2011/07/28

最後までイメージが結びつかず...



『日本人の美徳』櫻井よしこ
[18/140]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「今日の出来事」や薬害エイズ問題に取り組む姿勢...どちらかといえば「映像の中の人」であり、特別な思い入れはなかったのだけれども、ジャーナリストとしてふるまう姿勢を拝見するに、かなり「鋭い」論調を、味めて読むこの本には期待しつつ。そして自分の周りの女性で、「憧れの女性」で著者の名をあげる人が多くいるんだけど、その理由なんかもわかるかなあ、と。
タイトルからしても、特に今、改めて見つめ直す必要性を感じているところがテーマ。これは時代的にも、自分の年代、環境的にも、そう(考えてみる)思ってるところである。鋭い切り口の著者だから、他とは違った表現を見せてくれるだろうと...が、本書のスタイルは極めて「優しい」口調で終始して、「櫻井さんだから」という点が正直あまり見出せませんでした。もしかしたら「文字にすると一部の反対論じゃからの攻撃を受けかねない」的な発想から「中立的立場」での表現になったのでは?と思わせるほど、「フツーの女性」が書いた、というイメージしか伝わってきません。悪く言えば「タレント本」みたいな感じです。かつて「今日の出来事」で厳しい表情で政府への苦言を呈していた印象が、その人がこの文章を書いている、という印象が、ページが進むにつれて薄れていってしまいました。
もちろん、「日本人の美徳」に関しては、同意できる点が多いです。個人主義がまかり通る中でも、やっぱり基本は「家族」であり、おじいちゃんから聞いた昔話であり、家族全員で囲む食卓だったり、本書の中で複数登場する、聖徳太子の言葉「和を以て貴しと為す」であったり...これにはまったく異論はございません。著者自身のお母様を大事にされているご様子など、「あーここに美徳が」という温かい気持ちにもなります。
が、ここまでの内容は特に「櫻井さんだから」ということではなくて、他の方でも書けるのかなあって。切り口がフツーであり(私たちレベルまで「敢えて」降りてきていただいているのかも)、「らしさ」が少ないような感じがぬぐえません(勝手なイメージとのギャップですけれども)。
特にご自身がハワイでの大学生活を経験されたこともあって、自国=日本の歴史や、文化、それらの知識を備えておくことの重要性については、自分もそう考えております。この「自国を知る」ことが、直接的にどうこう、ではなくて、そもそも基本として自国を愛すること=知ることは大前提ですね。自分が生まれた国、育った国を知ること、愛すること、誇りに思うこと。自分の存在も、その歴史、文化、伝統の一部であると実感できること。これができたとき、あるいはこれをできるように意識したとき、すなわち「美徳」も備わるのではないかと思います。
櫻井さんへの「期待」はけして消えていないので、もう1冊は読んでみたいですねー。少なからず刺激をいただくような内容のものを。

【ことば】お父さんは...一生懸命生きているんだと、胸を張って子どもに言えるような生き方...自分に対する信頼と誇りを持てるような生き方をしてほしい...それが父親の子供に対する最高の教育です。

普段子どもたちと接していない立場として、「仕事」という場面を見せてあげられない立場として、伝えるべきものは「姿勢」だと思っています。もちろん「言葉」も必要ですが、その言葉を作り出す源泉としての
誇りや自信。「誇り」かあ...全うな生き方を精一杯。これを徹底すること、だねー。

日本人の美徳 誇りある日本人になろう (宝島社新書 262)

2011/07/27

「口ぐせ」をマネるだけではダメ。



『できる人の口ぐせ』菊入みゆき②
[17/139]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「モチベーションコンサルタント」なる肩書きを持つ著者らしい、「モチベーションを高める」ためのTIP集。あくまでもその目的にたどり着くための「口ぐせ」を紹介してくれています。
目次にはその「口ぐせ」だけが並びます。「いつでも今日がはじまり」とかその言葉だけで「いいなあ」というものもあるのですが、「そうですねえ」「なんちゃってね」など、その言い回し自体には意味が(あまり)なくて、それを使う場面がポイント、というのが少なくない。ちなみに「そうですねえ」は、相手の領域、言い分を一旦受け入れる、という意味合いです。ここからも推測されますが、本書のメインテーマである「モチベーションアップ」にかかる前提として、「(自分とは環境の異なる)相手とのコミュニケーション」 という軸が貫かれています。そこには言葉だけではなく、「思い」も必要になると思うのですが、それを「口ぐせ」を通して、アウトプットしていく、というイメージですね。言葉だけではないけれども、(口から出る)言葉はとても大切。相手に伝わる、ということが第一であり、言葉を通じて自分の気持ちを伝える、ということですね。
そんなことを内包した内容ですが、いわゆる「テクニック」的なものは少ないです。やはり言葉、気持ち、そしてコミュニケーション。これができる人(持っている人)は、すなわち「できる人」であると、勝手ながら結論。個人的には、それ(思い)を持って、言葉に出して伝える、というフローの起点、つまり「相手を思う気持ち」というのは、ある程度の自分自身の「余裕」が必要かな、と思う。切羽詰まっている状態では「相手を云々」というのも出てこないしね。そのためにも「口ぐせ」が、自分自身に対しての「口ぐせ」が必要な場面もでてきますね。
前に読んだ著者の本は、「ストーリー」調だったけれども(『会社がイヤになった』)、こちらはリアルな現実。さすがコンサルタント、軽快な気分で読めるし、読後感さわやかです。書かれている文字だけではなくて、自分で考える(自分に置き換える)という領域が残されてます。きっとこの方の研修って、面白いんだろうなあ。人のモチベーションをあげる、って大変そうですけどねー。それこそ「数値化」できるものではないけれども、最終的な「数字」に向かうための間接的な要素として最重要だしね。ちょっと興味があります。

【ことば】「あと二つ方法があるはず」
たとえば企画書。ひとつは考えられるけど、あと二つ考えることで能力の幅が広がる...かなり困難な感じですが、その困難さ故に、方法を考え抜くことになるかも。視点を広げる、っていう点では結構大事かも。


できる人の口ぐせ (中経の文庫 き 2-1)

2011/07/25

偉大な演説には、練りに練られたストーリーがある。

あの演説はなぜ人を動かしたのか (PHP新書)
あの演説はなぜ人を動かしたのか (PHP新書)
  • 発売日: 2009/10/16
『あの演説はなぜ人を動かしたのか』川上徹也④
[16/138]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

