わるにはまだ時間がかかりそうだから、自分が「変わる」ことからすればいい。


ちょいな人々

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日々の書付
活字中毒日記

2012/05/17

文学を堪能するポイントは...「賞」はきっかけにすぎず。

芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)
芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)
  • 発売日: 2009/01/13

『芥川賞を取らなかった名作たち』佐伯一麦
[12/88]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

純文学とは無縁の読書生活だが、やはり芥川賞発表時には気になるし、読んでみたい気分になる。「候補」でも、それがセールストークになるくらいの権威あるステイタスなわけで。自分のように文学と距離がある場合には、「受賞」という切り口で興味喚起されるわけで、正直それがどれくらい優れているのかは分からない場合が少なくない。
ならば「候補」となった作品も、同じようにきっかけになるはずなのである。これはあくまで(特異な)読者からの視点ですけれども。なので、本書もそのような「きっかけ」を求めて読み始めた、というのが本音です。当初は、「取らなかった作品」が、一部であっても掲載されているものと思っていましたが、内容は、さにあらず、落選に至る「選考」に重きをおいたものになっています。そもそもが「文学の採点」って、どこに基準があるのかもわからず、選考委員のフラットな「眼」を信用して成り立つものかと思っておりました。
芥川賞ほどの権威、歴史のある賞ですから、選考は当然のように「大家」が押し並び、多少個人的な部分が入りつつも(入るのが当たり前ですけれどね)、文学世界全体の視点から選んでいる、というのが前提であろうと思う。が、もうひとつ、「時代」という視点があるのだと感じた。
当然ながら作品自体が時代をある程度反映しているものであるが、選考委員の方の方の時代感、というのはどのようなものなのだろう。「その時点より以前」に名作を書かれた選考委員の方たちが、「古くても変わっちゃいけない本質」と「新しい可能性を秘めた内容」のバランスをどうとってきたのか。
そもそも芥川賞なるものが「定義」されているのだろうと思うけれど(文書化されていなくても)、選出の評(落選の評)を読んでいて、どうも前者に偏っているような印象が残りました。
非常に個人的な感覚なのですが、文学(に限らずですが)は、ある程度は読み手の感性によって捉え方が変わっても一向に構わない、という気がします。国語の教科書のように「答え」を出すものでもないかと。読む側の環境、気持ち、境遇、そんな要因で捉え方が人それぞれなのは、むしろ文学として「よい」のではないかと思います。極端な話し、1人の人間が読むタイミングによって(若いころに読んだものを、老年になって読み返す、とか)も変わってくる、どちらが正解ということはないわけで...そういうものを「賞」というラベルにて、未来に残すのは「あり」だと思いますが...
「取らなかった名作」の一部が読める、と期待していたところ、選評の話しだったので、そのギャップ
を最後までぬぐえなかった感はありますが、どうも「国語の授業」的なところがいまひとつ自分としては気になりました。
企画としてが面白いですよね。「B面のベスト盤」みたいな感じで。あとタイトルの「取らなかった」も秀逸だと思います。「きっかけ」にできるような本は数冊見つけました。それがプラス、です。

【ことば】小説の批評はいくらでも悪く言えます。でも悪いところばかり見ても、本当に読んだことにはならない。....いいところを見出したいと思って読むと、大体何かは見つけられます。

これこそ、読書の極意ではないでしょうか。 もちろん自分は評論家ではないので「悪いところを見つける」なんて読み方はしません。たとえ「合わない」(悪い、ではなく)と思っても、何かひとつだけでも見つけないと...という読み方を、これからもしたい。貧乏性でしょうかね...

芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)


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本のブログ ほん☆たす
読書な日々

100kmの先にあるものは...

100km!
100km!
  • 発売日: 2010/08/26

『100km!』片川優子
[11/87]Library
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★☆

知らぬ間に、「100km歩く」大会にエントリーされてしまった主人公。30時間歩くことで見つけたモノは...一度セミナーを聴いてトリコになった道端俊彦さんがfacebookで紹介されていたことから読んでみようとなった。ストーリーはシンプルで、家庭環境や自分の性格やら悩みごとが多い女子高生が、親戚によってエントリーされた100km歩く大会に参加し、「道中」どのような心理状態、あるいは成長を遂げるか、というもの。特に「どんでん返し」はなく、想定通りのエンディングではありましたが、「達成した」感を共有できるような気分になります。つまりストーリーに引き込まてしまいます。女子高生とは全然環境が異なるし、自ら100km歩くこともないけれども(考えたこともなかった)、意味も分からず参加した「苦労」の中で、自分を振り返ること、周りに対して感謝の気持ちを持つこと、たとえ「無駄」だと思われるようなことでも、成し遂げた時に見えてくるもの、これらは共感できるのです。
いわゆる「YA」という部類に入るのでしょう。著者自身も若いし、読者も若い人なんだろうと思う。だから自分みたいなタイプは読者としては想定外だとは思いますが、苦しんでいる中で大事なことを見つける過程は、年齢でも性別でも環境でもなく、素直に感じることができるのです。この臨場感は、最後の「あとがき」で明かされるように、著者ご自身が現実に「100km大会」に参加されている体験からにじみ出るものなんだと思われます。著者が言うように、その過程で体験する感覚、極限状態で起こる考え方の転換。、視点の転換は、体験者しか分からないと思われますので、「読んでいるだけ」じゃ、半分もその境地にはたどり着いていませんけれど...
「自分」を見つめ直して、またその「自分」は周りに支えられていたんだと気付かされて、そして、おそらくこの年代(高校生くらい)にはビミョウな位置づけになっていることが多いであろう「親子」の関係も、ひとつの軸になっています。100kmを歩き切ったその時、確実に成長している姿がそこにあります。ストーリーの面白さ、ハラハラではなく、真剣にゴールに向かう姿そのものの「美しさ」を感じることができる内容です。
オジサンが電車の中で読むには多少勇気がいるカテゴリーかもしれませんが、その内容は十分オジサンでも堪能できます。ただ、車内で泣いちゃうと危険ですけれども。

