2011/04/28

ソーシャルメディアはあくまでツール。

『ロイヤリティリーダーに学ぶ ソーシャルメディア戦略』高見俊介
[19/84]Rental
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★☆☆

個人でやってるTwitter、facebook、ブログ...通販事業に携わる、特にこれまでECの世界に(どっぷり)いた自分にとって、「最新」のこれらのツールをなんとかビジネスに生かせないか...というのはここしばらくテーマとなっている。考えてみれば、その考えが起点となって、「まずは個人で」始めたのだ。いろいろとネットマーケティングの周辺にいる人たち(広告代理店、ツールベンダーなど)は、しきりに勧めてくるが、どうも「ツール導入」の域を出ない。「どう」活用するか、の前に、「なぜ」使うか、という点が絞り込めていないのが踏み出せない理由。この本は、それらのツールの利用方法についてテクニック的なものではなく(そういえば「テクニック」は一切出てこない)、「なぜ」にフォーカスしているような。「その先」が見えていれば、有効なツールとなりうるわけである。
ソーシャルメディアと同じく関心が高いものとして、NPS(NetPromoterScore)という指標があることは、その名称だけ知っていた。そして著者が日本で最初のNPS認定資格者である、ということも。リピート型商品を扱う通販企業にとって、これは「永遠のテーマ」でもあるんだけど、「続けてもらう」ために何ができるのか、ということ、そしてそのための施策の評価をどのようにするのか、ということが各社各担当者のアタマを悩ませていること。NPSとは、「人に薦めたいと思う」ロイヤル顧客がどれだけ多いか、という指標(定義が簡単すぎますが)。広告、セールスDM等々、通販の現場は、「即効性」を求める流れが強く、短期的な考えになりやすい。これまではこれでよかったのだろうけれども、通販企業が飽和状態になってきている現状、これを抜け出すのは「長期」視点を持って、それを持続できる企業になろうと思う。問題は、「短期」に比べて「長期」はその効果を測りにくい、ということと、あとはシンプルに「正しいと信じて我慢できるか」ということ。
その「正しい」精度を高めるためのツールとしての位置づけとして「ソーシャルメディア」を上げているのが本書である。だから、よくありがちな(というかすべてその方向だと思う)「まずメディアありき」という論ではない。そこは「正しい」と思う。特に著者は、これを推し進めるためには、経営者が真に「お客様満足度向上」に向けて取り組まねばならない、というマインドを強調する。いわば「精神論」。本書のおそらく2/3くらいがカタカナ用語であり、またソーシャルメディアだのNPSだのって、「IT」寄りの内容かと思いきや、軸はそこ「=思い」にある、という、なんだかうれしくなる話。自分もそう思っているからね。
なんとかきっかけにしたい。本気で取り組んで、あきらめない。そんな「思い」がないと流されるよね。本質を、軸をぶらさないこと、これだね。

【ことば】「ソートリーダーシップ」というコンセプトが...これは企業のソート(思い、信念、知見)をベースに、業界でリーダーシップをとっていくという考え方だ。


繰り返し説かれているのが、「ヒューマン」が必要、ということだ。つまりツールはあくまでツールであって、それを使う「人間の思い」が根底になければなんにもならないってこと。これまでカタカナで言う必要はないと思うけどねー

ロイヤルティリーダーに学ぶ ソーシャルメディア戦略

2011/04/26

「漢字」の奥深さを(改めて)知る。

「厚顔」のススメ (小学館101新書)
「厚顔」のススメ (小学館101新書)
  • 発売日: 2009/08/03
『「厚顔」のススメ』宋文洲
[18/83]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「漢字」という共通の文化を持つ、日中両国。著者は中国から日本に渡ったビジネスマンとして、両国の関係性の強化や、共通の意識、文化の育成を望んでいることがヒシヒシ伝わる。漢字は元はもちろん大陸から伝来したものだが、それを自国向けにアレンジしたのは日本。これを、中国側が「教えてやった」とか、日本側が「簡体字は駄目」とかいうのは、お門違い、っていう著者の思いが、この「漢字」をテーマにして本に網羅されているよう。
中国の古典からのキーフレーズを元にした現代ビジネスへの展開、日中両国で「今は」意味合いが異なるようになってしまった漢字の、もともと持っていた意味。なんの意識もなく使っている漢字のこめられた意識...「漢字」という言葉に関心がある自分にとっては、最後まで興味深く読むことができた。いわゆる「漢字のなりたち」的なハウツー本ではなく、日本で企業した著者ならではの「ビジネス展開」が面白い。
「悲しい」=否定する心。悲しいのは「自分」であるということ。これを「変化のタイミング」と捉える、とか、「起業」「改める」に含まれる「己」=改めるのは「己=自分」である、ということ、などなど。多少の「こじつけ」はあるかもしれないが、そういう「深堀り」をしてみることは、意味があるし、自分を高めることにもつながると思う。
「三国志」「論語」などの古典については、数ページの解説でわかるはずもないので、これらは参考程度、かな。タイトルの「厚顔」については、多く触れておらず、いい意味でタイトルとのギャップを感じつつ、意識を「改める」ことも、己で考えることの大事さを思う。

【ことば】誰もがすばらしいものを持っていて、誰もが欠点を抱えて...言動や行動を通じて...他人の能力に火をつけることができるのです。

「教」という意味。教育するのは、他人に押し付けることではない。独自に考える力と自ら行動する力をつけることが、すなわち教育。そこにはテクニックではなく「思い」が必要、だよね。

「厚顔」のススメ (小学館101新書)

2011/04/25

途中から「違う本」になりまして...