広告を始め、発信するメッセージに「ストーリー」があるべしと説く著者が、「伝説の」演説を解説します。その政策の良しあしとは別の次元で、時の為政者が語る「言葉」によって、人が動いた現実を分析。必須とも思われるキング牧師、ケネディ大統領はもちろんですが、小泉首相の「郵政解散」や、オバマ大統領も登場。確かに、その現実性、実現性や、後の評価は別として、「その時」=その演説がなされた時は、その言葉に心を動かされ、自分も「行動」する意識が高まります。この人(を選ん)でよかった、という自己承認も含めて。
著者は専門家らしく、そこにストーリー性であったり、「人をうごかすストーリーに必要な」要素が組み込まれていることを確認、それゆえに「人を動かした」と分析します。曰く、「何かが欠落した主人公」が「遠く険しい目標」に向かって、「乗り越えるべき障害」を克服していく姿勢、という3要素。確かに小泉さん、オバマさん、それを確実に盛り込んでいますね。環境という点で比較すること自体が困難ですが、冷戦時代のケネディや、金融危機時代のルーズベルトなどは、まさにそれらによって「動かした」感じです。
もちろん、それらの要素を盛り込むテクニックが必要だとは思いますが、根底にあるのは、彼らがその「険しい目標」に対して、なぜそこに向かうのかという理由、そしてそこに向かっていく情熱、これらが垣間見られることがかなり大きな「要素」かと思われます。古い時代はわかりませんが、「ライブ」で見た小泉首相は、そこ=熱さ、が違っていました。個人的には郵政事業に対しては、何にも思いれがありませんし、それが争点にはならなかったのですが、彼がその後の首相(その前もそうですが)と圧倒的に異なるのは、「本気度」ではないかと思います。「こだわり」や「思いこみ」といった言葉にすると、一国の総理としてそれによって行動すべきかどうかは疑問ですが、この人ならば任せても、と思いこませる何かがありました。それが一部では演説のテクニックだったのかもしれませんが、一部には、話の中で見える「本気度」だったのだと思います。
ケネディ大統領や、オバマ大統領が、その演説を作るにあたって、相当な時間を費やしていた、という事実は、その人のすでにもっている力量以上に、そのメッセージを伝えることに対する情熱がポイントなのだろうと。
政治、大統領といったレベルとは大きく異なるけれども、日々の我々が直面する場であっても、それが活かされる場面はあります。広告だって、社内打ち合わせであっても。こちらは、より「テクニックよりも...」ということなのだろうと思います。顔を合わせているわけだしね。演説の解説書でそんなことを感じました。演説自体は読んでいてもテクニック的なものは別として、その場の(社会)環境が実感できない分、なんとなく「名文」という感じにすぎない、そんな印象を持ってしまいました...

【ことば】人間はストーリーが大好きな動物です...ストーリーという形式が、人間の記憶に残りやすく、心を動かすことを知っていたからです。

文字が発明される以前から、どの民族にも語り継がれてきた民話、神話が存在する。逆にこれらは、文字で読むよりも、「誰かが語ってくれた」という記憶も紐づいて、残る。だれでもストーリーテラーになれるわけだよね。その語り手に「伝えたい」という気持ちさえあれば。

あの演説はなぜ人を動かしたのか (PHP新書)

2011/07/24

大事なポイントは2つです。そこだけで変われます。

『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』木暮太一
[15/137]bk1
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

不特定多数に送る「広告」だけではなく、身近な人への「説明」も含めて、「伝える」=「伝わる」ことの困難さ、って経験を積めば積むほど感じることが多くなる。ともすればその要因を、「年代差」に上げがちで、要は「相手=聞く側」の問題と捉えてしまうことも少なくない。あとは一部の範囲だけで通用する「専門用語」を当たり前のように使うとか...
本書は「分かりやすく説明する」ことの大原則として2つの柱をあげています。
・相手に理解してもらいたいと思う意識
・相手に合わせて表現を変えること
そう。それだけ、なんですよね。後はこの2つの前提の上でのテクニック、TIPになります。そもそも「伝わらない」のは、この2つの時点で不備があるが故、ということが少なくない、いや多いのでしょう(少なくない=「二重否定」は使わないようにする。紹介さえているテクニックのひとつです)。これって広告だろうが、社内だろうが、友人だろうが、家族だろうが、おんなじことだよなあ。相手を知る、相手がどのようなことを求めているか知る。そのためには相手の「懐に入る」=相手の側に立つ、ということが大事。精神的にも物理的にも、です。ここの部分がすごく大事だと思います。本書ではそれほど「熱く」は触れられていませんが、相手が存在する空気を体感すること、これが大事なのではないかと...
説明のために使う事例や、比喩、表現、構成などのテクニックも、もちろんそれはそれでノウハウはあるのでしょうが、大原則に則って考えればいい、ということですね。つまり理解してもらいたい「相手」が、理解する上で必要であるような事例、図表を使う。相手が時間のない環境だったら、簡潔な構成にする、すべては説明=メッセージを伝えるべき「相手」があって、のことなんですよね。
考えてみれば当然の話です。説明する、説明したい、というのは「相手」があって成り立つことであって、こちらの都合を押し付けていては伝わらない、というもの「逆の立場」を考えてみればすぐにわかること。でも忘れてしまうことがあるんですね。人間って、「ゆるい」もんですねー。やはりどこかで「意識」を更新する習慣を持たないと、っていうことですね。
 「分かりやすい」を表題にしているだけあって、本書の説明そのものも「わかりやすい」内容でした。読み終えてしまえば、「2つの原則」を意識、表現するかどうか、にかかってくることがわかるのですが、やはりこれは本書の「説明」を聞いた(読んだ)からこそ「分かった」ことですね。テクニックも紹介されていますが、それは「おまけ」くらいに考えて読んだ方がよいです(おまけにしては露出度がかなり高いですけれども)。

【ことば】説明をしていると、聞き手の疑問や反論を先回りしたり、頭に浮かんでくることをそのまま話したり文章にしてしまうことがあります。

うわっ、自分のことを言われています。確かにそれで分かりにくく(伝えたいテーマが何であるのか)なってしまうんだろう...相手のレスポンスを考えて、って「相手のことを考えて」いるようで「自分のこと」を考えてるよねー...ズシンときました。

学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール (光文社新書)

2011/07/23

会社って?そこで「働く」ことって?...に対する答え。

会社の品格 (幻冬舎新書)
会社の品格 (幻冬舎新書)
  • 発売日: 2007/09
『会社の品格』小笹芳央
[14/136]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

確かこの時期に新書のタイトルが「品格」だらけになっていたような記憶が。先入観だけですが、「はやりもの」的なイメージを持ってしまいまして。考えてみれば、「国家の-」「女性の-」といった「品格シリーズ(?)」の中では一番身近なんだよなあ。
内容は、タイトルの「会社の品格」と、「社員の-」「上司の-」そして「働くことの-」と続きます。働く形態、意識の変化(よく言われる終身雇用から、流動化への流れ)の中で、個人としてどのような意識を持って働くのか、会社と自分との位置づけ、 管理する側に立った時に「チーム」としてどう進んでいくのか。
...面白いです。引き込まれます。なにより響いたのは、「経済合理軸で動く会社と、必ずしも経済合理軸では動かない社会との間のギャップ」という点。そのギャップがひずみ、摩擦を起こし、会社は会社の論理(のみ)で動いてしまうと...最終形は「不祥事、隠ぺいが明るみにでる」ということかもしれません。こんなこと(会社と社会のギャップ)誰でもわかっているんだけどね。だって、個人レベルで考えれば、会社の構成員であると同時に、一般の消費者であるわけで。極めてシンプルだけど、シンプルであるが故に「見ようとしないと見えなくなる」んでしょうかね。幸か不幸か、自分はどこか冷めたところがあって、また転職の数故の経験値からも、「どっぷり浸る」というよりもある程度の客観的な視点(一歩引いた)を持っている(つもり)ではある。これって意識しないと「染まっていく」んだよねー。実はこの要因のひとつは「言葉」だと思っているんですけど(その「内側」だけに通用する言葉があるんだよね、どこの会社にも)。
会社はそもそも、金を儲ければそれでよし、という場所ではない。人生の大半の時間を投資する場であって、また利益を得るために汗をかくのは「会社」ではなくて、そこにいる社員であることは間違いない。アメリカ式かどうかしらないが、株主のためにとか、そんな話を聞くと極端に冷めます。何のために働くのか、という点が何よりも重要、そんな時代ですから。「儲からない。数字が残らない施策はやらない」的な風土になってしまう会社が間違いなく衰退していく、数字ではない「ストーリー」や「士気」を作る、高めることって、大事ですよね。人が変わる、成長することで何かが生まれる。それを心から信じていくこと、これが「仕事をする意味」でないかなあ。
タイトルにある「品格」は、まさに個人としても組織としても備えなければならないものです。しかしながら当時は「ブーム」だったこともあり「品格」という言葉の価値が下がってしまいましたね...本書もその波に乗らないようなタイトルであったらもう少し早く「出会う」ことができたのに、と思います。著者自身も本書の中で書かれていますが、「言葉」って大事ですものね。
 余談ですが、著者の経営する会社で、研修を受けたことがあります。はっきり申し上げて「最悪」でした。クレームしましたがなんら返答をいただけていない。本書のような素晴らしい考えの代表が率いる会社なのに...そこは残念ですが、本書の内容を汚すものではありません。あくまでその会社の現場のレベルの低さ、それだけです。