【ことば】「私はあなたを誇りに思う」ママが不意にはっきりと、そう言った。はっとして顔を上げると、ママの眼に、数か月ぶりの光が見えた。

親が子に伝える言葉として最も美しい言葉かもしれません。心では思っていても言葉にできないこともある。でも、そう言えるような関係になりたい。親もうれしいし、子もうれしい。そして子供にもどう思ってもらえるような親でなければならない。

100km!


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小春空
夜思比売の栞


2012/05/15

「ことば」が持つオクユキ感。

淋しいのはお前だけじゃな
淋しいのはお前だけじゃな
  • 発売日: 2003/12/01

『淋しいのはお前だけじゃな』枡野浩一
[10/86]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

俳句、短歌、川柳...限られた言葉数の中で、読む人の想像を掻き立て、深みを感じる我が国の伝統。「制限」があるからこそ、そこに工夫が生まれ、「美学」が成り立っているのかもしれない。
...とわかったようなことを書いたが、その「伝統」「文化」「芸術」の奥深さについては全くの素人です。その昔の人たちが込めた想いや、考え抜いた作品が、今ここで目にすることができる、という点で、その「スケールの大きさ」を感じちゃう、それだけなんですね。芸術のセンスのかけらも持ち合わせていない自分は、ただただその「うまいなあ」感や、「深いなあ」感だけしか感じることができません。
かといって、それを「わかる」ようになろうとは積極的には思っておらず、「すごいなあ」感を得られる感性だけは失わないようにしたいなあ、という程度なのです。
本書は、その「ことば」芸術を実践されている著者の、過ぎ去った過去、苦いも楽しいもあった思い出、それらを存分に込めた作品が並びます。どれがすぐれているのか、とか自分レベルではわかりようがないのですが、どちらかというと短歌と並ぶ「その当時の」思い出をつづった文のほうにノスタルジーを感じました。
けしてうまくいっているばかりではなかった過去、そして現在。これを込めた短歌。自分に重ねる場面もあり、ヒトゴトに感じてしまう場面あり。その背景をつづった文の中に、著者の「人間的な」側面を感じます。
特別なひとではないんだ-そのアウトプットの手法としての短歌は芸術なのですが、著者は等身大の自分の身近に感じられる人間です。「ことば」を扱うのが得意な方、なのですね。
多分これ、また自分が異なる環境にいたり、違う心理状態の時に読んだら、違った感覚を得られるのではないか、そんなことを考えた。それってすなわち「深み」なんだろうと思う。たった31文字の中に込められる人生。それを表現する人、読んで感じる人、考える人。人間って、日本語って面白い。
大きい文字、少ないページ数、短時間で読めるけれど、「ちょっと物足りない」と思えるくらいの分量がまた、「次」を渇望させます。ちょっとこの世界(感)、興味津津なり。

【ことば】振り向いてくれたけれども 「がんばれ」は たぶん自分に言った言葉だ

掲載されていた短歌のうち、最も印象に残ったものを記載しておきます。帰宅途中の公衆電話で話している人が電話の向こうに言った「がんばれ」。電話口の向こうには励まされる環境にある人がいる。そしてその言葉の力強さに、通りがかりの著者も「あたたかい」気持ちになれる。

淋しいのはお前だけじゃな


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存在しない何かへの憧れ
アカネのアノネα


期待値を高く持ちすぎました...