『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』竹田恒泰
[17/82]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

かつてない災害に襲われた日本で、「復興」に向け、今こそ日本が試される時期が来ていると感じる。日本が元気になるような、日本人が元気になるような本を読みたい。純粋にそんな動機から手に取った。震災前から、日本が日本である所以であった「経済」で陰りが見え始め、リーマンショックで国際的な企業が打撃を受ける。時を同じくして、「市場」という意味で中国が躍進、「日本は駄目、これからは中国」という合唱が聞こえて...
今だから言うわけではないが、中国市場向けの仕事をしている際にも、この考え方には多少違和感を感じていた。「日本を活性化」というのも、中国市場と同じくらい大事なんじゃないかな...って。
そんな環境もあって、今、日本で生まれ、日本の文化を誇りに思うことがとても大事なんだと感じている。外国出身の知人もいるが、彼らのほうが「日本」を知っているケースは多々ある。それは教育の体制の問題もあるかもしれないけれど、「日本人」の意識の問題が一番だと思う。
「国体」として天皇制が長く続く日本は、世界で最古の国であると著者は言う。古くから「文化」を育み、それが外国にも大きな影響をもたらしている、と。それは大事なこと。そして今、経済で「一番」が遠くなっているけれども、「文化」で世界貢献をする道は開かれているし、そのきざしも生まれつつある。
って、前半は「同意」事項が多かったんだけど、後半は、そもそもの著者の持論であるところの「天皇制」に終始する。象徴天皇というシステムには多少なりとも「同意」だし、それ自体は個人的にも否定するところはないんだけど...それを大事にすることも大事だとは思うんだけど、(前半の)文化大国を目指すためにどうするか、というテーマを深堀りしてほしかったなあ。タイトルから、天皇制はイメージできなかったし...日本を誇りに、日本人であることを誇りに思う心は大事。それは天皇制とは違うところで考えてみてもいい。(そのベースが、著者の説くように、天皇制が敷かれているから、であっても構わないけど)

【ことば】米国出身の温泉旅館の女将が「ニッポン人には、日本が足りない」といって...

なんだか考えさせられる言葉である。日本のほんとの良さが分かるには視点を変える必要があるのかもしれない。これがわかることが、本当の意味での「国際化」なんだろう。

日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか (PHP新書)

2011/04/22

誰に向けて書かれた本なのでしょう...

プロフェッショナル原論 (ちくま新書)
プロフェッショナル原論 (ちくま新書)
  • 発売日: 2006/11/07
『プロフェッショナル原論』波頭亮
[16/81]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

まずは「プロフェッショナル」の定義から。高度な職能を有し、特定のクライアントの問題解決にあたり、インディペンデントな立場で、公益奉仕の精神を持つ。具体例としては、医師、弁護士、コンサルタントがあげられる。プロアスリートは、「特定クライアント」ではないから、「プロ」ではあっても「プロフェッショナル」ではない。狭くなりました。著者ご本人がそうであるから、でしょうが、主に、コンサルタントについて書かれています。彼らの有しているべき技能、考え方から、日常生活、行動特性まで...かなり限定されています。行動的で個人主義で...途中から、飽きてきてしまう。「プロフェッショナルの日常」を読んでも、これをどう読みとっていいのかわかりません。思い立ったら九州の評判のお店に飛んでいる、とか言われても...
全体を通して言えることですが、「プロフェッショナルとはかくあるべし」ではなくて、「プロフェッショナルとはこういう人種である」というトーンに終始します。それもかなりの先入観(としか思えない)により、彼ら(自分ら?)はこうである。こういうときにはこうする、こう言う。これから「プロフェッショナル」になりたい、と思っている人には響くんでしょうか...?正直疑問ですねー。
会社に縛られるのではなくて、自分自身で高い倫理観を持ちながら、クライアントの利益を最大化する、社会に対する利益を高めることだけを指針として、行動する。そんな人たちが「プロフェッショナル」ということですが、ライブドア事件や耐震構造偽造事件に関する「プロフェッショナル」の行動(ここでは公認会計士や建築士)は、社会が経済至上主義に偏りすぎていることが一因、みたいな流れになります。ん?「公益重視」がプロフェッショナルの要件であったはずですよね。構造の問題ではなく、やはり個人の資質の問題だと思うんですけれど...
最初の「定義」にも疑問があります。「特定クライアント」に関するもののみをプロフェッショナルとし、アスリートや、一般企業の中にいる人は除外していますが、正しいですかね...著者のいう「社会構造の変化によって倫理観をなくしているプロフェッショナル」(そもそもこれを「プロフェッショナル」というのはおかしい)よりも高い倫理観、公益重視、高い機能を持っていらっしゃる「プロ」は少なからず存在します。公益を意識し、構造を変えていくのはそんな「プロ」ですよ、きっと。

【ことば】アーティストやクリエイターの仕事は独創的で...日常生活全般にわたって独創性を主張する...これに対して、プロフェッショナルの日常の姿は、普通で常識的なものである。

「プロフェッショナル」であることの条件に追加したほうがよさそうですね。「偏見を持ち、自分たちは他と違う、という自意識を持つこと」

プロフェッショナル原論 (ちくま新書)

2011/04/21

壁。しかも高いやつ。

『日本が「神の国だった時代』入江曜子
[15/80]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★☆☆☆

もうかなり前の話だが、某首相が発言した「神の国」、それをきっかけとして書かれた本。内容は、戦争直前から戦中にかけて、小学校での教育、教科書が、どのように子供たちを「洗脳」していったか...という、「未知」の世界。まさにその時代に小学生だった著者がなまなましい「実物」を使いながら描く。確かなんかの本に紹介されていたのを見て読んでみる気になったんだけど、まったく歯がたちませんでした。自分の国でありながらその方面について無知であることが最大の理由ではあるが、内容がほぼアタマに入ってこない。ただ、繰り返されるその「洗脳」のすごさに圧倒されたのは確かで、ある意味「体験」にはなったかも、だ。
今からそう昔でもないのに、こんな時代があったんだ...と異次元に思えてしまうほど、フィクションではないかと思えてしまうほどの世界。かの戦争を知らない、というか、たとえば「江戸時代」と一緒に「歴史の史実」としかとらえることのできない世代には強烈ではあるけれども、現実的ではないのも、一方では事実。おそらくこの本に書かれている以上に、(振り返って書かれた本は冷静だけども、「その時」は、それが当たり前だったと考えると、もっと強烈)現実は「統制」されていたのだろう。今の中国なども、天皇制とは異なるけれども「統制」は敷いているけれども、「外部」の情報ネットワークには勝てない。その時代の日本はその「外部」すらなかったのだから...想像を超えている。そう、超えちゃっているのでなにもわかりません、お手上げ。
日本人であることを誇りに思っている、あるいは日本の文化を誇りに思っている自分だが、この「史実」を読んで、「この国(民)の本質的にもっているものは果たして...」と思う気持ちと、「この時代から数十年でこれだけ変わってきた、時代を作った日本はやっぱりすごい」と思う気持ちの、ないまぜ状態。この史実に目をつむっていてはいけない、と思う気持ち、それだけは確かだけど。

【ことば】過去を知ろうとしないことを正当化してアジアと関わるのは、...罪であると思う。

「正当化」はしてませんが、知ろうとしないで関わろうとしておりました...ごめんなさい。「過去のことは振り返らないで前を向いて...」というフレーズは、まず「過去」をしらなければいけない。その通りです。

日本が「神の国」だった時代―国民学校の教科書をよむ (岩波新書)

2011/04/19

「若者」でなくとも読めます。むしろ...