【ことば】会社というのは、誰に対して、どんなメッセージを発信していくのか...どんな世の中にしたいのか...どんなライフスタイルを提案するのか...何らかのメッセージを持つべき存在なのです。

「数字だけしか表面していない会社からはメッセージを読み取れない」と対になった言葉です。これらはどこかのだれか(特定できていますが)に真に伝えたいことばです。まずは自分の周り、いや、自分自身からそうであるように徹底していこうと思います。

会社の品格 (幻冬舎新書)

2011/07/22

自分レベルではまとめきれませんでした...

『品性論』サミュエル・スマイルズ②
[13/135]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

5月に読んだ『自助論』がめちゃ面白くて、同じ著者の本ということで期待値は高まる一方。本書は、「シンプルな人生設計と自己鍛錬法」がテーマ。まさに「今」必要なことじゃないか!出だしから「他人の幸せを願うことは、自分の幸せを求めること」プラトンの言葉が紹介されているように、この本も!というスタートでしたが...全体的に、哲学的あるいは宗教的な感じがして、古代ギリシャはじめ偉人たちの「言葉」が並ぶ構成だけれども、ちょっと...飽きた。「なりたい自分」に必ず会える、という訳者の触れ込みもちょっと誇張のような気が...1871年に書かれた本であることを考えると、「政治の腐敗」や、「幸せの意味」といった、今現在のベストセラーになるようなテーマが、古臭くないレベルで書かれていることは驚嘆するが、偉人たちの言葉があまりにも多すぎて、何が何だかまとまりがつかなくなってしまった。読む側のレベルの低さ、といってしまってはそれまでだけれども、全体の抑揚もないし、も1回読みなおそうという気力も出てこない。もちろん、偉人たちの言葉が、今を生きる自分たちにも「自分ごと」としてとらえられることが多いし、「富より人格」「失敗をその後の成功に導く過程と考える」とか、いい言葉はたくさんあります。よく耳にする(目にする)ことですが、「正しいことを行った結果報酬が得られる」的な側面は、十分響きます。そしてこれらの「名言」をアレンジしたものが、今「新作」として書店に並んでいるのですが、そもそもそれらの書の原典である、ともいえると思います。が、一方で、歴史的な名言が並んだ「名言集」があまり読み物として面白くないように、その名言が発せられた背景が語られる場面が少ないので、少々「羅列」のような印象になってしまいます。
本質をついているんですけれどね。自分の人生を価値あるものにするためには、どのような考え方であるべきか、どのような人間であるべきか。富=お金は大事だけれども、第一ではないかもしれない。人として生まれてきた以上は、やはり「人との関係性」であったり、人や社会への貢献であったり。そのためには情熱や前向きな姿勢が必要で、それを動かす元は情熱だったりする。それを成し遂げるためにはポジティブに活動すべし。そしてその素養は過去の偉人の言葉や残してもらった本だったりする...う~ん、きれいですね。
 自分の「経験値」の浅いところが要因だとは思ってます。が、個人的には「自助論」で十分かなあ。電車の中で読むようなものではないのかもしれませんね。じっくり集中して読むに値するものなのかもです。

【ことば】賢い人は、人生にあまり期待しすぎてはいけないことをしだいに学んでいきます。

言葉を抜き出すと誤解されそうですが、「何をやっても変わらないことがあるのでつつましく」ということではなくて、「他力本願で幸せをつかむことはできない」という逆説的な言葉だと理解しています。あるいは「仮に今は苦しんでも、明日は必ずくるので、苦しみをもたらした人生がすべてではない」ということも含んで。けどつらいときはつらいけどね。そこを乗り越えられる「強さ」を持つべし、ということ。

スマイルズの名著『品性論』―古典には、「自分を変える力」がある

2011/07/20

「少年」がそこにいました。

未来創造  夢の発想法 (角川oneテーマ21)
未来創造 夢の発想法 (角川oneテーマ21)
  • 発売日: 2010/09/10
『未来創造』松本零士
[12/134]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

これまで観た映画で一番よかったのは?と聞かれたら、『銀河鉄道999』と答えます。特に松本零士作品がみな好きなわけではないけれども(ヤマトはあまり思い入れがない)、小学校の頃だったと思うが、映画に行ってサントラ盤(当時はLP)を買って、クライマックスのセリフは暗記できるほど見た、聴いた記憶がある(週末借りに行こう...)。そんな作品の著書とめぐり合うとは思ってもいなかった。
本書は、著者が漫画、アニメーションに対して思うこと、仕事の仕方、次の世代に託すこと、などがつづられています。ビジネス本ではないし、ノウハウを見出すものではない。著者自身の「思い」を感じることができるエッセイ的な内容に終始。これだけのベテランなので、言うことは「重い」のだが、ひとつ感じられたのは、漫画、アニメーションというフィールドにおいて、その「成功の秘訣」として著者があげている、「作者の思い」という点の重要性。技術的なところはともかく、徹底して研究し、細部までこだわるところに「プロ」を感じる。そして、「何のために描くのか」というテーマを強く意識していることが印象に残る。個人的な趣味をベースにしたテーマ設定である部分も少なからずあるかとは思うが、そこに「誰に(メッセージを)届けるのか」「この作品が世に出ることの理由」を考えている。考え抜いている姿勢に共感です。それがあるが故に、徹底したプロの作品ができるし、思いが伝わるのであろう。
写真や映像から描くよりも、モデル(実物)を目の前にして描く。取材等を通じて、自分が実際に「目」で確かめたことを描く。それが「伝わる」理由なのだと思う。もちろん、著者の作品の多くを占める「宇宙」という世界は実体験していないけれども、そこに近付く努力を、現実の世界でも追い求める著者の姿を垣間見た気がする。漫画にせよ、アニメにせよ、その「実際のものを描く」とか「その意味」とか、そもそもその根底にある「思い=こだわり」とか、それって大切なポイントですね。漫画に限らないよね。世に出す制作物や、他者とのコミュニケーションにおいても同じことだと思います。そこに「思い」を持って、「伝える」ことを明確にして。テクニックはその上に立って成り立つものであって、それだけでは(一時的にすり抜ける可能性はゼロではないが)ベースがないことには、不安定になってしまう、ということ。
当然ですが、ヤマトや999の話が出てきます。そこの登場人物が著者の中では、現実とオーバーラップして生きているような感覚です。それだけ「思い」が乗り移って、そしてそれゆえに登場人物に躍動感が生まれるのでしょう。その登場人物の話や、造詣の深い宇宙や戦艦の話になると、著者はまるで少年のようになります。本を通じて、ですが、その目がきらきら輝いているような感じがします。「本気」なんでしょうね。うらやましいほど、その「思い」をアウトプットし続けている著者には、これからも魅力的なものを見せてほしいと心から思います。そして自分も「少年」を持ち続けられるものを見つける、自分の中にきっと眠っているであろう「それ」を見出すことをしていきたいと思います。