謎解きはディナーのあとで
謎解きはディナーのあとで
  • 発売日: 2010/09/02

『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉
[9/85]BookOff
Amazon ★★☆☆☆
K-amazon ★★★☆☆

本屋大賞を受賞されるなど話題沸騰の本書。ドラマ(映画だっけ?)化されるほどの人気モノなので、読んでみたいと思っておりました。帯にもあるけれど「お嬢様の目は節穴でございますか」などの、言葉が独り歩きしているようで、「売れる」要素はふんだんに盛り込まれているようです。
内容としては、お嬢様刑事と、その執事がメインキャラで、目の前で起こった事件を「謎解き」するのは、「想像通り」お嬢様から話を聞いただけの執事です。その手腕はナカナカのモノであるのですが、肝心の「謎解き」に面白さが少ないのですね。「あー、そういう仕掛けだったのか...」とか感嘆するような伏線や、深さが不足している気がします。なので、唸るような「謎解き」が見つけられませんでした。主役2人の他にも、御曹司の上司刑事などが登場しますが、キャラクターがちょっと「低年齢層」向けなのか、あまりに「エンタメ小説」的で、冷めてしまいそうです。
そもそも考えれば、タイトル通りに「謎解き」を期待して読むものではなく、むしろ表紙に描かれたデザインのようにあくまで「エンタメ」的に読むものなのでしょう。ユーモア小説であり、「本格」ではないのですね。
そーゆー観点で考えれば、軽く読めるし、後にもひかない薄さが心地よいのかもしれません。「本格」モノが好きな人には否定的に映るかもしれませんが、例えば「謎解きもの」にあまり経験がない人にとっては「読みやすい」タイプとなりそうです。
あくまでも「お嬢様刑事が直面する事件」→「執事に話す」→「解決」という流れは各編に共通しており、安心して(?)読むことができます。そして殺人事件が主ですが、血なまぐさい場面もありません。恋愛系のクダリもありませんので、読書好きな小学生、中学生ならOKです。キャラが話すセリフも、「軽い」ウィットが含まれますので、「楽しむ」ことはできます。
カタヒジはらずに、軽い気分で取り組むのがよいかと。「売れている本」には理由があるのです。対象が異なるだけ。でも読んでそれがわかっただけでも、ヨシとしましょうかね。

【ことば】「失礼ながらお嬢様、やはりしばらくの間、引っ込んでいてくださいますか」

お約束として、執事が「解決」を語る前に、お嬢様に言うセリフがあります。執事がお嬢様に言う、というギャップが「面白い」のですが、このセリフはイケテます。分かっちゃいましたが、電車内で「フフッ」としちゃいました。


謎解きはディナーのあとで


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e視点
新・たこの感想文


2012/05/13

この「視点」がすなわち才能である。

延長戦に入りました (幻冬舎文庫)
延長戦に入りました (幻冬舎文庫)
  • 発売日: 2003/06

『延長戦に入りました』奥田英朗
[8/84]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

スポーツネタを中心としたエッセイ集。かなり笑えます、というレビューを目にしていたが、これ、真実でした。「目の付けどころ」が違いますねー。プロ野球のTV中継で映る、バックネット裏席の案内係についての「考察」、陽の当らない「800メートル」競技について、万能選手が尊敬に値するという中でのノルディック複合の改革案、などなど、プロ、アマチュア問わず、どちらかといえばニッチな競技、あるいはメジャー競技でも「通常」の視点では届かないニッチな点に、その視点は向かうのである。
真剣である。どんなにニッチであろうが、読み手が「寒さ」を感じていようが、著者は真剣に取り組んでいるのだ。ヨーロッパでは「万能=なんでもできる人を尊敬する」考え方が強い。ノルディック複合競技の人気もその一環と思われるのだ。でも著者の考察はここで終わらない。「万能」というには、ジャンプ、クロスカントリーの2種では不足だと考えるのだ。従来の2種に追加する競技案として、フィギュア。この時点で「微笑」である。さらに追加案でくるのは空手。さらに数学が提案されるにいたっては、「中笑」となり、いわゆる「オチ」の部分に至るについては、できれば電車の中で読むのは避けた方がよさそうだ。
34のエッセイがすべてこのような「ネタ」ではないけれど、「ニッチなネタ」について深堀りをする姿勢にはなんら変わらない。これだけ面白いエッセイを書いている人(本)をこれまで知らなかったことが、何か損をしていたような実感を持つほどに感じられるのだね。「トップバッターの資質」コラムは特に秀逸ですね。青木、相川、安藤...小学校での出席番号で一番だったであろう人は、みんなの先頭を切ることになれているはずだ、その資質を以て(野球の)打順を考慮すべきではないだろうか...あ、もしかしたら?って思っちゃうようなエッセイです。冗談か本気か、その両方なんでしょうけれどね。
ボブスレーの2番め3番目の役割は何であるのか、とか、サイドカーレースでサイドカーに乗っている人も表彰の対象となり得るのか、とか、アジア大会の「記録的側面から」の世界レベルとの差異など、ともすれば「ネガティブ」とも思えるテーマもありつつも、著者自身もスポーツをやられる、そしてネタとして取り上げてる各競技について、多少なりともお持ちであろう「愛情」を感じられ、その分が「あたたかな」笑いにつながっているんだろうと思う。
直木賞を受賞されている作家さんなんですね...初めて読んだ著作が本書であることが、はたしてよいことなのかどうか...早速「次」を読んでみたい。違った側面を見てみたいですね。おそらく本書の方が「違った」側面、なんでしょうけれど...