『負けてたまるか!若者のための仕事論』丹羽宇一郎
[14/79]BookOff
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

「20代、30代のために...」冒頭から「圏外」を指定されてしまったが、伊藤忠トップの本は一度読んでみたかったので、敢えてチャレンジ。
最近の若い人たちは...
自分の若いころは...
といった、「オヤジ論」も、最初こそ見られたが、管理職層でも、「気持ち」さえ若ければ、十分に堪能できるかと思います。どちらかというと、後半は「若者へのための」から離れて、「仕事論」が中心になってきます。
「アリになれるか。トンボになれるか。人間になれるか」
ある面接の際の質問だそうです。「アリ」のようにがむしゃらに働く。「トンボ」のように複眼をもって、視野を広げる。そして「人間」として温かみを持って仕事を進める。仕事を進めていく中で、結構本質的な言葉かもしれません。自分の立ち位置は...トンボから人間にかけて、というステージでしょうかね...でもこの言葉は「アリ」経験のある自分からするとかなりの確率で正しい。けれど、なんとなく今の風潮は、「アリ」を否定しているようです。がむしゃらでなくとも「ゆるく」生きるほうがいいんじゃないか?っていうハウツーが多くみられます。「アリ」の経験のうえに。さらには「トンボ」の経験のうえにたって。初めて言えること、なんだけどね。
以前読んだ「Coco壱番屋」の創業者のように、「アリ」時代に、相当の働いた方のようです。なんだか立身した方は、結局はそこなのかもしれない、と思ってしまう。「成長」の過程をうまく切り替えることも大事なんでしょうね。
商社が具体的にどんな仕事内容なのか、いまひとつわかりませんが、ある意味「現場主義」を社長になっても捨てていない、素敵な方だと思います。なかなかできることではない。それもこれも、いろいろな体験を積まれた中で「嘘をつかない」ことを実践、貫いてきるから、なのだろう。これも何度も本書で説かれていることです。
タイトルで読者を選別しちゃっているかもしれませんが、自分の立場からいうと、むしろ、「迷っている」40代、トンボから人間になろうとしている立場が、もう一回自分を見つめなおす、そんなときに読むべき本だと思われます。

【ことば】自分一人がなんでもできるわけではないんです...小さな努力の積み重ねで人と人とのつながりを大事にできなければ...

功なり名をなした方のいう、この言葉は深いものがあります。性悪説と取られる著者ですが、つまるところ、一番大事なのは人とのつながりであることは、一貫して言われています。これが「人間」というステージになるためのキーポイントですね。

負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

2011/04/18

まちがいなく「英雄」です

『野茂英雄』ロバート・ホワイティング
[13/78]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

「野球の日米関係の歴史は、二つに大別される。野茂以前と野茂以後だ」この言葉が示しているように、今の日本人選手のメジャー進出は、野茂なくしてはありえなかった。1995年だから、もう16年も前だけど、「その時」のことははっきり覚えている。日本のマスコミ、関係者の批判も。野茂の活躍に掌を返した経緯も。本書にも書かれているように、その「騒動」の中でも、野茂本人のスタンスはかっこよかった。余計なことはしゃべらず(余計で「ない」こともしゃべらなかったけれど)、孤高を貫いて、結果を見せた。
「プロフェッショナル」
だ。これぞ、プロである。もちろん「人気商売」の一面もあるから、リップサービスも「プロ」の一部だとは思うけれども、小細工しないピッチングは、無言でも確かに「プロ」を感じさせてくれた。プロは、その伝え方が何よりも強いはずだ。けしてスマートではない(見た目も含めて)けど、ストレートとフォークだけを持って乗り込んだ「本場」でのパフォーマンスは、感動を伝えるに十分だった。
本書は、その野茂のメジャーへのプロセス、メジャーでの生き様、苦労、そして「引退」を知らぬ行動、それらを伝えている。なによりも、日本人メジャーの「その後」を切り開いたパイオニアとしての野茂を称える内容に終始している。野茂自身はそんな気はなかったのかもしれない。あくまでも自分の力と、世界の一流打者との「力勝負」に真剣に、愚直に向き合っただけ、なのかもしれない。そんな野茂と比べて、他の日本人メジャーのことは結構辛辣に書かれている。でも、それは成績という面ではなく、野球に、メジャーに取り組む姿勢をもっての批判だ。それだけ野茂は、「一直線」だったのだろう。もちろん前例がないわけだから、そうならざるを得なかった、ということはあるけれど。どんな世界でも「一番手」は、相当な苦労を背負っている。それを切り開くには人には言えない努力が必要なのだろう。そこを「苦労」と見せるかどうかが「プロ」であるかどうか、の分かれ目だと思う。野茂はその寡黙さゆえ、かもしれないけれど、それを語らず、最後まで「夢」をすてなかった。

夢...どこまでも夢を追い続けた「プロ」に乾杯。そしてメジャー進出から引退まで、同じ時期に生きていることができたことは、自分にとって幸せだったと思います。
本書の「殿堂入りできるかどうか」とか、「日本のプロ野球機構の問題」は、不要です。野茂の生きざまだけでよかった。それらの問題点は一選手のストーリーとは別物です。


【ことば】投げ続けたい。ただそれだけです。

野茂がSMAPxSMAPに出演した際、「マイナーに落とされても、どうして辞めないんですか」という質問に対する答え。「プロ」です。「プロフェッショナル」、これ以上何もいらない、っていう言葉ですね。


野茂英雄―日米の野球をどう変えたか (PHP新書)

2011/04/16

「偏り」が、意外に心地よい。「品格」という言葉が適切かどうかは...