【ことば】人をやっかんだり足を引っ張る人間は決して、その相手と同じ土俵には立てない。その相手を認め、応援してこそ、同じ土俵で勝負できるのだ。

こういう話が妙に響きます、最近。「競合」「戦略」...この手の言葉のもつ力に違和感を覚えます。著者のいうように「同じ地球人」という規模で考えるほど高レベルには達していませんが、いいライバルとは、すなわちいい仲間であること、これが本質ではないかと感じています。

未来創造 夢の発想法 (角川oneテーマ21)

2011/07/19

目をそらしてはいけない。

橋はかかる
橋はかかる
  • 発売日: 2010/06
『橋はかかる』村崎太郎、栗原美和子
[11/133]Library
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★☆

猿回し芸の「太郎、次郎」。その村崎太郎さん。今から3年前2008年被差別部落出身であることを公表し、その3作目の本、ということ。本書にも書かれているが、あの「太郎」さんが書いた本であっても、新聞の書評を始め、マスコミ、あるいは大手書店ではほぼ紹介されていない本なのだろう。3冊とも、ね。知りませんでしたよ。彼が「カミングアウト」したことも、このような「日本の裏側」を書いた本が存在することも。自分にも正直この問題はよくわからない部分が多くあります。「部落」「同和」問題というのが、具体的に何を指していて、そしていつの時代の話なのか...恥ずかしながら考えてみたり調べてみたりしたこともありません。著者が本書で書かれているように、被差別側の団体がやや「糾弾」闘争集団的な勢いになっている時期があり(これ自体は、「正しい形にすべし」という本来の目的に向かうための手法なのだと思うが)、マスコミがこの話題について避けている、というポイントは少なからずあるだろう。それゆえ(だけではないけれども)情報の圧倒的な不足もあるが、この部落問題、具体的には、「就学差別」「就労差別」「結婚差別」という課題が未だに存在していることに、少なからず衝撃を受ける。無責任にも「過去の出来事」のような気がしていたからだ。著者の太郎さんと自分はそれほど離れていないから、ほぼ同世代にも、そのような苦労、というか、言われのない差別を受けている人がいるとは...
「向こう側」と「こちら側」という表現をされているが、この問題に真正面から向かう「当人」の太郎さんも勇気があってかっこいい。そして、その対岸から「橋」を受け止めている奥様も、目をそらすことなく立ちむかっている姿はかっこいい。この問題については、考えることすらできていない自分が、何を言っても軽々しく、そらぞらしく聞こえていまうので、今は何も言えない。こういう問題が「見えない」ところで存在している事実をどうとらえるべきなのか、正直戸惑っている。もっともっと過酷な想像を絶する世界が存在するのか。それを知るべきなのか、知らずに自分のできることだけに目を向けるべきなのか。はたしてその世界の中に入る機会ができた場合、自分はどのような態度をとるべきなのか、とれるのか。
著者が、思い切って声をあげてくれたことに、敬意を表します。そして自分のあるべき姿をも、改めて考えてみようかと思います。そのきっかけになりました。

【ことば】彼は、日本という国を愛して止まない...彼は日本を恨んでいません。

奥様の言葉ですが、これは私のような凡人の域を超えており正直理解できません。部落の問題はすなわち国も問題かと思われます。それを超えて日本を愛する...この本では猿回しの芸についてはあまり触れられていませんが、その「芸」を極めたのも、それを外国にも伝えたいという情熱も「日本への愛」から、なんでしょうか。日本という国に「橋をかける」...なんらか力になれないもんかなあ。

橋はかかる

2011/07/18

言い得ている箇所あり、深みは無し...

『40代にしておきたい17のこと』本田健③
[10/132]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

書店の棚で見かけて、そのタイトルが気になっていたんだよなあ。まさに「その年代」の半ばに差し掛かっており、「今」しかできない、「今」やるべきこと。これらはいつの世代においても、それぞれのステージでそれぞれ課題が生じているのだろうけれども、20代より30代、30代よりも40代のほうが、確実に「切迫」する。残り時間の感覚が、(当然だけれども)大きく変わってくる。自分も5年前とは、その感覚が明らかに異なることを自覚する。家庭の環境もそうだし、社会での環境においても、意識の変化が最も激しい40代を過ごしている。
30代の頃に「40代の意識」を体験することは無理だし、先輩の声を聞いたとしても、「自分のこと」としてとらえるのは困難だ。だから、この手の「年代」ものの本については、はっきりした「正解」はありえない世界であり、解を求めるというよりは、「承認」を求めるものなんじゃないかと思う。つまりは...「こんなことで悩んでいるけれども、他の同年代もそうなんだなあ」とか「こっちの方向に進みたい。でももう40代だ。我慢すべきなのか冒険すべきなのか」とか。実は「年代」の問題ではないところにポイントがあるのかも、だけど。
本書の中でドキっとしたのは、「40代は家族とつながる最後の10年」というコラム。「上の世代」との従来のような「つながり」はラストチャンス、そして「下の世代」も10年後は当然に今とは違う「つながり」の形になっているはずだ。やっぱりさー...「不惑」なんてのは、逆説的な意味合いなんだろうなあ。「惑い」を生じる場面はこれまでとはケタ違いにやってくる感じだ。そして「一族」を意識するのもこの世代になってから。重い...重いけれども、これが生きる意味なんだろうし、これまで施しを受けた身として、お返し、貢献、を、世代間を通じて、そして社会に対して実施していかねばならない。これが「生を受けた意味」であるのであろうから。
まあ、実際のところ、「現役世代」として社会的にも頑張れるのは、この世代が最後でしょう。50代は、この10年の過ごし方の「勢い」次第なのかなあ、ってイメージもあるし。仕事、家庭、その他諸々、責任だけじゃなく、自分が行動しなければいけない場面もあるし、悩む場面も当然あるだろう。
よくありがちな「自分史を書いてみる」とか「メンターを見つける/メンターになる」とか、このタイトル通りから得られるイメージぴったりのコラムが続くが、自分としては、肩肘張らず、自分らしく、過ごしていければいいと考えている。ここから無理に軌道修正しても焦るだけだし。

人生を1日に例えると、多分今は13時代だと思う。まだ昼だし、素敵な夜を過ごすためにできることも残されている。


【ことば】幸せな人生を送りたいなら、どんなときも「楽しいこと」を選択してください。

現実的には...という言葉でこれまで否定してきた命題です。でもこれからは、これを素直に受け入れてもいいのかもしれません。「~するべき」との板挟みですが、そろそろ「楽しい」の選択する比率を増やそうか。そうだよねー。

40代にしておきたい17のこと (だいわ文庫)