【ことば】私はクールで思い詰めないスポーツ選手が好きだ...わざとらしくカメラの前で泣く選手にはペナルティを科したらどうだ。

最近とくに目につく、気がする。これは「スポーツ選手が泣く」場面自体が増えているのか、自分がそういうシーンに注意するようになってきたのか。けして否定するものではないし、努力の末の涙は美しくもあるがプロのアスリートでも多いのが気になるのだ。クールに「プロに徹して」いる姿は分かりにくいが、かっこよくもある。

延長戦に入りました (幻冬舎文庫)


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いろいろ感想文
早トチリ感想文BOOKS

2012/05/11

TFTの仕組みに驚きと感動。何かが変わる「きっかけ」ってすごい。


『「20円」で世界をつなぐ仕事』小暮昌久
[7/83]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

最初のページを開いた瞬間に「衝撃」を受けました。著者が代表を務めるNPO法人「Table For Two」の内容にである。
世界には今でも食料不足で悩む人が大勢いる。一方で食事過多によるメタボという心配が出てきたいる、といった極端な二極化。そこで、社員食堂でカロリーオフのメニューを提供する(メタボ対策)と共に、そのメニューの価格に「20円」上乗せする。その「20円」が食料で悩む貧困国への支援になる...というスキームに、感嘆しましたね。
「20円」という価値の大きさは、先進国から見れば「踏み出しやすい」レベルであり、貧困国からみれば「とても大きな」レベル。それをつなぐのが、食「卓」=Table であるという意味合いです。著者がいうように、まずは貧困国の支援とメタボ対策の両方をクリアできるソリューションであること、「食事」を通した幸せ実現の一歩であること、そして、募金箱の前で財布を開くのと異なり、動きやすい「仕組み」であること。日本発の仕組みとして、そのアイデアに感心感動感銘感嘆でございます。
その仕組みにあまりにも衝撃を受けたせいもあって、本書の大部分であるところの、NPO法人とはどうあるべきか、その設立や運用の苦労、日本にNPO活動を根付かせるのに必要なものは何か、著者自身はどのような経歴であるか...などなど、このような「社会事業」を発展させるための仕組みや想い、課題に触れられているが、自分としてはこの「仕組み」そのものが気になってしょうがなく、他の部分は熱が入りませんでした。
もちろん、「NPO法人の活動=ボランティア活動=無給奉仕」という(極端にいえば)イメージをどう変えていくのか、ビジネスセンスをその流れに取り込むことが重要であることは間違いないと思われます。そこで働く人が十分な報酬を得ることは最も大事なことで、ビジネスのひとつの大きな要素である「継続性」を最大ポイントとして考えるべきだと思われます。企業、世間からのその「イメージ」をなんとか変化させ、この「仕組み」の理解を浸透させようと活動する著者の苦労は相当なものだと思われます。
現在は多くの企業、自治体、個人からの理解協力を得て活動を広げているようで、少しずつですが「変わって」きているのが感じられます。が、著者のいうように、「変える」ことはあくまで手段であり、その先の食料不足に苦しむ国の支援、そこに住む人たちの笑顔、というのが「成果点」。これは素晴らしいビジネスであり、生き方であると思います。
繰り返しになるけれど、この「仕組み」に心酔してしまった今の心理状態を、「行動」に移したいと考えています。なんかできるはずだし、しなきゃいけないんだと思います。

【ことば】...誰の心の中にも、「いいことをしたい」という気持ちはあるのです。ただ、皆その方法がわからなかったり、素直に気持ちを出すことが恥ずかしかったりするだけなのです。

気持ちをそのまま出せばいいだけ。そんな当たり前のことに気付く。小さなことでもひとつ動けば、次のほんのちょっと大きなことにつながるかもしれない。そしてそのほんのちょっと大きなことは、次に...最初の一歩がなければ何も始まらない。