国家の品格 (新潮新書)
国家の品格 (新潮新書)
  • 発売日: 2005/11
『国家の品格』藤原正彦
[12/77]BookOff
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★★☆

5~6年前の本になるけれども、かなり話題になっていましたよね。どうも「堅そう」で読むのに気が引けていたんですが、なんとなく「日本は、我が国は素敵なんだ!」っていうのを誰かと共有したい気持ちになっているので、読んでみることに。
開いてみれば...まったく「堅い」ということはなく、著者自身が実は数学者であったり、考え方自体が偏っていたり(おそらく自覚された上での「敢えて」書き、だと思われる)、のっけから「意外」な感じでした。先入観、ってやはり邪魔になりますねー。
さて、この本は最初から最後まで終始一貫、著者の「熱い思い」が形を変えて、でも一つのことを言い続けます。すなわち、
論理、合理性偏重の欧米型文明に染まるのではなく、日本がもともと持っている「情緒」や「形」を重んじた文明を貫くべき
ということ。武士道精神の見直しや、論理主義、合理主義の限界など、いろいろと著者の論調が進みますが、すべては前期の「情緒・形」文化を貫く、という主義に集約されていきます。確かに、この本が書かれたのは2005年ですが、この3年後には、著者が「予言」したように、合理主義の「終焉」が見えてくるようになります。リーマンショックですね。そしてそのあと、東日本大震災が起こります。もちろん震災自体は言葉もないほどの痛ましい出来事ですが、復興にむけての日本人の団結には、なにか「もともと日本人が古来より培ってきたもの」が、復興というひとつの共通する目標に向かって、大きなひとつのチカラになってきているような...「情緒」「形」が少しずつ現実化してきているのかもしれません。
著者は若干、「外国=日本以外の国」の否定を以て、日本の相対的価値を上げるような手法も取っていますが、外国がどうであろうと日本のいいものはいい。絶対的な価値ですよね。だって比較なんて意味がないのが文化じゃないですか。そこは少し「偏りすぎ」な「行き過ぎ」感がありますが、概ね、日本のパワーを信じて、発信していこう、という点で、著者の考え方には同意できます。非常に読みやすい本なのは、おそらく「論理的」な展開が優れているから、とうパラドックス的な見方もありますが、そんなのは本質じゃあない。やっぱり、日本に、自国に誇りを持って、文化を発信していくこと、これにつきますね。

【ことば】若い時に感動の涙とともに読むのが何と言っても理想です。情緒や形を育てる主役は読書なのです。

著者は、英語教育、国語教育についても「思い」があるようです。至極ごもっともな話ですが、日本語のできない人に英語を教えても国際人にはなれない。なんか今の教育は「?」だよね、って。読書が大切、っていう上の「ことば」はとても重いポイントです。でも「若い」の解釈次第では何歳から再開してもいいと思う。

国家の品格 (新潮新書)

2011/04/14

まさに「変人」、真似できない「変人」だ

日本一の変人経営者
日本一の変人経営者
  • 発売日: 2009/11/13
『日本一の変人経営者』宗次徳二
[11/76]Library
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★☆☆

最近どういうわけかよく耳にするお店「Coco壱番屋」。去年中国に出張したときに現地で行った。そして今の職場の近くにもあって、何回か行った。特別な「思い入れ」もなく、味的にも特別な感情はなかったが、なにかと話題にあがっているのだろう。そんな中で、読み始めたのだが...
創業者のことなど気にしたこともなかったし、 1000店突破、もこの本で初めて知った。そんな「やる気のない」読者であるけれども、読み進めるに従って、この「モーレツ社長」に圧倒される。不遇な境遇の中育った経緯もあるのか、苦労を苦労と感じない、とにかくガムシャラサを感じる。これを読む限りは、最近多い「効率化」とか「時間管理」とか、ましてや「ワークライフバランス」なんて吹っ飛んでしまう。なんといっても、「1年間1日の休みもなく働くこと」を目標にして、それを実行してしまう人である。ただ、ひとつ大きなポイントは、「金儲けのため」ではないことだ。お客様、社員、家族、地域、自分を囲む人たちのために、自分のすべてをなげうっている姿...できませんね、これは。
不動産業に従事している中で、喫茶店事業に転身、そこで「天職」を得て、その後カレー専門店を作り...そして1000店舗である。そこにあるものは、お客様へのおもてなしのサービスだったり、やる気だったり...「正しいことをしていれば、し続けていれば、仮に今はダメでも必ず浮上する」ということを信じて、信じ抜いて、「継続」すること。早起き、掃除、...経営や金もうけには直接関連ないかもしれないことを、「正しいこと」を継続する力、これが原動力のようだ。ここまで貫けるのは、まさに「変人」。経営者となってもその熱は冷めることなく、働き続ける...というか著者にとっては、「働く」ではなく「生きる」ことなんだろう。
効率や、時間管理、といったものよりは、このような「熱」のほうが好きだ。最後に勝つのは「正しいこと」を継続することである、と自分も心から思っている。だけど、この方はちょっと度を超えているような気もする。ここまで徹底して現場を貫く経営者は、現代の「効率」という考えを少しでも持っている、下の人間の目にはどう映るんだろうか...「社長が率先垂範すれば」というのも、少なからず前時代的なイメージも否めず。「貫く」ことの大事さを感じるとともに、「ここまで」というのも同レベルで感じてしまったのは、事実である。
それから...そんな「熱い」オヤジがいるカレー屋だと知った後、明日の昼食はCocoにするかどうか...なんとなく気遅れしてしまっているんだなあ。

【ことば】お客様が店に足を踏み入れた瞬間「この店に来てよかった」と思っていただき、お帰りになるときは「この店にまた来よう...」と思っていただける店にしようと...

理想形。言葉でいうのは簡単。実践して、実現するのは神業。でも、実行しないことにはそこには永遠にたどり着けない。このマインドは、店舗だろうが通販だろうが、変わりはない。

日本一の変人経営者

2011/04/13

「実践」ではない、気がします

減らす技術 The Power of LESS
減らす技術 The Power of LESS
  • 発売日: 2009/08/05
『減らす技術』レオ・バボーダ
[10/75]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆


仕事も、プライベートも、情報やツールの発達によって、「どう(効率的に)処理するか」に目が向けられているけれども、本当に全部やるべきことなんですか?そもそも、「本質的に」やるべきことを限定すれば、もっと充実するじゃん、という内容。邦題の「減らす」というのはそういうフカイ意味なんですね。自分の人生にとって何が大切か、何が今必要なのか、それを見極めたうえで、「やらないこと」を見出す。やるべきことだけに集中する。「やらないこと」は何をもってしてもやらない。それを「習慣化」するための「技術」を説いてくれています。
長期的な視点、社会貢献、そんなキーワードが並びます。わかってはいても実践できていないことばかり。そのためのテクニックなのですが、繰り返し説かれているように、「一度にひとつだけ」というのはシンプルでいいですね。マルチタスク、って「できそう」な感じがしてかっこいいけれども、それこそ「長期的な視点」でみると、帰って遠回りなのかもしれない。シンプルタスク、もっとも大事なタスクを見極めてそれを一日の最初に実行することを「習慣」にする。うん、いいですね。
そして「小さく始める」こと、これは直接的に「習慣」にするための技術ですね。意気込んでなにもかも始めてしまうと結局だめになる時も早い。ジョギングでもなんでも、ゴールを決めて、それを細分化したサブ・ゴールをまずは設定する。うんうん。
書かれていることは、至極もっともだと思うんですが、どうも現実感に乏しい、という印象も、一方であります。「ペーパーレス」が叫ばれていたけれども現実的には紙は増える一方であるように...そこも「技術を使った」習慣化、ということなんでしょうけれども...ただ、「見極める」ことが最も重要だと思っていて、一見「NotToDo」のように見えても今はやっておくべきことがあると思うんです。それを「減らす」ことのリスクもあるわけで。その「見極め」ができるようになるには、「減らすべき無駄」を相応の量、経験することではないかなあって気がします。
そして「本質的なことだけを」という点については、個人的には「人間関係」だと思っているので、「自分にとっては本質的ではないオファーは断ろう」というのも、現実的には困難ではないかと...モノの修復と異なり、ヒトの修復は「不可能」になってしまうことも多々あるわけで。難しい点ですね。まずは「減らす」意識だけをしてみよう。「無駄」はあると思うので。

【ことば】俳句は...17文字だけで自然を詠む...重要なのは「本質に迫ること」だけを選び出すこと

禅の思想を持っている著者らしい引き合い。でも確かに俳句って「制限」されているからこその美しさ、奥深さがあると思う。日本には素晴らしい文化があるんだよね。

減らす技術 The Power of LESS

2011/04/12

こーゆー世界観もあるのね。なじめないけど

おひとりさまの老後
おひとりさまの老後
  • 発売日: 2007/07
『おひとりさまの老後』上野千鶴子
[9/74]Library
Amazon ★★★☆☆
K-amazon ★★★☆☆

ベストセラーになった本、ですよね。著者の名前は知っているけれども、何をしている人なのかは知らない。「おひとりさま」ってフレーズがついた本は結構見られるけど、この本がその火付け役になったみたい。「非婚」の女性をしてそう呼ぶのかと思ったが、離婚や死別も含めて、平均寿命という観点から見ても、最後は「おひとりさま」じゃん、っていう内容。その「おひとりさま」をどう生きるか、著者がおそらく一番気にしている(おそらく大半の「おひとりさま」も)ように、周り、特に既婚の男性から見て、「おひとりさま」はどうも「イタい」感じがしてしまう。自分もご多分にもれず。どうやって「老後」を過ごすのか、余計なことだけれども心配してしまう気持ちは、正直持っている。「さびしいでしょ」といわれることを嫌っているけど、どうしてもそういう言葉になっちゃうんだよね、それが何にも生み出さないことが分かっていても。「老後」というタイトルにも表わされているように、介護や、死に方まで、「おひとりさま」として持つべき指針が書かれている。自分とはまったく違う世界観だけれども、確かに当のご本人たちは、そういう気持ちになるんだろうなあ、というかそういう気持ちになろうとしているんだろうなあ、って思う。異次元の世界を知っておくのも悪くない。
レビューとか見ると、「自分主義」とか「お金持ちの理屈」的な発言が見られるけれども、フラットな立場で読んでいると、けしてそんな気は起らない。ジェンダーの相違、環境の相違、なのだろう。女性の、「当人」が読むとまったく異なる感情がでてくるのも、(言葉は適切ではないかもしれないけれど)面白い。
通信販売の仕事をしているので、こーゆー方々と「お客様」という形で接することもあり得るので、無駄な読書時間ではなかったと思う。すっごくシンプルに言えば、世の中が急激に変化する中で、旧態依然とした文化をそのままにしておいていいの?という提起だととらえる。確かに法的な点も含めて、男女、という区別をしたものも多い。ただ、男性側からすれば、そう主張しておきながら、たとえば「女性専用車両」など、女性側がジェンダーを意識している点もあるかと思う。「男社会」を否定的にとらえる論調が多いけれども(大方、的を射ているけれど)、男側の意識も少しずつだけど、変わってきているんですよ、きっと。

【ことば】相手とのいい関係をつくろうと思ったら、キモチ悪いことだけではなく、キモチよいこともきちんと伝えるのが大事。

介護を「受ける側」の心得として著者が示している部分。「通常のコミュニケーションに通じる」と書かれているように、これって大事。何事も「伝えてなんぼ」というところ、あるよね。

おひとりさまの老後

2011/04/11

重さと軽さ、バランスがここちよい。

図書館の神様 (ちくま文庫)
図書館の神様 (ちくま文庫)
  • 発売日: 2009/07/08
『図書館の神様』瀬尾まいこ③
[8/73]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★★☆

過去の「傷」を持ちながら、教師となった主人公・清。文芸部の唯一の部員である、これもなんらか「傷」を持っている垣内君。お互いにそれに触れながら、深入りしないようにしながら、それぞれの環境と、そして「部活動」の時間が経過する中で、内外の変化を受け入れながら「成長」していく...そんな姿が描かれている。ふたりの関係は、表面的ではあるけれども、少なからずお互いに影響を与えていくようで、ゆるい考えから「講師」という選択をした清は、自分でも気付かない中で、「何か」が変わっていきます。理想の教育像とはかけ離れていますが、ヒトとしての成長が気付かないうちになされていく。
扱われている素材は、「自殺」「不倫」といった、けして軽いものではない。けれども、そこを超越する「空気」ともいえる時間の流れがあり、その重い素材でありながらもさわやか印象を持つストーリーに。これ、すごいですね。筆の力、なのかな。瀬尾さんの著作はまだ3冊目ですが、軽快な「おしゃれな」ストーリーの中に、「死」という重いテーマが含まれています。これって敢えて「小説」で組み入れるような素材ではないかもしれないけれど、現実社会では普通にあること、ですね(もちろん友人の死、なんてめったにないかもしれないけれど)。生きる、というテーマの中には当然に「死」というものも含んであるのだろうと思われます。
物語の最後を締めるのは、3通の手紙です。不倫相手から。文芸部の垣内君から。そして以前「死」を選んだ同級生の親から。もちろん、小説ですから「手紙」が似合うわけですが、このあたりの「アナログ感」が、やっぱりいいですね。これが「携帯メール」だったら。ちょっと冷めてしまうもんね。そういう細部にわたる展開が、主人公のキャラクターも含めて一貫しているのが、文芸としての作品の「ブランド」を高めているひとつだと思う。自然に。不自然も自然に。そっけない言葉のやりとりを読みながら、「勝手に」その本質的なところを想像して「勝手に」感動する。文学のそういう楽しみ方も、いいもんですねー。