2011/07/16

得たのは「何ごとも徹底すること」(だけ)かな

節約の王道(日経プレミアシリーズ)
節約の王道(日経プレミアシリーズ)
  • 発売日: 2009/10/09
『節約の王道』林望
[9/131]BookOff
Amazon ★★☆☆☆
K-amazon ★★★☆☆

まさに節電時代に必要な本!と思って読み始めた(書かれたのは2009年ですので「便乗本」ではありません)。カードやポイントの有効活用などの実際の節約術もあるけれども、祝儀を出さない、とか、飲み会は行かない、とか車は新古車を買う、とか、どちらかといえば、著者の「生き方」を書いてあるのが主流。読み進むうちに、タイトルからイメージするもの=節約テクニック=から少々方向変換します。
...というよりも、著者の個性的なライフスタイル、として読まない限りは、ネガティブなイメージを持ちかねません。飲み会は断る、結婚式の祝儀は出さない、毎日4キロ歩く(これは「健康」であることが何事にも基本になるという意味から)等々、著者が徹底されていることが連ねられているのですが、「プレゼントをもらうと返さなければいけないから、だったらもらわなければいい」とかいうこだわりだったり、「新幹線よりも車のほうが安上がり」という趣味による選択であったり(車がお好きのようです)、それを真似してみようっ、なんてものはひとつもないし、それを探しに読んでいたら不快な読後感になるでしょう。だって、そこにあるのは1個人の趣味の世界であったり、生き方、考え方だけ、ですから。
「飲み会の誘いは断る。それで月数万の節約になる」というのは、そりゃそうかもしれないけれど。「断り続けていれば、そのうち誘われなくなる」う~ん、大学のセンセの間ではそれでいいのかもしれないけど、確かに飲み会参加費はかかるけれどそこから広がる「可能性」をシャットダウンするのもどうかな。古臭いし、杓子定規かもしれませんが、飲み会に一切来ない人に対して、その人個人への関心は持てません(仕事上は別ですが)。
とか、そんなことばかりです。煙草が相当お嫌いなようで、その部分は(本なのに)激情しているのがわかるような文章だったり、「カードでマイレージ貯めてます!海外往復できるほど貯まってます」って、どれだけ買い物してんだよっ、だったり、電車vs車の料金比較で、電車の場合には弁当代をいれちゃったり(車好きですから、車のほうが安い、という結論ありき)。そこはもう「節約」の世界でもなんでもないし、ましてや「王道」でもありません。正直、タイトルのことは忘れてましたね、読み終わるまで。
あくまでも「エンタメ」系の本としては読めます。節約は身の丈を持って。無理して節約しても苦しんでそんなことをしてもあまり意味がないと思いますね。何ごとも「余裕」があると、新しい知恵が生まれてきたりするものです。そして「無駄」にも意味があるんだよね。「無駄」は全部なくせばいい、というものではない。論理だてていえることではないと思いますが、余裕と無駄あってこそ、豊かな人生だと思いますね。

【ことば】世の中の人たちは...好きなだけ食べて、たばこを...吸って、夜中まで飲み歩く。そんなことをやっている間に、死神は着実に...近づいているのです。

確かにそうですね。でももしかしたら「幸運の女神」も近づいているのかもしれません。そういう場にいなければ出会えない女神もいるんではないだろうか。

節約の王道(日経プレミアシリーズ)

2011/07/15

「シンプルに」という点で学ぶ価値あり

『すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術』高橋政史
[8/130]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

タイトル見れば「よくあるハウツー」にも思えるが、なんとなく他の本とは違うのでは...という「予感」で読んでみる....が、結論はあまり変わり映えしません。
メモをとる(使う)テクニック、本の読み方、会議の仕方...比較的「事例」を多く紹介していただいているので、アタマに入りやすい点はあるのですが、わりと「どこかで聞いた」ものが多く、メカラウロコは落ちませんでした。再三言われていますが、この本でも「軸」のひとつとして取り上げられているように、「伊一事をシンプルに」というのは鉄則だと思います。この手の本であれば、やはり「考え方」が重要であって、テクニックについては、それぞれの環境に合わせたものがあるので、それを1冊の本で集約するのは困難なのでしょう...そもそもこの本は「1枚にまとめてしまう」 のがテーマなのですが、「テクニック=手法」についてはまとめること自体が無理なことなんでしょうね。
トヨタで使われている、という「1枚の企画書」については、もともと興味がありましたので、深く読みました。しかしながらこれも大事なことはポイントを押さえることで、どこに何を書くか、ということではないんですよね。タイトルから言ってもここが最大のテーマだと思われたのですが、本書の中では意外と扱いは軽いようなイメージです。これも「経験」によってブラッシュアップされていくものなのでしょう。枠だけ与えられてもできるものではない。といいながら、本書を参考に1枚作ってみました。それなりにスッキリ感はありますが、未熟な点(満足できない)点が多々ありまして。メインメッセージを意識する「強さ」が欠けているから、ですかね...結局本質はそこになるんですよね。強く思う、伝えたいと思う、何を、という点が。それがあって次に「どうやって」が来るんですね。
「シンプル」という軸で貫かれている分、実行にはそんなに障壁はないようなテクニックが繰り広げられています。実行して、それを「自分流にアレンジ」することはこれから。それの「きっかけ」であることが本書の位置づけかと(勝手に)認識しました。読めば(素晴らしい)企画書をかける、なんてことを考えていたら、虫が良すぎますね(多少そういう思いはありました...)。そういう思いで読み始めると、読み終わって実践してみて、あまりの「できなさ」にがくぜんとします。でも、肝は「そこから」だと信じる。続けることの大事さ、これがポイント。


【ことば】「何をしたらいいのか、わからない」とあれこれに手を出すより、シンプルに考え、シンプルに行動する。

本書のもっとも大切なポイントかと思われます。が、実際には、「シンプルに考え、シンプルに行動する」ためには、シンプルではなく泥臭く、回り道のように思われるような「考え抜く」ことがより重要かと考えます。アウトプットをシンプルにするためには、その前段階は「シンプル」だけでは成り立ちません、多分。

すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術

2011/07/14

「聴く」と「聞く」の違い。大きいねー

『仕事耳を鍛える』内田和俊②
[7/129]BookOff
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★☆