“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事

TABLE FOR TWO 公式サイト


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nigredoな日々
ゆーまりんの書評BLOG



2012/05/10

いつ読んでも、気持ちがよい。歯切れよい。

決定版 この国のけじめ (文春文庫)
決定版 この国のけじめ (文春文庫)
  • 発売日: 2008/04/10

『決定版 この国のけじめ』藤原正彦④
[6/82]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

数学者であり、エッセイスト(風刺系)の著者。本書は、読売、日経、産経各紙や雑誌などに書かれたエッセイの集めモノです。ご自身の家のこと、日本・日本人の誇り、教育に関する提言・苦言、作家に対する批評、今の日本に関する憂い、などのテーマ別に構成されています。寄せ集め、なので、若干内容がカブるところはありますが、相変わらずの口調は、逆にすがすがしさを感じるほどです。
戦争に関する主張や、経済界への批判、これらについては、やや「偏り」が感じられますが、他の本でも、本書に収録された異なる投稿でも、同じトーンなので、「繰り返し」というイメージもありますけれど、それだけ著者の主張がブレていない証拠でもあります。
改めて感じたのは、著者自身の環境も含め、その軸には「武士道」がある、ということ。戦争を肯定するわけではないけれど、アメリカ批判は引き続きその勢い衰えず、「戦略的な」アメリカ方式に追随する日本の姿勢への批判も著者の強い「祖国愛」が前提にあります。
特に「教育」に関する憂いが強く、英語教育の早期化や、パソコン授業の導入、金融の教育を真正面からブッタギリ。これらの方向性には、なんとなく違和感を感じてはいましたが、「経済界の事情」と著者が指摘する内容は、非常に説得力があるものです。英語、パソコンよりもまずは日本のことを勉強せねば、読書をせねば、というシンプル且つ基本的な主張はまさに同意するところであり、ナショナリズムとは異なる「祖国愛」の大事さを改めて思い知らされます。自分の世代は教育が変化する過渡期であり、「古いもの」「新しいもの」が混在していた時代。これは考えてみれば結構「ラッキー」なことであり、著者のいう「日本をよく知ることが第一義」ということもよーく分かるし、一方で「新しい取り組み」もなんとなく、今これからの時代には必要なのかなあ、と受け入れる度量があります。
ただ、著者ほどの「強さ」はないものの、英語よりも「日本を知ること」の重要性、というのは感じておりまして、大人になってから外国人との接触において、いかに自分が「生まれた国」について知らないか、ということを痛感する場面がしばしばあります。そんなこんなで「日本史」に興味関心を持ち始めたのも、すっかり大人になりきってから、というタイミング。まあ、「遅すぎる」ことはないので、気付いてよかった、というだけのことですけれど。
おそらくは、日本を知ることが最優先に立ち、その後に英語やパソコンがくるのでしょう。著者の主張するように「すべてを国語算数にすべし」というのは、それはそれで偏りが生じるような気もします(このあたりが著者に比べて大幅にブレている証しなのでしょうか...)
本書を読んで改めて感じたのが、著者の「文章の力」です。戦争や教育など「カタい」テーマを、カタい文調で攻め立てる一方で、ユーモアにあふれた「オチ」も用意されている。これが引き込まれる要因なのですね。数学者との両立の難しさ(本書にも書かれていました)を乗り越え、モノカキでもあった両親の元、天賦のモノと、受けた教育の素晴らしさが掛け合わされて、「読者に訴える」力を持った文書を世に出せる技量を身に付けた著者。これを体感すると、著者の主張の説得力も増してきます。
ちなみに、お父様が「あの」新田次郎とは知りませんでした。もう著者の本、4冊目になるのに...

【ことば】国際的に尊敬される人とは、自国の文化、伝統、道徳、情緒などをしっかり身につけた人である。

確かに。「英語が話せるというのではなく、それで伝える内容によってその人間の価値が表される」といった著者の主張はごもっともだと同意です。その前提でもって、「英語が話せる」方が圧倒的にいいですけれどね。「国際的に尊敬」されなくとも、自国の文化云々は、最低限プライドと共に持ち合わせたい。

決定版 この国のけじめ (文春文庫)


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本読み日記
日常鳥瞰

2012/05/08

「道」は自ら切り開くべし。

接客道: 「輝く自分ブランド」で売る!極意とは
接客道: 「輝く自分ブランド」で売る!極意とは
  • 発売日: 2012/04/17
『接客道』辰巳明弘
[5/81]
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★☆

「接客」のプロがその極意を披露します。「仕事」→「志事」、「頑張る」→「顔晴る」などのフレーズ、排除すべき「3D」=でも・だって・どうせ、など、言葉遊び感があってちょっと見、「軽い」感じがするのですが、最後まで読むと、「軽い」どころか「深み」があるものと意識が変わります。
繰り返し著者が主張されているのは、「接客」が変わってきている、その変化に対応すべし、という点。曰く、「商品中心のコミュニケーション」から「人間関係中心のコミュニケーション」への変化だと。マス広告で多くのお客様が「モノに興味がある。安い」という選び方はもはやしなくなっている。1人のお客様との「関係性」こそが将来へ持続するサービス、ビジネスの肝であると。
言葉を駆使する著者のフレーズを使うと、
「千客万来」→「一客再来」
となる。これってシンプルだけど、ツボを突いていると思う。言うまでもなく「モノアフレ」だったり「少子化」だったりする中、かつての「大企業」のような数字ははじき出さなくとも、元気で楽しそうな個性的な企業は存在する。この「楽しそうな」という点が大事なのだが、そこに携わる人が「楽しそう」であると、それが「伝わる」のも今の時流だと感じる。「お客様のためを思って」と声高に叫んでいる薄っぺらい企業は、それがわかってしまうのも「今」である。
著者は、行動の軸のひとつとして「間接接客」の重要性を説き、「ビフォーサービス」なる新語を使う。つまり「その場で買わない人にも正しい接客をする」ことの大事さと、「挨拶、清潔さ」などのファーストコンタクトにおける印象の重要性だ。これらは「商売のため、売らんがため」の接客ではない。あくまでも「関係性を深める」ための「あたりまえ」のことでもある。
現実的には、これらは「意識」の問題だったり、「長いスパンで考える」ことの重要性だったりすると思われる。「今月の数字」を追い求めるスタイルではお客様が「数字」に置き換えられ、「間接接客」は「数字にならない」という1点で評価されてしまうだろう。ここがこれからの「接客」のキモであることは間違いありません。
そしてこれは対面販売の場面だけではありません、通信販売でも、サービスの提供でも、BtoBでも同じことだと言えます。顔が見えないから、業界だから、って「手を抜く」ことは許されないのです。許さないのはお客様であって、無言で立ち去ってしまう結果となるのは明らかです。企業の体質を変えるにはパワーが必要ですが、まずは自分から「意識」を変えることが第一歩。そのためには、本書で繰り返し登場した「言葉」というのがひとつのツールとなり得ます。「言葉を変える」だけでも意識は変わってくる。自分の持っている本来の「接客」を引き出すためには「言葉」の力を借りることも大切だと再認識しました。
本書に書かれていたことはどれも「あたりまえ」かもしれませんが、これを継続して、「あたりまえ」のこととして行動できるかどうか。これがポイントになりますね。すべての働く環境に当てはまります。だって1人では仕事はできませんからね。