【ことば】先生の明日と明後日がいい天気であることを祈っています。

卒業後に、文芸部・垣内君が先生・清に送った手紙。ちょっと「おしゃれ」すぎかもしれないけれど、ここから「想像」をたくましくするのは読者。この本を読んだ読者だけですね。この行為が「面白い」と感じます。送った生徒、送られた先生の気持ちも含めて。「想像」というか「創造」かもしれないけど。

図書館の神様 (ちくま文庫)

2011/04/10

「距離」を考える、この意識は重要ですね

ゼロ距離マーケティング (PHPビジネス新書)
ゼロ距離マーケティング (PHPビジネス新書)
  • 発売日: 2008/11/19
『ゼロ距離マーケティング』浦郷義郎
[7/72]BookOff
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★☆☆

まさに「お客様との距離」を意識している今の自分にとって、「どまんなか」のタイトルです。ここまでは、とかく「効率」「生産性」といった視点を持って進んできていますが、これって限りなく「売り手都合」でして、これ以外に視点が行かなくなってしまうと、お客様はいつのまにかいなくなってしまうのですね。そしてその「お客様がいなくなってしまった」状態に気付かない、という「痛い」状態になってしまいます。今の時代、以前社会学系で出てきた「売り手と買い手の情報格差」というのは、事実上消滅しています。いわゆる前時代的な「マーケティング」は、もしかしたら企業側よりも、お客様側が(たとえば購入選択における比較等)より高いスキルをもっていたりします。言葉はキタナいですが、売り手側が「ダマして」売りつけるようなアクションは、ほぼ見抜かれている、といっていいでしょうね。それは「売り手」として現場にいる自分には強く感じられます。だからこそ、「距離」を縮める必要がある。そして、考え方の転換=ホスピタリティのマインドを持ち、「結果として儲かる」という図式が必要です。
このあたりの、理想形としてのイメージを持っていたものと、本書の内容は大きなズレは感じませんし、自分の考えを強化してくれてます。「距離」のある考え方をしている、銀行、病院、それらの業界を例にあげています。そして「こーゆーの駄目でしょ」的な、銀行、病院の旧態依然としたフローを、ずーっと批判していて、最初から最後に至るまで、随所に出てくる。もちろん、その業界は特にそんな「古い」イメージなのかもしれないけど、読む側としては「批判調」が続くのはあまり気分がよくないですね。大事なこと=距離を縮めよう、がポイントなんですけど、読む姿勢によっては、大事でないこと=距離がある考え方だらけである、というネガティブな形で記憶格納されてしまいそうです。コラムが頻繁にでてきたりするのも読みにくい。とても重要なポイントが全体の軸になているので、ちょっともったいないですね。

【ことば】組織のなかの人間というのは、...サッカー選手と同じでなければならない。

「現場」で選択、判断をし、マッチメイクしていくのは選手。監督は「現場」にはいないし、個々の指示をするわけではない。けれど、監督が代わればチームが変わるように、考え方、意識の共有はその大前提として必須であろう。

ゼロ距離マーケティング (PHPビジネス新書)

2011/04/08

「そのとおり」な部分あるけど、受け入れられない自分も

『ゆるく考えよう』ちきりん
[6/71]bk1
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

「社会派」の有名ブロガー、らしい。自分は知りませんでした、すみません。「社会派」ってジャンルがあることすら知りませんでした...著者がこの本で言っているのは、タイトルからも容易に察しがつくように、「頑張らない生き方」「目標を高く持たない」「ニートの何が悪い」等々の「ゆるい」スタイルです。この方がどのような境遇でいらっしゃるのか明かしていないので、どのような立場で考えられているのか、よくわからない。そこが不明瞭で正直、「誰?」という感覚を抱いてしまうのですが、今の時代、これからの時代は、これまでの時代における考え方をそのまま引き継いでもよろしくない、というのは本書を待たずとも、どうもそのようではあります。「目標を高く持たず」つまり「現実的に」という生き方はそれはそれでリアルなんだろう、と...アタマでは理解することは可能かもしれませんが、言葉にされたものを見てしまうと、どうも受け入れられないところも。「仕事一筋」の高度成長世代と、「自分探し」の新世代とのちょうど中間である自分たちは、どちらも理解できるけれど、どちらも心底理解はできない...という難しい世代なのかもしれません(自分だけかもしれませんが)。個人的には、「前世代」に一票、です。確かに世の中は変わり、努力が外には出ないような(表立って「努力してますっ」って見せない)人が成功したり、労働市場の流動化しかり、「個」の存在感が強くなっていている中で、これまでの(よく言われている)通りに、「しゃかりき」に仕事をする、というのは「旧時代の」ものに見える可能性がありますが、それこそ「本質」を見ていない、ということで、要は努力の仕方が変わってきているだけなのかもしれない。「集約」や「生産性」がもてはやされた時は、一瞬にして淘汰されてきているようで、「やっぱり」人とのつながりや、サービスの「質」というものが言われてきています。これらは「今の仕事の仕方、考え方」あるいは、「考え方の変化」と言われていることが、つまりは 表面的なことであって、本質的には「一所懸命」「努力」というのは(言葉は古くなりますが)変わっていない、ということだと思うんだけどなあ...
言葉、という点でいれば、「ゆるく」というのは好きじゃない、本書の中で著者が言っている「主人公=自分」という考え方、これが言葉としては正しい、というか「中間世代」の自分には一番響きます。
著者は「社会派ブロガー」なので、言葉のプロ。タイトルの「ゆるく」だけに焦点を当てていてはわからないところもありますね。タイトルに惹かれた方は是非中身も読んだ方がよいと思います。「ゆくる考えよう、という本が売れている」という事実だけをとらえていると見誤る可能性も。
世の中がどうなろうとも、変わらない自分を持てばいい。それだけです。「旧世代」だって、「主人公」の生き方をしている人はたくさんいますよ、きっと。

【ことば】人脈が多いことより、本人が魅力的であるほうがよほど意味がある...「自分が知っている人が多い」状態ではなく、「自分を知っている人が多い」状態の方が...