部下から上司、妻から夫、「聴く」ことの重要性は年齢を重ねるごとに実感する。また、逆のパターン、上司から部下、夫から妻、という流れにおいても感じることがある。
本書は特に、ビジネスにおけるコミュニケーションに事例をあげて「聴く」ことの大切さを披露。どのような態度で話を聴いているか、どのような対応をするか、「聞いてくる」質問者の意図、真意を推し量った上での適切な答え、等々、非常に「現実感」満載の内容で、自分に置き換えることができる。どこの社会でも「反論ありき」で聞くようなタイプもいる。「つっこみどころ」を探しているような人とか。あるいは、カラオケで自分の次の曲を探しているように、会議における発言の順番を気にしているような人とか...自分に当てはまるような箇所もあって、身につまされるような思いも...ちゃんと「聴いて」いても、相手が「同意」を求めているか「解決策」を求めているのか、ただ「聞いて」欲しいだけなのかの見極め、そしてその「要望」に対する「解」を持っていてそれを提供できるか。
う~ん、難しいねえ。もちろんそれには「場数」もあり、「テクニック」もあり、いろいろ必要な要素がある。だけど何となく思うのは、相手を思う気持ちだったりするんじゃないかなあ。「尋ねる(相談する)」には、その質問者なりの理由があり、その人だからこそ聞いている場合が大多数だよね。だから「適切な答え」を返そうとするよりも、その人の置かれている環境や「今」の状況、心理を慮った対応をすることが一番大事なんだろう。それには日ごろからのコミュニケーション、これなんだろうね。
その言葉の裏にあるものを推測、理解するものとして著者があげているのが、有名な「メラビアンの法則」であったりする(たびたび登場する)。ノンバーバル、つまり、ボイストーンや表情などの「言葉以外」のものがより重要だ、ということだ。故に「メール」では伝わらないことが多い、と著者は説く。もちろんその「言葉以外」は重要だよね。個人的には、「でもやっぱり言葉じゃん」と思っているので、この法則はそれほど思い入れはないのだけれど(メールだって「伝わる」ことは、もちろん、ある)、それも大事、「言葉」ももちろん大事、ということで理解です。
「聴き方」のステージを分類して紹介してくれている、且つ、それぞれの対応の考え方も明示していただいているのですが、欲を言えば、「そういう聴き方をされた際の対応=質問・相談する側」の立場での対応方法も多少示唆が欲しかったなあ。自分は「聴き」上手になれたとしても、相手は変えられないからね。実はこのあたりが現場では課題だったりするんですねー。


【ことば】...雄弁である必要はありません。シンプルで前向きな言葉を選んでください。

「シンプルで前向き」って、意外に最も大事かなあ、って思います。それこそ、「言葉」の持つパワーですよね。 今度は話す(アドバイスする)側の態度(熱さ、真剣さ)というところになりますね。人と人はやっぱり「言葉」でつながっています。

仕事耳を鍛える―「ビジネス傾聴」入門 (ちくま新書)

2011/07/12

粋な大人、かっこいー!


大人の流儀
大人の流儀
  • 発売日: 2011/03/19


『大人の流儀』伊集院静
[6/128]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

名前は知っているし、作家であることも知っていたけれども、初めて読む伊集院さんの本。イメージとして(勝手に)スマートな、洗練された人物を思っていたが、繰り広げられるエッセイの中から見る人物像は、どちらかといえば無骨な、「古い」男、という感じ。飲む、打つ、という「昔ながらの」行動を今も続けている男が女優さんを引き寄せる魅力を持ち合わせている理由がなんとなく垣間見える。
自分の生き方とはまるで別世界だ。うらやましいけれど真似はできないだろうなあ。ある程度「自由」な生き方であり、しかしながらその実、裏側には苦悩や諸々の事情を抱えている(生きていれば、当然なのだけれど)中で、それを表には出さない。それを乗り越えるのに「酒」があるという。酒が解決策ではないと思うのだけれども、作家故の引き込まれるような書き方にもよって、そこに出てくる人物の魅力が増している。
かっこいい。こういうのを「粋」っていうのだろう。そんな「粋」な人の人生、考え方を読んだところで、自分に置き換えるだの、何かをここから得るだの、そんなことはしなくていい。それこそ「無粋」であろう。エンタテイメントとして読めればそれでよし、ということだと思う。彼の主張する考え方、見方についても、自分が共感するところは共感すればいいし、違う意見だったとしてもそれを受け入れる(受け流す)だけでいい。本全体に流れる軽快なトーンがそういう気持ちにさせる。
「ただ金を儲けるだけが目的なら企業とは呼べない。企業の素晴らしい点はそこで働く人々の人生も背負っていることだ..」
「不安というものが大切ではないか...不安は新しい出口を見つけてくれる唯一の感情の在り方かも。」
いいですよねえ。「中」にいては見えない本質を言葉にしてくれている。ご本人は企業で働いていた経験もあるので、けして「ヒトゴト」でいっているだけではないし、あくまでも「生き方」をベースにした考え方なんだよね、すべてが。そんな当たり前のことが、ともすれば忘れがちになる環境、それってどうなの?って思う。なんのために働いているのか、なんのために生きているのか。ビジネス本、ハウツー本には出てこない、こういう「生き方」の本、しかもコンサルでない人の「生き方」の本は、痛快であり、気持ちがいいものだ。たとえ今はそれが自分にはできなくても、ね。

【ことば】どんな生き方をしても人間には必ず苦節が一、二度むこうからやってくる。

 一、二度かどうかはともかく、それが人間なんだろうね、生きている、ってことなんだろう。「そんな時、酒は友になる」ていう著者は、かっこよすぎます。「酒は一時的なもので、そこから抜け出す解決策にはならない」なんて、ハウツー本に書かれているものよりも何倍も響きます(「酒」には走りませんが)。

大人の流儀

2011/07/08

「成功」への気づき集。淡泊だけど...

『人生の転機』西山昭彦
[5/127]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★☆☆☆

入社、出向、転職...社会人での「出来事」において、そのきっかけとなった「言葉」を紹介。「カリスマ経営者」ではなくて、18名の「普通の」成功者たちの言葉が集められています。
「気づき」は、気づく方=本人がどう受け止めるかで、言葉そのものは同じでも変わってきます。同じ人、同じ言葉であっても、それを「気づき」と取るか、受け流すか。おそらく大多数の言葉は「流れて」しまっているんだろうなあ。自分もそれと気づかずに流してきただろうし、自分が「それ」と思って発した言葉も同じ。その時にそこにいる環境はじめ外的要因にもよるし、その時点での自分の中の経験、蓄積値にもよる。ただひとつ言える(言えそう)なのは、普段から「気づくぞー」ってなんらか考えている状態であること、これが必要なんだろう。そういないと「流れるまま」になってしまうよね。困難にあたっている時ほど、敏感になるのかもしれない。「生み出そう」というエネルギーがそれを「気づ」かせる元になるんだろうね。
本書はその紹介として、「難局、挫折、慢心にぶつかった時にその「言葉」が気づきとなって、それを乗り越えましたーっていう18のコラム集なんだけど、読み終わって改めて「紹介文」を読むと少々違和感。本書に出てくる18名の方々の文の中には、「難局」があまり感じられないんだよね。「どん底から這い上がる」的なドラマチックな印象はありません。日常経験するようなレベル、とは言わないけれども、その中間くらいの「難局」でしょうか...それゆえ、「読み応え」があまり感じられずに終わりました。これは、「成功者」が、それを超越した書き方をしているのか、奥ゆかしくあまり表現されていないのか、著者が「普通」を貫くために敢えてそうしているのか、いずれにしても淡々とページが消化されていく感じです。
「サラリーマン人生の危機」を乗り越えた時に振り返る言葉...う~ん、ちょっと色をつけすぎかも。全体を通しては、受け取る「言葉」というものの重要性、自ら考えること、これの大切さを思います。そして今度は自分が発する立場になろうとする際、その「言葉の本当の意味」をちゃんと伝えること、その場限りではなく、後から効いてきてもいいものだし、本心から伝えること、愛を持って伝えること、これがポイントであると認識です。最後に紹介された著者自身の、「気づきを得た言葉」というのが、非常に現実的で、現実的すぎて、ちょっと引いた...それによって文章力、語学力が身につきました、って、文章力がついた、ってこれも「手段」ですよね。もっと「本質」に迫るような「言葉」を期待していましたが...最後にちょい肩すかし。


【ことば】...どんな仕事であれ、そのことで社員が元気になれるかどうか、そこに人事の仕事の意味がある...