【ことば】 ...「棚からぼたもち...」...ぼたもちという幸運を100パーセント獲得するコツは、棚に”一所懸命の努力”という「ぼたもち」が乗り切らなくなるまで、乗せつづけること...

言葉を操る著者らしい言い回しですが、これが妙に心にささります。「ぼたもち」は自然に発生して棚にあがるわけではけしてない、そこには「ぼたもち」を乗せつづける努力があってはじめて「幸運がやってくる」のです。こういう感覚、分かりやすいし、伝わりやすいし、残りやすい。

接客道: 「輝く自分ブランド」で売る!極意とは


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流れ星<<ユメを叶える!>>

2012/05/07

「ごはんを食べるように」行動する生き方に感銘


『あきらめない生き方』軌保博光
[4/80]
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★☆

「てんつくマン」としても活動している著者、NPO法人でたくさんの「困っている人」を助ける活動をしている。「てん(天)をつく(作)る人」という大きな意味が込められているようだ。これまで知らなかったけれど(失礼...)かつては吉本所属でお笑いを目指し、その後映画監督もされている、なかなか行動的な方。
タイトルとタイミングから、昨年の震災での活動、と思われますが、「てんつくマン」はそれより前から活動しています。カンボジアやアフガニスタンなどでの支援も。いわゆる「ボランティア」団体に対して持つようなイメージではなく、そこに力を注ぎこむことでいろいろな人と出会ったり、予想もしなかった出来事に遭遇したり、心からの笑顔をもらったり、といった「成果」を自分の中にも活かしているスタイルが貫かれています。
その行動力の源は「楽しむこと」。こういうことを言葉にする人って実は少なくないんだけど、それを徹底して実践している人はかなり少ないと思う。映画制作に関しても公開直前で延期になったりとか、いろいろな経験をされていますが、それをマイナス「だけ」と捉えることなく、前に進んできた「実績」が著者に力を付与しているような感じです。その「経験」に裏打ちされた言葉は、表面的に「外から見ている」人のそれと違って、非常に心を打ちます。特に、「思っているけれど行動していない」人にとっては、「てんつくマン」の行動力は、刺激的に映ります。そしてそれは自分とかけ離れた世界ではない、という感覚を伴う、ここが最重要かと。そう、自分でもできるはず、今日からできる、と思わせるものが込められているんです。それは難しいことではなく、「楽しむ」ことだから。
変化を望まない気持ちってなんだかんだいってどんな人にもあると思います。自分はそうではない、と言っていても、「新しいこと」に時間を割き、力を注ぎ始めることはやはり相当のエネルギーが必要。でも始めてみると「思っていたよりも...」ということは少なくない。そのような「思っていたよりも...」という経験も自ら体験しているにも関わらず、「次の新しいこと」に向かう時は、また元に戻ってしまうこともあり...「楽しむ」ことが足りないのかもしれません。
そして大事なことは著者のいうように「楽しむ」ことが重要であって「楽(らく)」をすることではない、とうこと。徹底してひとつの物事をやり遂げること。その徹底の中で次の展開が見えるかもしれないのだ、と。裏を返せば、徹底してやらなければ「次」は見えてこないのかもしれない。当たり前のことなのかもしれないが、それが出来ていない。出来ていないのならばやればいい。
「挑戦」なんて言葉にすると重くなってしまうけれど、著者のように「自らを高める」ことを成し遂げている人を見ると、刺激も勇気ももらえる。立ち止まっていても何も変わらないのだ。前に進むことが大事。
楽しもう。自分も、自分を支えてくれる人も、楽しもう。

【ことば】何かやったことで生まれる後悔は時間とともに小さくなるけど、やらなかった後悔は時間とともに大きくなる。

すべてはこの言葉で表されている。できるかできないかで迷うんだったら、やった方がいい。時間とともに蓄積される「後悔」でカラダが満たされてしまうのは御免だもんね。できるかできないかは、やった後で決められるのだし。シンプルだけど、「生きていく」ことの真実を見つけた気もする。

あきらめない生き方 ~小さな一歩を踏み出すための55のメッセージ~


サンクチュアリ出版 友友会ファンサイト参加中

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活かす読書
ビジネス書のキモを煎じて飲む。

「歴史もの」の面白さ、満載。エキサイティング!