本質です。有名になることが目的ではありませんが、「人脈」ってこういうことですよね。自分の魅力を高める、というのと、自分を知っている人が増える、この好循環が理想的。優先は「魅力」のほうですね。

ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法

2011/04/06

わかる人はわかる、でいいんじゃない?

『なぜ日本人は落合博満が嫌いか』テリー伊藤③
[5/70]BookOff
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

実を言うと落合が好きである、選手時代から。日の当らない時代のパリーグに在籍していたころから、その実力はもちろん、立ち居振る舞いが魅力的だった。「わがまま」とか「俺流」とか、メディアは否定的な部分はあったけど、あれだけのパフォーマンスを見せるためには、「表」にはださない努力が絶対にあるはず。それを見せることなく、いや、逆に努力をしていないように見せて、「本番」すなわち試合で実力を見せる。これが「プロフェッショナル」だ、と強く惹かれていた。
本書のタイトルから読み取れる、「人気取りではない落合」について、その内容に惹かれたのは間違いない。ましてやジャイアンツファンのテリーが書いている。著者の本で前に読んだものには、原監督の賛美があったけど、ある意味著者は、その人の「本質」をえぐる人なので、(今は)ジャイアンツの敵であるドラゴンズの監督を描くのも、けして驚きではないわけだ。
本書の内容は、おそらく書いているうちに著者がヒートアップしているようで、完全に著者自身の「落合」讃歌であるけれど、書いてある内容は、「これだけの本質を持った人間を評価しない日本人は損している、もっと本当のところを知ろうよ、後悔するよ」ということ。個人的に「ファン」である自分には同調する部分もあるけれども、あまりに人気者になってもらっても、それはそれで困るかなあ、って思ったり。落合という人間の素晴らしさを知る人は、限られた人間でいいんじゃない?っていう、自分勝手な気持ちも強かったりするんだよなあ。
「勝つこと」ひとつに目標を置いて、表面的なファンサービスをしない。そんなパフォーマンスを絶賛されているけれど、ここだけは若干意見が異なり、「プロ」としてお金を稼ぐ以上は、お客様を「動かす」必要があると思っていて、多少なりとも「面白い」野球をしたり、ある程度のファンサービスはあってしかるべきだと思っている。「勝てば、他には何もいらない」というのはちょっと極論のように思う。
大枠でテリーに同意、です。みんなが認めて「人気者」になる必要はけしてないけれども、落合博満の本当の素晴らしさを伝える、これは貴重な場であると信じる。信じられる人だけそうすればいい。

【ことば】
どんなに非難されても自分が正しいと思うことを実行し、嫌われても筋を通し、誤解されても言い訳をせず、ひたすら野球の理想を追求する...それが「落合力」である。

たしかにこういう人物に会うことが少ないと感じる。が、もちろん周りにいないわけではないし、自分がなっちゃえばいいだけだ。世の中の流れとのバランスも、やっぱり必要だけどね。

なぜ日本人は落合博満が嫌いか? (角川oneテーマ21)

2011/04/05

自信持って前に進もう

『日本「優国論」』中原英臣
[4/69]bk1
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★★☆

日本人であること、日本という国を誇りに思うこと、これって現実の世界で「そこ」で生活しているとなかなか意識しない。「あたりまえ」に占領されてしまう。ただ、中国の「勢い」の報道が毎日のように流れる中で、「日本は元気ないね」的な発言も聞こえてくる。が、それは本当なのだろうか?本心なのだろうか?「これからの市場は中国だ」と声高に叫ぶ人は多いが、個人的にはそれに反対はしないが、自国の元気も、やっぱり気なるし、そこをないがしろにはできないんだよね。
東日本震災の報道を日々見ていく中で、「復興」をキーワードに活動する姿を見るにつけ、日本のパワー、日本人の素晴らしさを感じています。この場面で使う言葉ではないかもしれませんが、「ひとつになっている」感がある。すべてのパワー、そこから生まれるパフォーマンスの源はそこにあるんだ。だからきっと大丈夫だと確信できる、この国は素晴らしいです。
外国の知人と話していると感じますが、彼らは自国を信じて、愛してます、例外なく。日本人にはそれがない、のではなくて、表現しないだけ、なんだよね。自国の歴史や、日本独特の文化について、外国人の方が詳しかったりする、これって以前は「恥ずかしい」と感じていたものですが、たぶん、それ自体が日本の文化なんだよね。独自のものだけではなく、外から取り入れたものも同じようにひとつの文化に取り入れて融合する、それが当たり前だ、っていう感覚自体がそうなんだと思う。
そんな気持ちが高ぶっている中で、こういった本を読みたかった。(これも文化の一部)日本の現状を悲観的に論ずるものが多い中で、この本は、「いやいや、今の日本ってすごいんだよ」っていう芯が貫かれていて、読んできてうれしい、そんな感情です。著者が繰り返し述べている、「これまでは『経済』で、そしてこれからは『文化』面で先進国となる」というフレーズが胸に刺さります。そうだよ、それが誇れることだし、自信を持てることだと思う。
別に他国と比べて、「比較優位」であることを誇る必要はない。この国には、誇るべき文化がある、ということだけでいい。自尊心として持てばいいんだ。いかに表現下手であっても、自国に対するネガティブな言葉は、口に出さないようにしようと思う。海外進出だって、「日本はもう駄目だから」じゃないんだ。「日本のいいところを世界にも伝えていく」という気持ちじゃないと、ね。

【ことば】私たちが二十一世紀になすべきことは、まだまだ遅れている国の人たちが、少しでも文化的な生活を送れるようにあるために、力になってあげること

真髄、行動指針が見つかりました。個人としてもこの考え方を、自信を持って進めていこう。

日本「優国」論―経済国家から文化健康国家へ (中公新書ラクレ)

2011/04/04

わかったようなわからんような...