人事部に配属され、「人的配分、活用、育成」についてのセオリー「だけ」を学んでいた若手に、その上司が伝えた言葉。テクニックやセオリーではなく、「人」とのかかわりの本質が伝わってきます。人事部の経験はありませんが、チームビルディングにも、当然に、つながる言葉ですね。

人生の転機―会社生活を成功に導いた18の言葉 (新潮新書)

2011/07/07

超~難解...多分いいこと言ってる。

『ビジネスに「戦略」なんていらない』平川克美
[4/126]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

最近の自分の傾向=「効率」ばかり追いかけて、何か見失ってない?っていう中で、タイトルからは何か「あたり」そうな予感。ビジネスとは?働くとか?っていう高尚な「哲学」は追い求めてはいないけれども、その本質を追い求めている自分は確かにいる。
年功序列か成果主義か、とか、顧客が支払う価格は、商品やサービスの対価のみなのか、とかとてもいいフレーズがここにあります。白と黒の間のグレーが必要でしょ。支払われるお金の対価としては、商品やサービスのみならず、満足や信用というものがそこにあるはずだよね。いい言葉です。響きます。「技術や誠意と交換される満足や信用」は損益計算書に記載されません。「見えない資産」として会社に蓄積されていく。その通りだと思います。そして、それこそが「会社の継続」の軸であると痛感します。が、著者はここでこの「見えない資産」を「インビジブルアセット」と呼んじゃうんですね。敢えてカタカナにする必要は100%ありませんけど。そういう「わかりにくく」している箇所がものすごく多い。読んでいて疲れます。本書を書くにあたり「リーダーフレンドリー」を意識したと冒頭で言います。「リーダー...」なんて言葉を使う時点で気づくべきでしたが、一事が万事、「意識的に」としか思えないような「わかりにくさ」化を試みられています。
最後に元協同起業者とのメールのやりとりが紹介されていますが(これが最高に難解です)、お二人で難しい言葉で哲学的に語るのはまったく問題ありません。が、こうして一般の本として、著者からの問題提起として本を出される場合は、自分のような「ハナタレ」にもある程度わかるように書いてほしいもの。難しいものを簡単にするのが一流では?難しいものを難しく、は一流ではありませんよね。この本はさらにその上をいく、「簡単なものを難しく」というハイレベルな設定です。
テーマは本当に本当に、「本質」を突いた興味深いものであるだけに残念でなりません。著者のいうように(多分そういうことを言われているのだと理解)、効率化だけではなく、人と人とのコミュニケーションがポイントであるのなら、相手のことを思うべきですよね...本質的なテーマであるだけに、そのギャップが余計に大きく感じられます。
著者は「言葉」の影響力についても触れられています。「戦略」という言葉が独り歩きしている現状に警告を出されています。自分も同意しているところで、お金をいただくお客様に対して「戦略」という言葉はあまりに下品ですよね。「競合」というのも同じ。他社(者)を蹴落として自分だけ生き残る、そんなイメージの「戦略」という言葉は、使っているだけで、意識に大きく作用してしまう。同意です。「戦略」「競合」という言葉はあまり使わないようにしようと思う。言葉の持つ重みは確かにあるから。
しつこいようですが、そんな「重み」がある言葉を使う文章、本であるからこそ、「伝わる」ことを優先していただきたく思います。自分が発信するあらゆるもの(文書、言葉)に意識を向けよう、相手に伝わっているか、ということを意識して。ということを(逆説的に)学ばせていただきましたー。

【ことば】顧客から繰り返し注文をいただくこと...繰り返しを保証するのは「信用」という見えない資産以外にはありません... 見えない資産が蓄積されることの重要性を多くの...ビジネスマン...が見過ごすのです。

まさに。ズバリそのものです。「戦略」で「攻略」しても、お客様からの「繰り返し」はいただけません。ビジネスだけでなく、すべての人間関係において、その通りだと信じます。

ビジネスに「戦略」なんていらない (新書y)

2011/07/05

わかってる人はいるのになあ。

変われない組織は亡びる(祥伝社新書206)
変われない組織は亡びる(祥伝社新書206)
  • 発売日: 2010/07/02
『変われない組織は亡びる』二宮清純②・河野太郎
[3/125]Library
Amazon
K-amazon ★★★☆☆

1年前、参議院選で与党惨敗の前、すなわち、「政権交代」がまだ期待感を伴っていた時期に出た本。スポーツライターと「野党」の革命児の対談で成り立っています。この時期から1年経って、参院選を下経て、そして今の震災後復旧にむけての大事な時期での「政局」のごたごた。与党の役不足もそうだが、野党の「変わらない」姿が気に入らない気持ちでいっぱいの自分にとって、野党内ではあるけれども、「(中から)変えよう」と考えている河野氏の思いは伝わってくる。
自分は「無党派層」だし、政治について何か強いポリシーを持っているわけではない。けれど、あまりに国民に目が向いていない、「おじいさん」 グループであって、勉強はできるけれどアタマがけしてよくない人たち、というイライラは日々募る。もちろん「マスコミ操作」に操られている部分があり、本当に努力している方たちの活動が伝わってこない故に、「アラ」ばかり目につく、というのはあるだろう。が、議員になり、ましてや大臣になると、こうも人間、卑屈になれるのか、と思うほど、「先生」たちは勘違いをするようだ。残念だけど、あきらめの境地でもある。
以前、赤坂で小泉元首相を見かけたことがある。当時は総裁になる前、だった。彼は地下鉄に乗ってましたよ。そのころ、国土交通省大臣がラッシュアワーの様子を見て仰天していた、という報道がありましたが、そんなレベルなんだよね。距離感というか、ね。そんな時に「電車通勤」していた、将来の首相に期待が持てましたね。こんなことで、ですけれど。会社員だったら、どんなに偉くても、自分が消費者であることを忘れないと思う。忘れては会社をやっていけないから。でも政治家は市民ではないんですよね。「先生」と言われ、選挙当選が目的になって...あー悲しい。
河野さんは、元議長の二代目、という以外、そしてテレビでたまに見かける以外に、特に印象はありませんでした。外務委員長時代とか、官僚とのやりとりに「正論」をぶつけ続けてきた、というのを初めて知りました。結果変わっていない、あるいは元に戻った、というのであれば志半ばでしょうけれども、「おじいさん」世界の中で、正しい目を持って、それを言える人、って必要ですね。こういう人が「若い」(っても40代半ばだけど)っていうだけで、「慣習」に埋没してしまっては何も変わらない。そしてそんなものは長くないでしょう。そもそも、「政党」というのが、どこか古臭いイメージがある。変えてはいけないこと、変えるべきところ、これを明確にして実行しなければ、ね。元気な会社はすでにそれに気づいて動いてますよ。政治の世界だけ、かなり遅れている。気づいてほしいなあ。
自民党にありながら、そこから何かを変えていく、という姿勢は同意できます。駄目なものは駄目。変えるところは変える。政党がどうなるべきか、ではなくて日本がどうなるべきかを考える。そのために変える、変えない、という判断をする。この「当たり前」のことが、貫かれる組織にしてほしい。今こそ、それが求められる姿だと思います。河野さんには、別に総裁にならなくてもいいから、それを貫いて実現に向けて進んでほしい。

【ことば】党内の...人たちに気をつかっていても意味がない。国民に対して気をつかうのが本来のすがたであって...