忍びの国
忍びの国
  • 発売日: 2008/05

『忍びの国』和田竜
[3/79]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

けして嫌いではないけれどもあまり読まない「歴史もの」であるが、この本は面白かった。「忍者」イメージの「伊賀」の戦を描いた小説だが、その特異性-あくまでも「カネ」のために戦う姿勢-による伊賀者のキャラクターが際立ち、超人的な身体能力よりも、その展開や、対象的に「洗練されている」と思わせられる織田軍(織田信雄)とのコントラスト、超人的な能力を持ちつつも、人間的である日常の描き方、など、小説の世界に引き込まれてしまう場面、多々ありました。
自分のため、私利私欲に生きる伊賀者であり、そのために起こす残忍な場面もありますが、大きな流れとしては、「私利私欲が悪い」とか「ヒトの死を招く戦は無意味」とかいうキレイゴトではなく、その時代にはこういう生き方であった、という史実をデフォルメした小説。 全部が全部史実とは言えないだろうが、あくまでも「昔のこと」として小説として読むと、これほどエキサイティングな読んで興奮を呼ぶ物語も少ないだろうと思わせるものです。司馬、池波の大家と比べるのは意味がないが、圧倒的に異なるのはスピード感であろうと思う。次から次へと展開が変わる、登場してくる人物の心情が非常に「現代的」で引き込まれるのも、そのスピード感によるものと思われます。
実際にここに描かれているように命を落とした者や、家が途絶えたものもあっただろうから、不謹慎な言い方かもしれないが、ひとことで感想を言うなら「エンターテイメント」である。どちらが正義でどちらが悪とは言い切れない戦国時代の戦である。計略あり、裏切りあり、どんでん返しあり、今の感覚ではそもそも感情移入できない時代背景の中、「楽しめる」小説なのだ。もちろんこれをきっかけに「歴史」に色がつくことも無視できない。教科書的な「覚える」歴史よりも、フィクションによる人物を通した時代のありかた、というのを身につけるのも悪くはない。
平成の時代になっても、21世紀になっても、日本人は「歴史もの」が好きであるけれど、シンプルに「読み物」として楽しむのもありだと思います。ここから何かを学ぶ、ということは直接的には少ないけれど、興味関心をもつようになるのは間違いありません。自分の生まれた国だしね、たかだか500年くらい前の話だしね。著者の代表作『のぼうの城』も読んでみたい。

【ことば】自分の身に降りかからねば、他人の不幸が理解できない者がいる。他人がどれほど苦しんでいるのかと、思いもかけない者がいる。

戦に明け暮れる時代にあっても、人間は変わらない。自分の身に起こったことがきっかけで「何か」に気付くことは、むしろ今の時代よりも強烈にあったのかもしれない。見て見ぬふりなんてしていられる時代ではない。現代でそれに気付かない人間は、 自分の価値をさげていることに気づかねばならない。

忍びの国


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日記風雑読書きなぐり
ハムリンの読書

 