 
『違和感のチカラ』齋藤孝④
[3/68]Library
Amazon ★★★★★
K-amazon ★★★☆☆

副題にある、「最初の「あれ?」は案外正しい」、これに惹かれて読み始める。直感いや直観は、それが経験や知識の量に裏打ちされたものである限りは、「正しい」可能性が高い。特に「ロジカル」に詰め切った場面では、そう思える..結局「未来」は知るよしがない以上は、直観というのは大事。それを生み出す、というかそれを実行に移すのに必要なツールが「違和感」であるといえる。この本にあるように、「違和感」を持って立ち止まる、考える、実行しない決断をする、という場合がひとつ。そして「違和感」を逆手にとって、「差別化」に昇華させるよう実行するのが、もうひとつ。これは著者がこの本で言うのはまったくもって同意、です。
が、なんとなく、ですが、読みにくい文章なんですね。言わんとしているところは前述の通りで、違和感を感じて、それを「実行」に移す、そのためのセンサーの精度を高めるべし、という極めて納得のいく話なんだけど、それを「事例」を用いて説明してくれようとしてくれているのが、逆に複雑になってしまっている一因かと...大学の先生でもある著者は、自分のような凡人とはちょっと違うところにいらっしゃるようで、もちっとシンプルにご説明をお願いできれば、と思います。
ここから学んだことは、「気付かないふり」をすることは何の得にもならない、ということと、いろいろな環境の中で「もまれる」ことの重要性。メインテーマである「違和感」とは直接関係のないところかもしれませんが、かなり重要ポイントですね。要は「動く」ということ。「動かない」と決断することを含めて。

【ことば】ものの形がはっきりわかるのは、ものの形に沿って手が変形するから。...対人関係に置き換えることができる。自分の形に固執しないこと、自分の形は譲って相手によって変形されることを許すこと、柔らかくリラックスして受け入れること。

特に「今」自分の立ち位置、すなわち「新しい場所」ということを鑑みるに、これほど適切なアドバイスもあるまいね。

違和感のチカラ 最初の「あれ?」は案外正しい! (角川oneテーマ21)

2011/04/03

やわらかい、あたたかい「随筆」です

わたしの流儀 (新潮文庫)
わたしの流儀 (新潮文庫)
  • 発売日: 2001/04
『わたしの流儀』吉村昭
[2/67]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

すでに失念してしまいましたが、どなたかのブログか、どなたかの本の中で紹介されていたものです。吉村昭さんという作家は正直知らず、その小説も読んだことはありません...時代モノですかね?おそらくその著者のファンが、小説ではなくこの私生活、私的な事柄をつづった本書(そーゆーのを「随筆」っていうんですね...)を読むと、また異なる味わいがあるかと思います。自分はなにせ前知識なしにいきなり「随筆」なので、「通常に書かれる小説」とのギャップを感じることはできませんが、この本を読む限りで言えば、「あたたかい」作品なのではないかと思われます。それは著者自身が醸し出す空気からそのように想像するだけですが...
この本の中では、小説を書くことから始まり、人との出会い、趣味の酒肴、旅行、そして最後に人生と、ある意味「重い」話題も含めて、あたたかく短く、伝わりやす言葉で書かれています。著者が見たこと感じたこと、考えたこと受けたこと、それを丁寧な言葉で伝えてくれています。一見、「言葉」を生業としている人が短いコラムを小さくまとめている、風ですが、そこには「昔」の風景、そして変わらない、人のやさしさや温かさ、それ(変わらないこと)を大事にする人(著者自身を含む)が描かれており、全編通して読むと、ひとつの物語、世界になっていることが感じられる。そんなあまり得たことのない世界です。少なくとも短期的な「利益」(金銭的な、あるいは精神的な)を求めるための本とはまったく違う世界に存在します。
こういう世界も「あり」だなあ、と感じましたね。うまく表現できませんが、「あたたかい」感じです。もっといえば「ゆるい」「ゆったりした」感じなんですが、言葉にするとちょっとネガティブになるね、難しい。

【ことば】子供がしっかりしているのは母親が立派だからだ、...夫は何をなすべきか。育児につとめる妻に感謝の念をいだき、ゆとりをもって妻が育児に専念する環境を生み出すよう努めるべき...
おっしゃる通りです。同じことをすべき、ではなくて立場を考慮して行動すべき、責任を持つべきですね。

わたしの流儀 (新潮文庫)

2011/04/01

うわっ、「コンサル的」な...

『スパークする思考』内田和成
[1/66]Library
Amazon ★★★★☆
K-amazon ★★★☆☆

仕事では「左脳」的な手法が認められるが、普段は「右脳」で生活してるでしょ?だったら、仕事でも「右脳」でもって発想をしてみれば?...という内容。言われてみれば確かに、ですね。ロジカルシンキングやら、デジタルツールを使いこなすスキルなら、そんなことがもてはやされ、そのスキルを上げるためのビジネス本があふれている中で、「デジタルよりもアナログ」、「ひらめきは右脳で」という考え方はある意味、「コロンブスのたまご」的で、そっか...と思わせるものがあります。著者は「20」の引き出しを常にアタマの中に常備していて、そこで「ひっかかる」状態にしているので、何かで「化学反応=スパーク」するのを待っているステイタスである、というのを進めており、自らもそれで「スパーク」を実践してきていることを説きます。
正しいと思います。が、どうも文章が「上から」というイメージが抜けきれない。言わんとされていることは「アイデアの創出」だったり、「生活者としての視点を忘れない」ことだったり、これからの事業の方向性を考えたときに極めて重要なポイントだと思われますが、その表現方法のみが「左脳」的な感じですね。もっとシンプルに伝えてもらったら、かなり響く内容だと思いますが...「アイディア」を生み出すには著者のいうように(されているように)、最低限の知識、それも特定分野だけではなく広く「知っている」前提が必要で、何かに当たった時に、それらをどう引き出して関連付けるか、という点が大きいと感じています。それには知識の広さ、関連付けの経験、それらが必要ですが、個人的にはその「結びつけ」を行う接着剤は、「ロジカルシンキング」だと思っているので、ある程度は「左脳」も必要でしょう。仕事だけではなくて「生活者」としても、ね。
「右脳」発想をすべき、そのためにはこうやって考えて...と文字で(そして難しく専門的に)表現すると、その時点で「左脳」発想になってしまう...難しいですねえ。

【ことば】生活者として働き、ビジネスパーソンとして生活する
 著者の意図とは異なるけれども、「今」のビジネスパーソンとして大事な考え方ですね。

スパークする思考 右脳発想の独創力 (角川oneテーマ21)

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