どんな組織でも「調整」は必要な部分はあります。が、国民の代表たる政治家が「内部調整」ばかりしていてどうすんの?何のために政治家をしているんですかね。お客様に目が向いていない、自分の利益ばかり追い求める企業と重なってしまいますよ。そしてそんな企業はつぶれます。お客様は、国民はバカではない。

変われない組織は亡びる(祥伝社新書206)

2011/07/04

ノブくん、がんばれー!

『今日の風、何色?』辻井いつ子
[2/124]Amazon
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

全盲で生まれたピアニスト、辻井伸行さんの、生まれてからピアノに興味を持って、ステージに立つまで、その間の「母親」の心情を語った内容です。なんらかの原因により一度も「見る」ことができない伸行さん、自分のお子様がそのような状態で世に出てきたことに対する母親の苦悩、葛藤、努力...自ら、そして自分の周りに障害がある方がいない自分には、その苦悩を追体験することはできません。間違いなく、自分の環境から想像する世界を超えたものがあるから...もちろんわが子への愛情は変わらないにしても、相当の苦悩をされたことは間違いないでしょう。
そんな中で、伸行さんはピアノ、音に対する興味を示します。著者であるいつ子さんは、そこに可能性を見出します。母親のその「思い」によって、音楽家への道を歩み始めた伸行さんの周りに、素敵な人が集まってきます。音楽の才能を見出し、それを昇華させるのに、周りの第一線で活躍する「先生」たちが彼の後押しをするように。これは偶然ではけしてない。いつ子さんの「愛」「思い」これらが引き寄せたのでしょう。そしてその人たちと共に、なによりも伸行さんとともに、「成長」していく母親がそこにいます。バイオリンを共に習い始める姿、伸行さんの演奏に合わせて子供向けの「朗読」を始めた元アナウンサーであるいつ子さん。
深い「愛」を感じずにはいられません。もちろん、伸行さん本人は、(本の中ではあまり書かれていませんが)持って生まれた才能だけではなく、相当な努力を継続しているはず。単に練習時間だけではなくて、集中力や、感性を高める努力など。そして、それを支える母親がいること、これが伸行さん自身の大きな「中心」になっているはずです。あまり本書には登場していませんが、医者である父親の支えもあるのでしょう。特に医者という職業に従事している中で、障害を持つお子様を受け入れて成長を見守る、というのは、それも「想像を超えて」いると思うのです。
伸行さんの演奏について、「全盲の」という紹介文がついているうちはまだ未完成、という旨をご両親が話しておられます。この言葉を発することができるのは、ご両親が立派な心をお持ちであることの表れでしょう。そしてその「愛」を全身に受け入れ、ピアニストとしてもっともっとスケールの大きな、オリジナルの「表現」をなし得る「プロフェッショナル」になっていくことだと信じます。
この内容から何かを得るのは直接的には難しい。「全盲の人だって頑張っているんだから...」というのは間違っている気がします。全盲だろうが晴眼であろうが、がんばる人はがんばる。「人として」どうか、というのは、障害とはまた違うポイントですからね。ですが、この家族の「つながり」「子を思う気持ち」「親を思う気持ち」、これは素直に自分の中に入ってきました。それで十分かもしれませんね。
ピアノ、聞いてみたい。本心からそう思ってます。その世界に触れてみたい。


【ことば】『今日の風、何色?』は伸行が言った言葉...大好きな食べ物に色というものがあるなら、同じく大好きな風に色があっても不思議はありません

これほど素敵な言葉はないですね。伸行さんの感性がこの質問に凝縮されているようです。こういう感性、もちろん単純に真似できるものではないけれども、忘れていた何かを思い出させてくれるような気がします。

今日の風、なに色?―全盲で生まれたわが子が「天才少年ピアニスト」と呼ばれるまで

2011/07/01

歴史観を正しく持つのも大事、だけど...

日本人の誇り (文春新書)
日本人の誇り (文春新書)
  • 発売日: 2011/04/19
『日本人の誇り』藤原正彦②
[1/123]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

大震災、原発事故という半年前には想像もしていなかった事態に立ち、私たちは何をしていけばいいのか、何ができるのか。一庶民である自分には直接的に何かを「変える」ことはできないけれども、偉そうに言うことをお許しいただければ、「今こそ、日本人の底力を」というマインドを持つことが第一だと思う。戦争をしらない世代だから、かもしれないけれど、アジア諸国の日本に対する態度(戦争に絡めた主張)と、それに対応する我が国の姿勢、これに違和感を感じているのは確か。「もう済んだ事じゃん」とは言えないまでも、あまりに「引きずる」のもどうかと思う。日本が受けた原爆投下に関して、アメリカに対する感情とあまりに異なるのに違和感を感じているのかもしれない。
震災後は、「日本、日本人のいいところ」を意識的にインプットしたくて、それと思われる内容の本を読んでいる。本書もそのひとつ。しかも震災後に書かれた本だし。内容に関しては、自分が感じている「隙間」を埋めてくれるものもあり、今は無関係かなあ、って思うものもあり。数学者である著者だが、ベストセラー『国家の品格』を書かれているように、こちら方面にもヒトコトある、そんな人です。本書は、主には第二次世界大戦を軸として、その経緯の中で、「ホントに日本だけが悪いのか」という点を説く。これにかなりのページ数を費やす。主題としては、この歴史観、世界観が日本人に植えつけられていることでアジア諸国に対して強気に出られない「体質」になってしまっている、ひいてはそれゆえに「下を向く」傾向に陥ってしまっている。少子化問題も、学力低下も、すべてこの根源を見直さない限り、対症療法的な「法制度」レベルでは変わんないよ...という「広範囲」です。
著者独特の文調で、(当戦争における)中国、アメリカの謀略、それに対する強烈な批判、これらによって成り立っています。敢えて「強い」批判にしているのは、それによって「日本は、自分たちが考えているほど(教えられてきたほど)悪者ではないんだ」ということを印象づけるため、かもしれない。
戦争に対する記述は、正直なところ、これまであまり考えることすらなかった点で、偶然とはいえ、その知識が得られたのはプラス。一番欲しかった「日本人の誇り」を感じること、については、戦争とそれによる意識統制によって曲げられたものをただすことによって...という観点よりは、シンプルに「文化」とか「そもそも持っている意識」とか、そういう観念的なものを期待していたので、プラスとはならず。
最後の最後、欧米から「押し付けられた」個人主義の否定、「和」を尊ぶ日本古来の主義主張の大切さを説かれている。これには同意です。これを「元に戻す」、あるいは(日本人の得意ワザでもある)融合して日本固有のものにする、ことが大事かもしれない。それに戦争の「正しい」知識が必要なのはひとつの手法だよね。多分...天災、事故が起こっている今、なにか「変わる」きっかけになるかもしれない。なんかひとつにまとまる気がします。だって、もともと「和」を持っている日本人なのだから。


【ことば】...我が国は、真に誇るべき文明を育んだ国でした。それに絶大な誇りを持ってよいのです。

そう。どこにも劣ることのない、自信を持てる日本。自国を好きであること。これは大事なことだよね。サッカーの時だけじゃない、応援するし、前に進もう。「行き詰まり」とか「閉そく感」とか、使う言葉も選んだほうがいいよね。

日本人の誇り (文春新書)

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