2012/05/02

「企画」はそれを立てることが目標ではない


『売れる企画の作り方』竹内謙礼
[2/78]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

インターネットでの通販に関わっている人ならだれでも知っている「成田ゆめ牧場」の成功例。自分も楽天市場の表彰などで目にしたことはある。その発展に携わっていた著者の「企画」作りノウハウの本なので、飛びつかないわけにはいかない。何せ「うまいなあ」と思わせる企画が多かったのだ。本書にも紹介されていたが、梅雨時の集客のための「降水確率に応じた入場料割引」や、「穴掘り大会」などなど。
本書はどちらかといえば「実用書」的に書かれているが、最もササッたのは、「企画のための企画になっていませんか?」という忠告である。そもそも何のための企画であるのか、集客なのか販売なのか、それを見失いがちだ、という注意喚起である。販売会社で企画を立てるのは、いずれの場合も、そのお店の活性化、最終的には「売上」であることは間違いない。そこにいたるプロセスの中で「集客」や「認知」という過程も発生するが、その先のどこに目が向いているか、それがブレると企画の意味がなくなってしまう。
そして著者が繰り返し書かれていたのは、「実行力」ということだ。いい企画を設計しても、シガラミや社内調整、費用などの要因から「実行」に至らないケースがかなり多いという。要はここが肝心であって、仮に失敗に終わることがあったとしても「実行」あるべし、というのが最重要。そして、これも大事な点が「継続」である。単発の企画を繰り返して費用対効果が合う合わないを論じることが多い。自分の環境に照らしてもその通りだ。継続的に、そして多角的に企画を設計することが重要であると繰り返される。
実は先日著者のセミナーを初めて聴いた。40分の短い時間であったけれども、一瞬でトリコになってしまった。本書ではあまり触れられていないが、肝心なのはやはり「実行」なのだと痛感。簡単に楽に企画を成功させる、という考えでは(仮に単発的に運がよかったとしても)本質的な意味での成功にはたどり着けない。徹底して繰り返す、成功するまで繰り返す、努力する、時間をかける、といった「汗」の部分がないと成功しないのだ。そして企画の成功確率をあげるには、環境(の変化)だったり、直接的ではないフィールドの知識だったりするのだと思う。幅広い知識、興味関心をもって柔軟な発想ができないと、狭い世界の中だけで完結するようなことはない、といっていいと思う。
現在は経営コンサルもやられている著者であるが、「現場」の経験を持っているだけに言葉には真実味が増す。そして真剣さが伝わってくる。同じ世界に足場を置く者として、いいところは盗みたいし、「こうなりたい」と思う。それには「実行」「継続」を、より意識していく必要がある。意識するのは「効率」ではない。
ネット通販のみならず商売に携わる者にとっては、本書に書かれていることを「まんま」実行するだけではなく、本書に書かれている極意を見出すようにしたい。プレスリリースなどの実用的なアドバイスもあるけれども、企画の「本質」を間違わなければ、正しい方向に進めるはず。

【ことば】皮肉なことに、不便な世の中を便利にしようと考えた商品企画が、逆に人間の本能でもある方向感覚を衰退させる原因になってしまっているのである。

カーナビに慣れてしまって、地図を使う能力が衰えてしまっていることに、気付く瞬間があります。カーナビ、方向感覚だけではなく、デジタルに慣れすぎ、頼りすぎになってしまうのもプラスマイナスがあります。過渡期に生きた自分たち世代は、「生まれたときからデジタル世界」の次世代に、この感覚を伝えていかねばなりません。

お客がドカンとやって来る売れる企画の作り方


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2012/05/01

人生という「旅」にどう向かうのか


『アルケミスト』パウロ・コエーリョ
[1/77]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

羊飼いの少年は、「羊飼いで満足」していた日常から飛び出します。「宝物」を探しにエジプト・ピラミッドへ向かう旅。そこで出会う「錬金術師=アルケミスト」から、宝物以上に大切なものを見つける...
非常に「深く」読むことのできる物語です。単にストーリーを追うだけでもまずまず面白いのですが、「旅」する少年がそこで出会う人、出会う事件を通して、後ろを振り向かず、自分の本当に見つけるべきものを見つける、といった「人生論」でもあります。たまたま占い師の言葉を信じて、その時に最も大事と思われる羊を売ってしまう、たどり着いたエジプトではそのお金を盗られてしまう...その苦境にも負けず、
「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」
「前兆に従うこと」
という言葉を信じ抜き、時間をかけても大切なものを見つけていきます。「死」の恐怖に直面する場面もありますが、そこでもこの信念を曲げず、前を向いて進みます。
かつてないほどの情報に囲まれた現代、自分で「考える」よりは探した方が早い、という風潮あり、効率化を求める風潮あり。が、非効率を恐れて実行しないことも増えているのかもしれません。少年が学びとった大切なことのなかで、「今できることを実行する」という姿勢こそが、それを実行に移す力こそが「宝物」なのかもしれません。羊飼いのままでいれば、楽だったのかもしれません。食うや食わずという事態にも陥ることなく、昨日と同じ今日、今日を同じ明日を迎えられたかもしれません。が、「夢」に気付いた瞬間から、それは旅に出るための前段階でしかなくなったのです。夢を知った少年は、その夢を追い求めて歩き始めないことには、それを一生後悔するような気持ちになります。
それでも、我々は「後悔すること」がわかっていても、それを実行しないことも少なくないのかもしれません。少年は進みます。今を大事にします。さりとて「昨日」を無駄に思うことはしません。なぜならば今あるのは「これまで」があるからこそ、なのですから。
未来はどこにあるのか。そんなことを考えました。今日の先、なのでしょうが、それは自分で探して歩いて行かなければ出会えないものです。ここでとどまっていては...今を大事にすることが未来につながるひとつの「必須」なのでしょう。
人生論、愛についても読みとることができます。何かを強く望めば、実現するように助けてくれる。実現するように行動するのは、自分しかできません。思い切って動いてみること。


【ことば】...私は過去にも未来にも生きていない...今だけにしか興味を持っていません。もし常に今に心を集中していれば、幸せになれます...なぜなら、人生は、今私たちが生きているこの瞬間だからです

過去にも未来にも生きていない...今を精いっぱい生きること。当たり前なんだけど、余計なことを考えがち。せっかく生を受けたのだから、自分の欲しいもの、追い求めるものに向かって精一杯生きてみよう。

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)


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